2021年06月

ナット交換 / Yamaha L-10ES

 

お世話になっております。スタッフの山口です。今回は最もポピュラーなメンテナンス、「ナット交換」について詳しく見ていこうと思います。弾きやすさや音に直結するパーツですので、修理職人を志す者にとって最も基本的でありながらとても難しく繊細な作業の一つ。終始0.1mm単位の精度を必要とします。

まずは既存のナットを外したら溝に付着した古い接着剤を取り除き、底面と指板面を整えます。写真は素材の牛骨をぴったり幅に合わせてはめ込んだところです。サドルもそうですが基本キツすぎず緩すぎず。削り過ぎてガバガバになってしまったらやり直しです。


ナット側面を指板側とネック側に合わせたら初めに1弦と6弦の溝の位置を決めます。ナットファイルが突板を傷つけてしまわないように養生は忘れてはいけません。


お客さんから特に指定がなければ大体こんな感じが良い感じです。弦落ちしないようにやたらと内側に溝を掘っている物がありますが、それでは弾き辛くなってしまいます。


無事に各弦の溝の位置が決まりました。専用の定規がありますがそれを信用して進めて行くと何故か微妙になることが多いので、後は自分の目と感覚を信じて溝を掘って行きます。


溝の深さをある程度調整したら一旦ナットを外して各メーカーの形っぽく成型します。今回はYAMAHAなのでYAMAHAっぽく。


成型が終わったら溝の最終調整です。1フレットとの関係をギリギリまで詰めて行きます。


ネックバインディングが縮んでしまっていますが指板にはピッタリ接しています。


弾きやすくなり音も改善しました。どんなに高価なギターもナットが安っぽかったり残念な仕上がりだと音もルックスも台無しです。消耗パーツですがとても大事です。


父が似たようなYAMAHAのギターを持っていて初めて弾いたギターはYAMAHAでした。

弟子入りした初めの頃は削り過ぎ、掘り過ぎで何度も作り直したりでとても憂鬱な作業でした。最近はコツや感覚を覚えてきて作り直すことも少なくなりました♪時間は師匠の倍近くかかりますが(汗) 

今回もご覧いただきありがとうございました。

 

 

ウクレレ ブリッジ交換 / Kamaka

 


 

お久しぶりです。工房スタッフの山口です。しばらく写真の整理が出来ていなかったためご無沙汰になってしまいました。またちょくちょく登場させていただきます♪

今回はKamakaのウクレレのブリッジ交換です。見ての通り、4弦側が欠けてしまっていますね。今回は新しく作り直します。同じ材、同じ寸法で完成を目指します。


丁度いい大きさのインディアンローズウッドを並べて撮影。色味は薄く見えますが、磨いたりオイル塗り込んだりで恐らく完成時は同じような色になる感じがします。


ある程度同じサイズにカットしたら先にサドルの溝を掘ります。アコギの場合はトップに貼ってからですが、ジグはギター用の物ですのでウクレレに貼ってからでは難しいです。なので良い大きさの板にしっかりと固定して。


一気に深くは掘れませんのでルーターを何度も同じ位置で繰り返し掘っていきます。しっかりと固定しないとラインがズレたりして溝の側壁の精度が悪くなってしまうため、写真で分かる通り端材でガチガチに固定しました。


とりあえず無事に溝が掘れてパシャリ。後は元のブリッジと同じ弦長になるように前後を意識し、気を付けて成型していきます。


成型し終えたら弦の太さに合わせて切れ目を入れました。小さい鋸と精密ヤスリで各弦の太さに合わせるのですが手作業ですのですごく緊張した記憶があります。


磨いてレモンオイルをしつこく塗ったばかりですので元のブリッジよりも濃く見えますが、オイルが落ち着いたら同じような色合いになりました。後はトップに貼ってサドルを作って完了なのですが、写真を撮り忘れてしまい今回はこれでおしまいです(*_*)

来週はYAMAHAのギター修理をお送りします♪

 

 

 

 

 

 

 

