2022年08月

ネックリセット / Taylor 210e


 

テイラーのボルトオンネックは、個人の感想ですが1等賞だと思います。

後追いで同じような感じにしてるメーカーもありますが、最初にやったテイラーは流石。

ボルトンネックって作る人も、直す人もセットネックみたいに大変じゃないでしょ。と言う事ですから。

その中でも1番考えてあって、すんばらしいと思います。

だからなのだと思いますが、チューニングはそのままで!と言っているメーカー推奨の理由は。

ネックの角度が狂わない。と言っているのではなくて、狂ってもすぐ直せます。

と言っているのだと思います。

弦はしっかり緩めないとネックの角度は狂います。

アコースティックの構造である限り仕方ないのです。

 

 


 


 

そんなテイラーなのですが、気を付けなくてはならない部分があります。

見た目の事なので、別段気にしなければそれでよいのですが、ヒールと14フレット以上の指板部分(トップの上)。

要するにネックとボディが接している部分、トラディショナルな構造であればのっかっているだけなので気にせず作業しますが、テイラーは掘り込んだ所にはまっているので、元から入っているシムの厚みの範囲で角度を調整しなければ指板と掘り込みがズレて隙間になったり、ヒールのはまっていた部分が見えてしまったりします。

そしたら、ヒールはマーチン等のように削れば良いではないかと言う考えもあります。

やった事無いので分かりませんが、削るとヒールは幾分細くなりますので、やはり掘り込みの溝が隙間になってしう気もしますし、ボルトのアンカーも入っているのでそれも面倒です。

なので、時折あるようなスンゴイ角度の狂い方してる場合は多少この部分の見た目は変わって来るんじゃないでしょうか。


 


 


 

 

ネック折れ修理(塗装修正無し) / Gibson LP


 


 


 

これ位接着面が大きくて、接着面が複雑なスカーフジョイントのようになっていれば、タイトボンドでも持つのではないかと思ったりもします。

ですが、ネック折れ修理にタイトボンドを使う場合は+補強、は必須ですので、いつものそれに見合った接着剤で補強は無しの修理をします。

 


 


 


 

こちらは塗装修正無しのプランなので、接着部の整形の際に剥げた部分はそのままですが、仮に塗装修正ありのプランだったとしても割れ跡は目立たなく出来るような塗装は無理かなと思います。

(目立つか否か、良いか悪いかは主観なので絶対に無理かと言われれば無理では無くそれなりに出来るかもしれません。)

塗装修正ありの修理例を見て頂けると分かりますが、どの塗装も元より少し濃い目に吹いています。

こちらの様に明るい色のネックの場合、割れ跡との色の差が大きいので目立たなくすることが難しくなります。

 

 


 

割れ跡が目立たなくするためには濃く色を付けなければならなくなり、かえってネック折れ修理を強調する事にもなります。

但し、見る人の主観が全てなので良し悪しではありません。

こちらのように色が明るいシースルーは割れ跡が目立ちますので、塗装修正する場合はどのような方向で修正するか、ご依頼人のイメージがあればご相談ください。

出来るかもしれませんし、出来ないかもしれませんが、出来る事は一所懸命がんばります。

 

 

ネックリセット / YAMAHA NO.100

とても高いです。

弾き易い弦高になるように修理します。

 

クラシックギターのほとんどはダブテールジョイントでは無い為、ネックが抜けません。

ですので、過去にも修理例で挙げておりますが、こちらも同じ方法で進めます。

クラシックギター ネック角度修理

この方法は昔クロサワ楽器の山口さんに聞いたやり方。

「クラシックのネックって抜けないじゃないですか、どうやってリセットするんですか?」

「ん?リセットできないから指板でやるしかないんじゃないかー。」と教えてもらいました。

山口さん今も御達者でおられるでしょうか。

 

 

ネックは抜けませんので、指板を剥がします。

おーっと!ダブテール!

ダブテールジョイントです!!

ちょっと得した気分です!

ならばネックリセットします。

 

いい感じになりました。


6弦…3mm位


1弦(ナイロン弦見えませんが…)…2.5mm位


サドルはこんな感じ。

もうちょっと低ければカッコよかった。

 


指板を修正して、リフレット。


新しいフレットに合わせてナットは交換。


 


 


指板を剥がしたので、塗装も修正しなければなりません。


 


 

 

持ち込まれたギターを「直す価値ありますか?」と聞かれることがよくあります。

価値はその方の思い入れの部分なので、私には分かりません。

オーナー以外、誰にも分らないのです。

 

ネック折れ修理(塗装修正無し) / YAMAHA FG-830


テープを巻いて止めています。

思わず巻いてしまったのかもしれません。


私が出来るだけ現状維持が出来れば幸いです。

と言っているからかもしれません。


こんなふうになっていれば接着部分が擦れずに維持できます。


あせって自分で接着されてしまうのが一番面倒になってしまうので、その状況のままが助かります。 

 

