2021年02月

デカール(ロゴ)交換 / Martin


 

ご常連さんが入手したマーチンのロゴ(デカール)の1833の1が欠けて無くなってしまっているのが、どうしても気になって仕方がない、らしいです。

皆川ギター工房が始まって以来、一貫して言ってきましたのは、演奏性や強度等に関わらないキズ直しは(リフィニッシュも)基本的にお断りしております。と。

キズ付けた直後はショックですが、直しても使ってればまた必ず付きます。

傷もその楽器の歴史の一部ですから、その傷も愛でて頂ければ幸いです。と。

但し、借り物をやっちまった…や、どーしても…と言った場合にはお預かりする事はあります。

Martin(オールドタイプ)のデカールはまだあるし、今回はお断わりする理由が無いのでお預かりいたしました。

昔、修理に必要な事がありまして、業者さんからは「修理で使うのであれば作りますが…贋作用であれば作りません。」と釘を刺されて作って頂きました。

今でも時折お世話になりますが、贋作用は作らないと言うだけありまして、原寸を何十倍に拡大して細部まで再現するとおっしゃっていました。

技術も倫理的にも信頼出来ます。

 


艶消しは、元のカサカサな感じでは無く、艶を2~3分増した感じに仕上げ。


90年代中半頃までの雰囲気になったのではないでしょうか。


ボロボロになるまで弾いてほしいです。

 

 

ネック折れ修理(塗装修正無し) / ESP


基本的には、強い接着剤で(タイトボンド等使わず)しっかり接着すれば問題無し。

ですが、ぴたっと閉じなければダメです。


細かい破片等が噛んでいれば、きれいに取り除きます。

 


何度もクランプを掛けて確認してから、接着します。

これだけ激しければ当然正面も割れています。
 
 
 
 

とにかく使えるようにする、プランです。
出来るだけきれいに、塗装も修正するプランになった場合は、このケースは全部剥がして塗り直しになりますが、いずれにしても明るいシースルーですので割れの跡は、ある程度残ると思います。

 

 


塗装のクラックは消えるところと消えない所もあります。


塗装が欠けてしまっている部分はクリアを盛って平らにします。


見た目は気にせずとも、手触りに違和感があってはいけません。


正面側は、平らにして黒くすれば目立たなくなります。

 

 


 

もう一つの修理は、ストラップピン部分。

根元からえぐれてしまっています。

力が掛からない部分であれば、見た目だけ修正出来れば良いですが、ストラップを掛けても大丈夫にします。

ストラップピンを打てるように円柱に掘って、木を埋めます。

 


足りない木部はパテ埋めです。


下穴を空けてからビスを打ちます。


下穴は、大きすぎ過ぎると緩くなってしまうし、小さいときつ過ぎて失敗の元になります。


ちょっとだけきつい位が良いです。

下穴を空けずに、もしくは下穴が小さ過ぎて木を割ってしまった方もいると思います。

必ず、使うビスのサイズに見合った、下穴を空けましょう。

 

 

 

 

アコギのトップ等ナチュラルカラーの割れは、目立たなくなればラッキーと言う感じなので、割れの跡は残る事は前提として下さい。

割れの跡が見えてしまうのが好まない場合は、色を濃く塗ってしまう事も時折ありますが、仕上げはオーナーの好みがわかれるところではあります。

 

ブリッジ交換x 3 / Martin/ Gibson (山口君のページ)

いつも皆川ギター工房のブログをご覧いただきありがとうございます。スタッフの山口です。

今日はブリッジの作製をまとめて3個見ていきたいと思います。既製品のブリッジも売られていますがそのギターの型や年代、仕様に沿ってなるべくオリジナルに忠実に一から作っていきます。


まずはMartinのOOO-18、加工前の材料です。


剥がした後にぴったり同じサイズになるように。そしていい感じの木目の部分を型取ります。


初めからピッタリで型取ってしまうと削ったり磨いたりしているうちに小さくなってしまうので、最後にピッタリになるように、逆算してとりあえず大きめに作ります。


元のブリッジは弦高を下げる為に削り落とされています。ブリッジ交換修理の依頼はほとんどがこれに起因しています。ブリッジが薄いと音も変わってしまいます。

 


根気のいる作業ですが地道に擦って成型します。


なんとなくマーチンっぽくなって参りました。


ブリッジのディテールに師匠がOKを出してくれたら元の場所に接着です。


弦長を正確に測ってルーターで溝を掘ったら出来上がり♪

 

 


