スタッフの山口です。
今回はロッド交換です。捻じ切れてしまっている悲惨な写真からスタート。修理屋としては腕まくりをしてしまうような画像ですがオーナーからしたら青ざめてしまう画像ですね。
ラッカー塗装でもGibsonは塗膜が厚いので指板とネックの境目をナイフでなぞっておきます。こうすることで指板を剥がす際に少しでも塗装の剥離を抑えられます。
指板をなるべく元の位置に戻せるようにダボを数カ所仕込んでからネックアイロンで温めて接着剤(ニカワやタイトボンド)を軟化させます。
ネック側の木目をよく見て順目の方向でヘラを入れて剥がします。時間をかけて綺麗に剥がれました。
埋木をノミで取り除いてその下に隠れているロッドを掘り当てましょう。
サビついたロッドのお目見えです。錆びていて癒着しているので慎重に。錆びているのは木が呼吸している証拠。
溝に残った錆や塵を取り除きます。
この鉄芯のトラディショナルなアジャスタブルロッドはGibsonが発明したモノです。
ネックの強度増し+アジャスト効果のある一石二鳥なナイスアイデア、今ではほとんどのメーカーで採用されていますね。
ちなみにMartinがアジャストできるロッドになったのは1985年製からと言われています。それより前の個体は単なる補強ロッドで調整(アジャスト)はできません。
適した長さに切断したら切込ダイスでナット用の溝を作ります。
ちょうど良いところでナットが閉まるように何度が長さを微調整します。この写真のようではまだ頭が出過ぎです。
ロッドエンドは60年代からここに収まります。カタカタと動かぬようエポキシ樹脂を隙間に充填します。
溝とロッドのしなりに合わせて作製した埋木でロッドを仕込みます。
埋木をネック上面を平らにしたら指板を戻します。
指板側とネック側にたっぷりのタイトボンド(またはニカワ)を付けて戻します。溢れ出るタイトボンドをせっせと拭き取ります。
指板がズレずにうまく戻れば塗装修正は不要ですがどうしても段差ができてしまう場合は平らにして塗装修正を施します。その後フレットをすり合わせたら完成。前述したナットからの頭の出具合もOK。
アジャスタブルロッドのアジャストとは「調整」という意味です。たまにネックの不具合を「直す」という感覚でロッドを触ってしまう人がいますが、ロッドはあくまで微調整の役割。調整のレベルを超えたネック不良はロッドでは無力。無理になんとかしようとすると冒頭の画像のようになってしまいますので注意が必要です。
またアジャスタブルロッドは個体によって動き方も微妙に違います。反りを治そうとしても変にねじれてしまう場合もあったり、逆にロッドの調整だけで驚くほど改善する場合もあります。「ネックがおかしいな」と感じたら調整も含めまずはお気軽にご相談ください。
今回も最後までありがとうございました。