2023年12月

今年も大変お世話になりました。

本年中も大変お世話になりました。

長らくお待たせしております方には、申し訳なく存じます。

毎年感じますが、齢を重ねるごとに過ぎる時間のスピードが加速度を付けて速くなってきております。

もう1年が終るのかと思う反面、そんなに短い1年の中でも仕事に限らず、振り返ればいろいろあるものだと思います。

いろいろある中で、こうしてギターの仕事に邁進できるのも、皆川ギター工房をご理解いただき、支えてくださる皆様のおかげでございます。

遠方のお客様では、大切なギターを宅配便にて託して下さり、返却後はお礼のメッセージまで頂き、感謝の念に堪えません。

また更に日々精進して参ります。

来年もまた寛大な視点でお付き合いいただければ幸いでございます。

年の瀬、皆様風邪など召さらぬようご自愛ください。

私共も元気に来年も一所懸命がんばります!

                     

ネックリセット / Martin 00-18


スタッフの山口です。

急激に寒くなってまさに冬。乾燥はアコースティックギターの天敵ですので加湿をお勧めします。


今回もヴィンテージギターのネックリセットです。いつも通り15フレット下のダブテイルジョイントポケットを温めます。


マーチンは本当に素直にネックが外れてくれます。ヴァイオリンのように長く使って欲しいからと、修理を前提として設計されている点だけでも好感がもてるメーカーです。


恒例の記念撮影。


ダブテイルジョイント周辺は古い接着剤や塵を綺麗に除去します。


それをしなければ良い接着ができません。

精度の高いジョイントは音にも影響が出る、はず。


ヒールを調整し角度を正常にしてあげたら、お辞儀する指板の厚みを足してあげます。


これがないとネック角を見た時に14フレット辺りから下に下がってカッコ悪いし、ハイフレットを弾く際に弦高が高くなってしまいます。


ネックとボディを組んで接着したら15フレットを戻していきます。


エボニーは埋木しても馴染むため、ほとんどの人がそれに気づきません。


今回は指板がガタガタなので最低限の指板調整をします。フレットは戻す時のために1弦側にマッキーでチョンチョンと印をつけておきます。1弦側と6弦側がリャンコにならないように。


チップしないようにフレットが抜けたら指板修正開始。


フレット浮き防止のためにフレットに何十年も溜まった手垢や皮脂の汚れを1本ずつ落としていきます。


フレットを打ち直してすり合わせ。良い具合にピカピカに仕上げます。


ネックリセット時はサドルの新調は必須です。


良い具合のでしろになりました。


弦高もバッチリ。


センターもしっかりと調整できました。


多くのギターを手にして思うのは00サイズが日本人の平均的な体格にとって至高のサイズ感なのではないか、ということ。


このヘッドストック、これもまた至高のフォルムではないでしょうか。


当時はヘッドの形は選びたい放題でデザインできたのではないでしょうか。何事もシンプルイズベスト!です。


最後は修理前の画像。いつも思うのは、このギター何十年もどこに眠っていたんだろう、です。アメリカの田舎町の蔵的なところにあったのかもしれないし、ショップのバックヤードにあったかもしれない。どちらにしても弦高がまともに弾けるレベルではないのでどこかに長年眠っていたのでしょう。家の収納の奥からこれが出てきたら、、と妄想してしまうほどのナイスギターでした🎵

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

ブリッジ剥がれ修理 / Martin C-1R


 

見慣れた人なら、今回はクラシックギターのブリッジ剥がれね。

と言う感じでございます。

クラシックギターであれば張力もフォークギター程無いのだから弦も貼りっぱで大丈夫でしょ。

と思っていますと何かしら不具合が出ます。

クラシックギターでも張力は60Kg位は掛かっていると思いますので、大人がぶら下がったと同じ位の力が掛かっています。

製造上不具合があった場合は、「ちゃんと管理してたのになー。」という場合もあると思いますが、気に入ったギターなら仕方ないとあきらめて修理しましょう。

 

 


 

ネックの角度が狂っちゃったり何か変な事になるより、こういうのでしたら全然マシですね。

この後、このギターの画像がありますが、とても特徴のあるギターで仮にネック角度が狂ってしまったら、どうしましょ。

私に修理出来るのでしょうか、と言うギターです。

トーマス・ハンフリー(Thomas Humphrey 2008年没)という製作家の方とMartin のコラボレーションらしいです。

レイズド・フィンガーボードを考えた人でこれが、音響上、演奏上とても優れたギターと言う事です。

確かにクラシックギターの演奏者は、12フレットジョイントのギターで16~7フレット位まで普通に弾きますから、そのポジションは楽だろうと思います。

 

そして音響上トップに対してこの弦の角度に最大の意味があるそうです。

調べればどこかに書いてあるかもしれませんが、私にはその発想が分かりませんけども、確かに良く鳴る気がしました。

 

 Martin  C-1R

 

 

世の中には天才的な人が沢山いるものだと思います。

沢山売れた商品を考えた人は天才で、あまり売れなかった商品を考えた人は凡才、そんな風に思ってしまいがちです。

でも良いか悪いかなんて、好きか嫌いかで左右してしまうものだと思っていますから、「ありゃ駄作だったなー。」なんて物でも好きな人にとっては「なんでこれの良さが分かんないのかねー。」となります。

