スタッフの山口です。今回もいつの間にか師匠が写真だけアップしておりました(笑)ので修理当時を思い出しながら文章を付けて行こうと思います♪( ´θ`)ノ
今回はネックリセットとトップのクラック直し。ギターは所謂「アコースティックギターの教科書」的な存在、MartinのD-28です。写真はおおよそ15フレットの下にあるダブテイルジョイントのスポット(隙間)にヒートスティックを挿入し温めているところです。接着剤(にかわ)を温めて徐々に力を加えることでボディーから外れます。
木工の精度や使われている接着剤、経過年数によって「パコッ」と外れたり「ウニョッ」と外れたり。今回は「ウニョッ」と滑るように外れたパターンです。この後は温められてゲル状になった古い接着剤を綺麗にします。余計に剥がれてしまった木部などの修正は一日以上乾かしてから行います。
少し飛んで、、角度も決まり、指板のハイフレット側が下がらないように指板の厚みを足した所です。写真をよく見ると足した部分が分かりますね。茶色いですが指板と同じエボニー(黒檀)です。真っ黒のエボニーも貴重になってきているそうで、最近はGibsonやMartinでもリッチライトという人工素材が使われ始めています。近い将来、指板がリッチライトの場合は同じリッチライトで修理するようになるのでしょうか。
この後は足した部分に違和感がないように筆で黒くタッチアップしてから接着します。
ネックが着いたらクラック修理です。ピックガードが反り上がる力にトップ板が負けて起こる「マーチンクラック」と言われている割れ方ですね。
Martin以外の古いギターでも同じ割れ方をよく見ますが。。
どんな修理の場合でも、接着が始まってからアタフタしないように、必ずクランプやジグなどのシュミレーションを行います。接着剤を付けずリハーサルをしてから万全の状態で本番。それでもアタフタします。
ピックガードの反りも割れも無事直りました。裏側にはクリートで補強してあります。
元起きしていたネック角度もいい感じになり、弦高も低くて弾きやすいギターに生まれ変わりました♪
1966年製、柾目のハカランダですね。「アコースティックギターの教科書」と書きましたが、コイツは中々手が出せない金額の教科書です。
しっかりと修理、調整されたギターは販売価格に関係なくすぐ買い手がつくことが多いです。そしてすぐ売れたことを知った時に僕はとても嬉しくなります。師匠の皆川も修理が完了し、お客さんが取りに来てその仕上がりに喜んでくれると「一生懸命修理して良かった!」と、とても嬉しそうです。それを見るとこの仕事がもっと好きになります。