2018年05月

ネック折れ修理(塗装修正あり) / Gibson J-45

ネック折れです。

地方からも、しばしば送って頂きます。


当方は、塗装修正無し、有りの2通りの見積もりをいたします。


今回は塗装修正ありで仕上げ。


着色は多少元より濃くして、割れ跡が目立たないようにします。

着色は、最後のひと吹きが足りなかったり、多かったりと難しい。

ギター一本、一本色合いが少しずつ違いますのが、どの場合も、ぱっと見、出来るだけ不自然な雰囲気にならないようにガンバっています。
 
 
 
 
 

黒は塗り潰してしまえば跡は、全く見えなくなります。


ネック折れ修理のコストの掛かり具合は、塗装の方法も関わってきます。


安く、出来るだけ早く仕上げるには、塗装無しです。

過去の修理例もありますので、そちらも見てみてください。

今後もまだまだ、アップ予定がありますので、よろしければまた見てください。

 

ネック折れ修理の方法は、修理屋ごとに違いがありますが、塗装修正の方法も違いがあります。

部分修正するにしても、修正範囲が小さく収まっている場合から、大きい範囲で修正する場合、あるいは一旦剥いでネックごとリフィニッシュしてしまう事もあり。

ネックごと塗り直してしまえば、割れ周辺の色のつながりは全く問題なく仕上がります。

そうした場合、特に色の明るい物や、シースルー(ナチュラル)の物の仕上がりは断トツできれいですが、コスト高にはなります。

仕上げ方はいくつか方法がありますが、塗装修正無しでも修理箇所の強度に差はありません。

料金以外の所も、修理屋ごとに比較してみると面白いと思いますので、ご自身に合う所を選びましょう。

ネックリセット / Martin 000-28

ネックリセット!

ピックガード側、サウンドホールにチラッと見えていますが、タオルを詰めてあります。

外す際に使う蒸気が、隙間からボディ内に流れ込んできますので、このタイプの場合はこうしておかないと中が濡れてしまいます。

乾いたら、きれいにして調整して行きます。

新しいマーチンは、ダブテールジョイントでも何故か必ずボルトの受けが付いています。それは別に良いのですが、ボルトオンネックの場合でも余計な所まで接着しちゃうのはやめてほしいものです。

 

 

マーチンのボルトオンネックを最初に外した時は、何故外れないのかが分からず面食らって、外れた後「きっと間違えたんだな。」と思いましたが、現在ではマーチンのボルトオンネックは接着してある事が当方では分かっています。

ボルトオンネックの場合でも接着してしまうのは、ジョイント部の精度の自信の無さなのかなと思っています。

ボルトオンの場合ジョイントの密着精度は、然程関係ないのですがダブテールジョイントの場合は、ギブソン等と比べるとマーチンのジョイントはお世辞にも良いとは言えないので、この辺が影響しているのかと思います。

 

 


サドルは程よい高さで、出すぎはカッコ悪です。


先ほどの話の続きになりますが、重要なのはジョイント部分ですので、このヒール部はあまり重要ではありません。がしかし、やはりピタッと隙間無くくっ付いている方が印象は良いです。


と言って、このヒール部分を一所懸命接着してもあまり意味が無く、接着していない状態で、動かない様にしなければいけません。


それぞれメーカーで長所短所ありますが、それが直接の良し悪しではなく、その全てがそのメーカー(ブランド)の個性に繋がっているのだと思っています。

 

ボディ破損 / Gibson SJ-200 (続き)


バック板が平らに戻り、力木も上手く修正出来ました。


ライニングは全て新しいものに交換。


外側より内側の方がきれいに出来ました。


クリート(裏の割れ止め)は接着がしっかり出来ていれば必用はないのですが、有るとちゃんと出来てる感じが出ます。


バインディングも全て交換。

ここまで来るのも、試行錯誤でしたが、塗装もまた大変。


着色料を調色すれば色が合う訳でなく、色を剥いでない部分と同じ濃さに吹かなければなりませんが、マスキングしてしまうので、比較しながら塗装が出来ません。

なので、勘。


割れの跡が見えますが、どこが割れていたか分からないと言って頂けたので割れ跡も模様の一部にも見えなくもないです。


同じ様な写真ばかり撮ってしまいました。


ホント撮影が下手ですいません。


タイトボンドが使えれば割れの跡が黒っぽく、なりにくかったと思いますが場合により使い分けます。


昔からリフィニッシュはお断りしていますので、大きな面を吹くのは、あまり得意ではありませんが、ムラにならずに吹けました。

 

 


 

トップにも割れが1ヶ所ありましたが、スプルースなので、変な割れ方はせず真っ直ぐの割れでした、そちらは通常通りの修理。

このような大きな修理になれば、それなりの修理料金が掛かります、いろんな分野の修理業者さんがいると思いますが、こりゃ面倒だ、という仕事を請けちゃう修理屋は高額な修理になるほど、「割りに合わな~い。」と思います。