私が昔仕事でお世話になっていたOvaiton 等は最たるものでじゃないでしょうか。

いっぱい売れましたから成功は成功ですが、嫌いとはっきり言う人も多いと思います。

 

私達やお店の人たちは客観的に意見を述べているつもりでも意外と好き嫌いの感情が何となく入っている事もあるんじゃないでしょうか。

ですから、楽器屋へギターを買う事を決めて行く方に多いかと思いますが、出来るだけ良いもの、良い物をとプロの意見を求めがちになりますが、「これが好き!」と言う直感が1番大事だと思います。

楽器は買いに行くものより、出会ってしまったものの方が遥かに自分にとって良い物ですから、良い物を買いには行ってはいけません。

何故ならそこ以外にもっと良い物があるから。

時々楽器屋に見に行って触らせてもらってください。

いずれ一期一会の出会いがあるはず。

ナット交換 / Martin OOO-18


スタッフの山口です。

今回はリペアの基本中の基本、ナット交換です。写真はすでに外れてますが、実はこの古いナットを綺麗に外すのが一番緊張する工程です。乗っているのは古いナットと新しく作る牛骨材。


溝に残った古い接着剤はなるべく木まで削り落とさないように除去します。

この小さいノミは仕様頻度TOP3に入るくらい重要な工具の一つ。


ベルトサンダーで大まかに形を作ります。ナットの横幅縦幅は手作業でちょうど良く、キツすぎず緩すぎず。


メーカーの特徴やお客さんの要望に合わせて1弦と6弦の位置を決めます。ギブソンはもっと外、ヤマハはもっとグッと中に入ります。


弦間は1弦→6弦に向かって少しずつ広がっていくのが理想的ですね。


ある程度溝の深さを決めたら背高を落として行きます。ナットの背が高すぎると不思議と弦高が高く感じて、弾きづらく感じるのはプラシーボ効果というやつでしょうか。


皆さんの所有されている弦間をよく見てみてください。よく見ると笑っちゃうくらいバラバラなナットも結構あります。


ナットの見た目は色んな方向から見ていいフォルムに仕上げたいものです。


こっちからもマーチンぽいかな?とか見ます。


なぜ撮ったのか分からないけど、、


多分このネックのVシェイプ好きだなぁー、と思って撮った気がします笑


このくらいの弾きこまれた感が一番魅力的な音がする気がします。


 

ナイスギター過ぎます。

いくらナイスギターでも状態が悪ければ良い音は出ません。

と、言いたいところですが本当にナイスギターは弾きづらかろうが弦が錆びまくっていようが修理前にすでに素敵な音がしていることがほとんどです。

修理してあげるとそれがさらに素敵なサウンドになります。

今回もそんなナイスギターに関わることができて感謝です。

今回も最後までありがとうございました。

 

ボディ割れ修理/ネックべた付き直し / Matin D-28(ネック編)


私のブログ、間違えて前回先にベースを出しちゃったので、

前々回のボディ割れのD-28です。


ネックの塗装が劣化しています。


剥げちゃってる所もあります。


ベタベタしてて、剥がれている所は段差があり、とても感触が悪いです。

 


 

ラッカー塗装はこのように劣化してしまうと、べた付きます。

こうなってしまうと、拭いてもすぐにまたべた付いてきて切りがありませんので、劣化している塗装は全て除去するしかありません。

水研ぎしてべた付く塗装を除去しますが、悪い塗装が無くなるまで研ぎますので塗装がほとんど剥がれちゃう場合もあります。

マーチンのネックは茶色く着色してある為、剥げた所と残っている部分と色が違いますから、見た目を気にされる方は最初から全部塗り直し(リフィニッシュ)をお勧めいたします。

 

 


ヘッドまで水研ぎします。


剥けて段差があった部分も触り心地に違和感が無くなりました。


つや消し塗装の感触が気持ち良いです。


但し、弾いているうちに擦れて、割とすぐに艶が出てきます。

 


 

塗装が劣化しない為にどうすれば良いか、何をどうするか?

温度と湿度が原因と考える方もあるようですが、そんなに大きな原因では無いと思っています。

夏にべた付くようになる、と言うのは気温が高く、手汗等もある為べた付き易く、すでに前から劣化している状態だと思います。

おそらく、私が思うに、手油やラッカー塗装に良くないクリーナー等が原因では無いかと思います。

ですので、使用後は布で乾拭きが1番良いのではないかと思います。

汚れがひどい時は良く絞って水拭き、これが良いのではないかと思います。

ラッカーは水分に反応して白く濁りますが、すぐに乾いて戻りますので心配いりません。

 

トラディショナルなものや、古いもの、バイクや車…いろんなものに言えると思うのですが、ちょっと手間がかかる事があります。

でもそのちょっとした手間はいとわない、更には楽しんで所有している人の物のコンディションは、めんどくさがり屋さんの物とは雲泥の差があります。

ほんのちょっとの手間の差なんですけどね。