2019年09月

ネックリセット / Martin D-45


ネックの角度が狂って、サウンドホールに歪みが出来ています。


ズレかたは少ないですが、出来るだけ戻したいので、引っ張って修正します。


引っ張ても大して変わりませんでしたがやれることはやっておきます。

当然角度も酷いのでネックは抜かなくてはなりません。

 

この記事を書き始めて過去に修理した、D-45にありがちな症状で、サウンドホールがひしゃげて、インレイがバラバラと外れてしまっている、分かりやすく、とても派手な壊れ方のD-45を思い出して、記事にしていないか探したのですが、ありませんでした。

D-45ではないのですが、同じ現象の国産ギターの記事がありましたので、こちらもよろしければ見てみてください。

 

 


丁度、2日前にRimshotの店長とこれが話題になったばかりでした。


D-45の場合、指板の周りやヒール部分等にインレイの為の溝がある為、強度が少ないという事です。


但し、だからと言ってすぐ割れてしまう程D-45が弱いという事ではなく、弦を張りっぱなしにすれば大概のギターに不具合は出ます。

 

ですので、いつも言いますが、弦は緩めて管理します。

これも弦はゆるめる?よろしければ見てみて下さい。

 


リフレットの必要は、ありませんしたのでフレットのすり合わせで調整します。


ネックの角度が付いて、指板が下がりますので、厚みを付けてストレートになるよう指板下に厚みを足します。


少しの手間と気遣いで余計な修理代を使わなくて済みます。

古い記事も読んで頂ければ幸いです。

 

トップ割れ(クラック)修理 / Ovation 6768


トップ割れの修理なのですが、撮影が下手で説得力が出ない為、この種の記事はほとんど無かったと思います。

たまにはやっとこうと思いましたが、やはり直ったのか何なのか、伝わらないと思います。


割れて上へ盛り上がりますので、平らに押さえて接着します。

通常のセンターホールのギターは、サウンドホールからクランプで挟み込んで平らにしますが、Ovationの場合は塗装が厚く固くその分割れも固いので、センターのサウンドホールであってもこの方法が有効のようです。


センターホールではないモデルにはアクセスドアが無いと困ります。

近年のセンターホールではないOvation にアクセスドアが無いモデルがあるのですが、ネックは取れないようにくっ付けちゃってるんだからアクセスドアも要んないでしょ。

…という事か。

 

 

Ovation の場合は塗膜が厚く、しかも割れが固いのでタイトボンド等では接着出来ませんのでスーパーグルーの類で接着します。

接着部は筋が残っていますので、サンドペーパーで水研ぎして仕上げます。

この仕上げの作業が1番大変。

塗膜が固いから他のギターのようにペーパー跡が消えてくれません。

研いで出来たと思って磨いてダメで、もう一回研いで磨いて、これで良しと思って、また研いで磨いて・・・なかなかきれいにならず、角度を変えて良~く見るとペーパーの筋が残っています。

そしてやっときれいになって、いい出来。

と思っても画像を見ると、伝わんないな~と思います。

 

ネックリセット / Taylor Guitars

テイラーのネックリセットを2本同時に更新します。

こちらは小ぶりのギターでサウンドホールにマグネティックP.Uが付いています。

これはテイラー独自のセンサー(ピックアップ)で指板の下に組み込んであります、ボディ内にもセンサーが貼り付けてありデュアルピックアップになっています。

以前にも書いたかと思いますが、ネックジョイントにしても、ピックアップにしても作る人のアイディアはすごいです。

こちらはピックアップがネックのボルトで兼用で取り付けてありました。

何とか手が入って何とか手が動かせる位でしたから、手が大きい人は無理ですので、専用の工具があるのだと思います。

 

 

このモデルのネックジョイントには、ヒールにボルトが2本と指板に1本が使われています。

そして、ヒール部、指板部にシムで角度と位置を調整してあります。

数字等、刻印が入っているのがテイラーのジョイント用シムで、それ以外のマホガニーやピンクなのが調整用に今回作ったシム。

電器修理で山テクに外注でお邪魔した際、このシムが何種類もあるのを発見しましたが、当方では微妙な厚さ調整が必要なこれをその都度作ります。

メーカーではないので贅沢できません。


指板が乗るトップ部分が指板がぴったりはまるように掘ってあります。

リセットの際には掘ってあるこの部分の指板のはまり具合もきれいに見えなければなりません。


古いテイラーはこの部分は掘られていませんでしたので、以前は気に留めず作業していましたが、指板エンドの位置も合わせなければなりません。


溝にはまって、シムで調整してありますので、ヒールは削らず調整します。

 

 


ただ角度だけうまく決めて、ボディにネックが乗っているギターではないので、ヒールと指板のこの溝に入っている部分が露出してカッコ悪くならないようにします。


サドルはどのギターも同じですが、弦高が低くなってもサドルも低くてはネックリセットした意味が半減してしまいます。


但し、出っ張り過ぎても良くありません。


一見簡単そうなネックリセットですが、慣れていないのでそれなりに面倒で難しさもあります。


今回は同じオーナーさんで内容も一緒でしたので2本一緒に見て頂きました。

 

 

今回の記事に書いた、指板エンドの位置は、初めて指板の落とし込みバージョンを見た時は、「そうか、角度が変わるからここは合わなくなるのか。」と早合点しちゃって少し隙間があった事を覚えています。

もちろんネックの調整が上手く行ってないわけでは無いのですが、「シムをこうすれば。」と分かった次からはいつも「アイツの時に気が付いてやればもっときれいにできたのに。」と思います。

 

 

ネック折れ修理 (塗装修正無し)/ Epiphone Hummingbird PRO

ネック折れです。

ヘッドが分離してしまっています。

大きく割れているので接着面も広く都合が良いです。

破片は使えない場合も稀にあるのですが、取っておいて頂けると助かります。

当方の場合、補強はしないネック折れ修理ですから、その接着剤がアジャストロッドに付いてしまわないように修理します。

アジャストロッドに付いてしまっては、ネックの調整が出来なくなってしまいます。

ナットの下の空洞が大きいですし、ペグも重たいですから折れるとなれば、このように派手に折れてしまうのでしょう。

 

 

接着の際に、ロッドまで接着してしまわないように、クランプした際に接着面が滑ってズレてしまわないように気を付けます。

 

そして、廉価版モデルではクランプの跡が付きやすいので気を付けます。

へこまないようにして、しっかりとクランプします。

 

 


塗装修正は無しの仕上げなので、磨きのみで仕上げてます。

こちらのようなシースルーを、塗装修正する場合、例え同じ色でスプレーしても、割れ跡を隠そうとして厚塗りしてしまうとシースルーではなくなってしまい、不自然になります。


どのように仕上げたいかはそれぞれです。

塗装修正すればそれなりにきれいになりますが、元に戻る事ではないという事が前提です。

 


塗装無しでも磨いた際、塗装が残ってきれいに仕上がる場合、ほとんど剥げてしまう場合もあります。

修理実績にいろいろな例がありますので、御覧なって、参考にして頂ければ幸いです。

 

 

出来るだけきれいに仕上げる理由は、「折れた跡が見えて、心が痛んでしまわないようにする為」もちろん他にも色々あります。

塗装修正は、しない理由もいろいろあります。

ブラックライトでも当てなければ、楽器屋さんでも欺く事が出来る位自然に仕上がる時もありますが、折れて修理した事実はあります。

その修理も、そのギターの歴史の一部として愛でて頂ければ幸いです。