ならば請けなきゃいいのに。 と言われればそうなのですが、修理屋にもそれぞれタイプや事情など様々なのです。

 

預からない、預かれないとすれば、忙しすぎてやってられない場合。自信が無いので預かれないタイプ。習ったこと意外やらない向上心が無いタイプ。割りに合わないのを知っているしっかり者等、考えられます。

預かる修理屋の場合、預かる余裕がある(もしくはヒマ)。自信は無いがとりあえず預かる。向上心や興味が強すぎる。やらないと思ってすごく高い見積もりを出したが「やる。」と言われてしまった場合。自信も余裕もある場合、等。

預からない場合は問題は起きませんが、預かる場合は出来る確信がある人ばかりではないので、修理屋の人となりを良く見て、預けて下さい。

 

以前の私は、この”預かる場合”をほとんどやってます。

現在は断る事も出来るようになって、多少バランスも良くなったと思いますが、修理屋を信じないで下さいと言うより、私を信じないで下さいと言っておきます。

 

先ほど引き取りに見えた方が、質屋に売られたニュースを見て慌てて当方の事も調べたと言っておられました。

あんなバカは他にいないと思いますが、お預けの際はよい人に。

私の技術力の無さを棚に上げて言うのもなんですが、それより誠意を持って仕事をする方が遥かに重要だと思っています。

 

 

 

 

ボディ破損 / Gibson SJ-200


ボディ破損を中から先に見て頂いております。

ブログも長くやっておりますと、見せ方も工夫してみます。


ボディのボトム部(下側)左右。

板が割れているのが分かるでしょうか。

ライニングが取れています。


力木も派手にはがれたり、割れたりしています。


なんでこんなはがれ方になったか、この画像だけ見ても分からないと思いますが、下の画像を見るとある程度想像が出来ます。


これ位、ずれちゃってます。

何とか使える様にという、ご依頼で。


当方の場合、徹底して元にあるパーツを出来る限り復元します。


今回もその方針で進めましたが、今回ばかりはやっている途中で「間違ったかな。」と思ったりしました。


ネックも外して、バックは新たに作り直した方が返って面倒じゃなかったのか・・・

いやそれではコストが掛かり過ぎて修理予算を超えてしまう。

 


 

この画像は、すでに一旦外してから割れてずれた板と力木を直して、バックを貼り直すライニング(カーフリング)(のりしろになる部材)を交換してあります。

預かりの際は、経験からいろいろと想像して見積もり等、考えますがバックを外す際のイメージが端から違っちゃっいまして、思ったように全くきれいに剥がれない、割れたバック板の段差は中々平らにならず、隙間も戻らず、タイトボンドは諦めて・・・と、中々上手くいかない感じや失敗している感じも見て頂ければそれも面白いのですが私、一応プロですから、アマチュアのブログではないので、そこは割愛させて頂きました。

そこから完成までのプロセスが流石と見て頂ければ尚更面白いのですが、そうなると尚アマチュアのブログっぽくなりますし、やっている時は「こりゃ見せらんねえな、お客さん不安になるだろうな。」と思っていたので、画像は自然と撮っていませんでした。

 

バックが貼れたら、バインディングを巻く準備に掛かります。

バックは一旦外してしまうと、元の位置には戻りません、今回は相当手を加えていますので大きくずれます。

ずれが最小限になる様に、バインディングの厚み内で雰囲気良く修正できる様に、いろいろと工夫をします。

始める前は、バインディングもライニングも疑う事無くそのまま使う気だった自分が哀れです。

 

完成は次回に見て頂きます。

 

今回は、「すごく苦労しましたー。」と言う事ばかり言っていましたが、プロと言えど魔法使いではありませんので、私が尊敬するあの人やあの人も絶対に同じ様な苦労があるはずだと思います。

先日感じたのは、ある方のギターが他工房でいろいろと理由があるようで中々直って来ず、修理屋に不信感を持ったその人が当方へ、相談に来た事があります。その際は腕のよいリペアマンですと、知人に紹介され依頼したのだから、信じて任せたほうが良いですよ、とお話しましたが、先日「1年位前・・・これこれこうで・・・」となんだかんだで未完成で引き上げたらしく、最初に依頼して断られた神田の某ショップで再度依頼して見てもらったようで、「これギターが壊されていますよ!」と言われ、訳を聞いた某ショップは「それならうちで預かります。」となり、当方へ画像持参で「これは、本当に壊されているのですか?」と訴訟も辞さないので第三者の意見が聞きたいのですが・・・と何故か話だけを聞きに毎回うちへ来ていただくのですが、話を聞いて、画像を見て、誰がどう見ても悪いのは修理屋なんですが、どんだけ苦労したかと思うと頭ごなしに悪くは言えなっかったです。

腕が良いと言われる人がこんな事してると思うと、相当苦労したんだろうと思ってしまいます。

プライドが高く、聞ける人が居ないのか、そんな事しなくても・・・

と、「修理に魔法はありません。」の回でした。