次はGibson、60年代前半のLG−0です。


お客さんの希望は60年代のオリジナルのプラスティック製ブリッジが歪んで剥がれてしまった為、これを機にローズウッドで作り替えたい、とかだと思います。


地道に慎重に、コツコツとヴィンテージギブソンのアッパーベリーブリッジを目指します。


通常Gibsonのプラスティック製ブリッジは接着剤ではなくボルトナットで固定されています。もうボルトの穴は使わないので同じマホガニーで埋木を施しました。


ラッカーの塗装面に貼っても強度はありません。


ブリッジの大きさとピンホールを合わせ、塗装を剥がして木を露出させてから接着します。


サドルが入るとさらにいい感じに♪


レモンオイルで丹念に磨いて完成です。

インディアンローズかハカランダか忘れてしまいましたが50年代〜60年代のGibsonのハカランダブリッジもこんな薄めの色でこんな木目が多い気がしますね。

Gibsonらしいカッコいいブリッジができて喜びも一入です♪(お客さんもそうだと嬉しいです)

 

 


ラストの3個目はGibsonLGー1。


今回は「エボニー(黒檀)でオリジナルのプラスティックっぽいブリッジに作り換えて欲しい」とのオーダー。このギターのちょっと前に同じオーダーで師匠も作成していました。


通常はいかにウイングに角を立たせるかが大事ですがこれは逆です。プラスティックブリッジに似せるには角を落としヌルッとした丸みが鍵となります。


良い感じにサンドペーパーの番手を上げていきます。ブリッジ作成はオリジナルのディテールを目指しながら、とにかくコツコツとやるのがコツです。


LGー1なので今回はボルト穴をスプルースで埋木して塗装を除去します。


ピッタリ合わせるのが本当に難しい、、。

無事に接着し弦長を測ったところ以降の写真を撮っていませんでした( ̄▽ ̄)確かプラスティックぽく完成したと思います。
ブリッジの作製は完全にオーダーメイド製作で手間がかかる為、修理代は意外と高く付いてしまいます。もしブリッジを削らなければならないくらいネックの角度が狂ってしまった場合は、とりあえずコスト重視でブリッジを削り落として弦高を下げるのも選択肢の一つですが、その後さらにネック角度が狂い、いずれネックリセットに至った場合はブリッジも作り直す分、トータルの修理費用は上がってしまう事になります。ブリッジを積極的に削ってしまう修理屋さんもあると思いますが、ブリッジを削り落とすだけが選択肢ではありません。なのでサドル調整で弦高が下げきれなくなってしまった場合は是非一度、皆川ギター工房にご相談ください。そして何よりもネック角度が狂わないように、ギターを弾かない時はなるべく弦を緩めておくようにしましょう。(と、師匠がいつも言っております)

 

ブリッジはがれ修理 / Martin D-18


ウィング部に少し隙間がある位でしたら、そこだけ貼れば良いと思いますが、この位剥がれてしまっていたら、調整して貼り直しましょう。


力木ハガレの次、位に意外と気づき辛いのが、ブリッジ剥がれかなと思います。

 


隙間になった分、ブリッジが反りあがっていますので、平らに直します。

https://www.m-guitars.com/blog/1568/

 

 

 


 

ブリッジを貼り直す際の注意点としては、先ずは上記の接着面の調整。

その前に剥がす際には、すごく気を付けて剥がす事。

逆目に向かってヘラを入れてしまうとブリッジを剥がさずブリッジの面積を超えてトップの木を剥がしてしまいかねません。

貼る位置は基本的には同じ場所へ貼り直しますが、ズレた位置で長期間落ち着いていた物はその位置が元の位置と勘違いしてしまう場合があるので注意します。

もっと正しい位置を決めるにはピッチを図り直し、サドルの位置を合せてセンターも修正する事が出来れば、位置としては正しいですが、接着面の跡が出てしまい見た目が悪くなりますので、やはり基本は元の位置。

貼り直した後、微妙にずれても見た目や、他に不具合や問題が無ければ良いのですが、アジャスタブルブリッジ(Gibson)の場合は、微妙なズレも問題になりますので、やはりいずれにしても元の位置にビタッと決める事が求められます。

 

 

 


接着面が真っすぐに調整されていなければ、隙間が出来てしまいます。


いくらクランプを締め付けても隙間は隙間なので、拭いても拭いても隙間から接着剤が染み出てきます。

ブリッジに限らず、張り付ける前には色々と確認と準備をしなければなりません。