ネックリセット / Framus 5/024


 

画像的には、「貼っているのね。」…その通りでございます。

この前段の画像があればよかったのですが、いつものように撮り忘れてましたので、ここからになりました。

(このネックを外す為にジョイントの隙間を探って指板から穴を空けていたが…)

指板を剥がそうとして、途中でやめて、貼り直しています。

何故かと申せば、以前にやったJ-200 の時と同じようにドリルをいくら打ってもダブテールジョイントの隙間が見つからず、らちが明かないのでジョイントを確認する為に指板を(バインディングが無いので全部)剥がしにかかって途中まで剥がした段階で見えた為、疑問が晴れて貼り直しているところです。

ジョイントの隙間がわずかで分かり辛い場合と、位置が想像と違う場合やそもそもそもジョイント方式が違う場合、更にJ-200のような場合があります。

「なんか違う…」と思った時は大体なんか違います、闇雲にやり続けていても埒があきませんので、その際は確認しなければなりません。

 

 


通常のフレットの位置に空いている穴は外れ。

その上の穴が当たり。


この当たりの位置にダブテールジョイントの隙間があります。


以前の蒸気では無く、半田ごてで温めますので、多少ずれていても温まる事は温まります。


ですが、こんだけ外れちゃってると時間が掛かり過ぎて、こてが触れている部分が大分焦げてしまいます。

 

 


リセットが済みましたら、リフレットします。この穴をどんなふうに塞いだか確認したかったのですが、画像が残ってませんでした。


ここまで来た際には、大した事では無くなっていたのかもしれないです。

それか、カッコ悪くて写せなかったか、それかな。


0フレットと言うのは、考えるより面倒なのであまり好きでは無いですが、作りての意思なので尊重しなければなりませんね。

 


 


 


 

4年程前にも同じギターを修理させて頂いたお客様からのご依頼でしたが、探しても滅多に見つからないので見つけたら入手して直すしかない様です。

弾き易いこれを持っているのは、ビートルズファンにとっては羨ましいのではないでしょうか。

 

ネックリセット / Gibson Hummingbird

ネックリセットでございます。

出来る限り撮影の順番で更新しております。

70年代Gibsonも最近では、ビンテージと呼ばれるようになり、復活させてまた使いたい人が増えました。

元々音も作りも良いですから、末永く使っていけます。

70年代Gibsonが人気が無かったのは、それまでのGibsonらしい音や見た目でなくなったから、だったのだと思います。

(シムが左右でローズとメイプルなのはたまたま)

 

 

個人的な私の世代での感覚だと思いますが、70年代はどこのメーカーも独自のスタイルがあって面白いメーカーやギターが沢山生まれた時代と言うイメージ。

ギブソンのアコギでは、このハミングバードもそうですが、力木がダブルエックスになったり、カーシャ博士が考えたブレーシングを採用したMKシリーズなんかもあったり、国産メーカーも特にエレキなんかは、今思えば面白くて(カッコよくて)良い物が沢山ありました。

Ovation(1966~)なんかも70年代に発展したメーカー、Ovationのような全く新しいギターはこの先、出て来ないだろうと思います。

メーカーは今、昔の物を追いかけている様に見えるし、Ovationの人気が復活するならば昔の物として若い人気者から火が付くのかなと思っています。

 
 
 

ネックの修理以外もあれこれやったのですが、ブリッジプレートの画像です。

弦が付いたままの方がわかりやすいのですが、他の作業が進んでいる状況の撮影が多くて弦を外した状態の画像になりがちです。

弦のボールエンドが穴の中に入り込んでしまう状態になります。

こちらが分かり易いかもしれません。

https://www.m-guitars.com/blog/2864/

 

 


 


 


 


 


 


 


 


 

一時代を築いちゃうとその後、廃れているみたいな印象になってしまうのが悲しいです。

モズライトなんかすごく良いのだけれど、おじさん達はある一定の音楽以外出来る気がしないので、是非これなんかも若い世代が他の音楽で見直してくれれば良いのになー、などと思ったりします。