ただし、ラッカー塗装の場合は粘着テープで塗装が反応(溶けて)してしまいます。

くっ付けておく必要は無いので、他の方法でお願いいたします。

 

 


 


 


 

色が無いところは簡易的に筆で着色する事もありますが、かえってみっともなくなる事もあるので塗装修正しないならそのままの方が潔くてカッコいいです。

出来るだけ毎回言います。

タイトボンドでは補強無しでは持ちませんので、タイトボンドは使わず補強の要らない接着をします。

 

ネックリセット&フレット一部交換 Martin D-18


スタッフの山口です。今回はD-18のネックリセットとローフレットだけフレットが極端にすり減っているためそこだけフレットを新しくする、というオーダーです。


今回は画像が多いのでサクッと進めて行こうと思います。写真はブリッジのウィングの角を作っているところ。


上面を削って薄くしたことでノッペリしていたところを角を作りディティールをそれらしくしてあげます。

凛々しい顔つきになりますね。


いつも通りネックを外します。


記念撮影パシャリ。


センターズレはご法度です。

ヨシ!


ネックを元通りにしたらフレット交換。6フレット以降は抜いてクリーニングした後戻しますので分からなくならないように1弦側にマッキーでマーキングしました。


70年代のマーチンは指板が薄いせいなのか、ネックが順反りしやすい傾向があります(そんな気がします)。アジャストロッドもありません。

そのため今回はオーダー元からネックジグを使ってほしいとリクエストがありました。


弾いている状態を再現するための作業台は当工房オリジナルです。


メーターを0に合わせます。


起こしてから弦を外してメーターを確認。


ナット部と先端部を押したりひっぱたりして調弦時を再現します。


メーター値が0になるようにすれば理論上は演奏時と同じネック状態です。


状態を維持したまま作業台へ移動して固定します。


指板修正は最小限が理想です。


6フレット以降のハイポジションフレットは減りが少なかったためクリーニングして戻します。


鈍くなったナイフで長年の手垢、脂分でしょうか、緑色に変色した汚れを除去。これがこぶりついたままではフレット浮きなどにつながります。


ローフレット弾きのオーナーだったからだと思うのですが1〜5フレットは消耗が激しかったため新しくします。

通常は全て新しいフレットの交換することをお勧めします。指板修正をする以上、手間賃は変わりませんので。


無事にフレット交換が完了したらナットも新しくします。


70年代Martinらしく今回はミカルタで作製しました。


弦間にバラつきがあるナットは残念なナットです。愛情を込めてビタっといい感じにします。


ネックリセット効果でサドルがバッチリの出シロになりました。フレット交換による影響を先回りしてネック角度を決めるのですが、これが非常に難しい。主に経験から得られる感覚に頼るところが多いので師匠に相談しながらですが自分も大分感覚を掴んできたように思います。


メンテ完了!

これで堂々と店頭に並べられるビンテージギターになりました。

 

こちらのギターも店頭に出るやいなや売れてしまいました。

SHOPサイトで自分が手がけたギターたちにSOLDマークが付くととても嬉しい気分になります。なんとなく認めてもらえたような感じがして今後の糧になります。

これからも精進していきたいと思います!

ブリッジ整形&ロングサドル変更 / D-28(1965)


スタッフの山口です。D-28、1965年といえばロングサドルからショートサドルに変更になった年です。シリアル番号からこの個体のオリジナルはロングサドルのはずだそうです。


ということはオリジナルのブリッジではありません。写真ではわかりづらいですがディティールも若干違和感があるためオリジナルっぽくするために手を加えます。


恐らくマーチン用の出来合いのブリッジに交換されていたようです。1弦側と6弦側で高低差がほとんどない為オリジナルと同じくらいなだらかな高低差を作ります。写真はその作業中。他にも師匠の皆川にどの辺がもうちょっとこうとかああとか相談しながら四苦八苦。


整形し終えたらロングサドルに彫り直すために既存の溝を同じエボニーで埋木します。余計なところにノミが当たらないように入念にマスキング。


溝が埋まったら弦長を測り溝のルートをマーキング。ルーターで狙い通りの位置に溝を彫るのですが、ロングサドルの場合少しでもルーターが前後左右に傾くと顕著にそれが見て取れてしまいます。


ロングサドルの両端がウイングに大きく突き出てしまうのはあまりカッコ良くありません。写真の通りこのくらいがちょうどイイ感じです。(5mmくらい?)

左右にルーターのジグが傾くと1弦側だけ、もしくは6弦側だけ溝がビヨーンと外側に伸びてしまいます。ショートサドルに比べてロングサドルは何かと面倒なのです。

6弦→1弦側に向かって山形ですが少しずつ低くなっているのが分かりますね。この若干の高低差がないとサドルが入った時に結構な違和感があります。

飴色に焼けた1965年製のD-28。ロングサドルが入るとさらにビンテージ感が出ますが今回はここまで。

アコースティックギターのお手本のような音とルックス、近頃の円安も相まってさらに手が届かなくなってしまった「THE アコースティックギター」です。

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。