スタッフブログ

ネックリセット Martin OOO-21 (1945)


スタッフの山口です。アコースティックギターはボディーが空洞になっていますので、エレキギターなどのソリッドタイプよりもトラブルが多いです。特に弦を長時間張りっぱなしにするとネックが弦の張力で起き上がることがあります。この写真では分かりずらいですね。


弦の張力でネックが順反りしただけならアジャストロッドがあるから大丈夫、な時ももちろんありますが、ロッドも決して万能ではありませんのでやはり弦の張りっぱなしは厳禁です。


順反り+元起きともなると今回のようなネックリセットという大掛かりな修理をしなければ改善できない場合がほとんどです。

あ、写真は指板を温めてトップ板から剥がしています。


ネックリセット用のジグを当てながらダブテイルジョイントと呼ばれる接続部を温めていきます。


今回は温めてから20分程で外れてくれました♫


今回のギターは1945年製、太平洋戦争中ですのでアメリカも金属は枯渇していました。そのために写真のようなエボニーの角材がロッドとして代用されています。所謂エボニーロッド。もちろんアジャストはできません。


今回は訳あって先にドリル穴を埋めました。


地道にヒールを削ってネック角度を修正していきます。何度もシュミレーションします。


接着剤を付ける前ですがクランプを外して弦を張っても大丈夫な程度までジョイントの木工精度を高めます。接着剤頼みのジョイントでは師匠のOKは出ません。


センターがズレないようにネック角度は縦方向だけでなく左右のバランスも見ながら行います。何も意識せずに進めると大抵左右が傾いてセンターがズレてしまいます。


今回はフレットすり合わせとナット調整、サドルを交換して完了です。


エボニーロッドのマーチンは質量が軽いため音もそういう音に感じます。好き嫌いが分かれるかもしれませんがいい音には変わりありません。正面から見ても迫力がありますが、、、


 

、、、バックのハカランダの木目の迫力はさらに凄いですね。

僕には燃え上がる炎のように見えますが皆さんはどうでしょうか。

アコースティックギターは構造上、弦の張力で歪みが出やすいです。演奏時以外は弦を緩めていればこのギターもまた何十年もネックリセットしなくても大丈夫。

また新しい個体は弦の張力がなくても時間と共に木が動いてしまうことがあります。木は時間が経てば経つほど水分が抜け硬くなり、安定するので、保管方法さえ間違えなければ古い楽器の方が安定していると言えます。この「安定している」というのは、古い木製楽器が高額になる理由の一つだと思います。ただ新しいギターでも長時間しっかりシーズニングがされている材を使っていれば安定しているものもありますね。

木材のことを語り始めると長くなってしまいますので今日はこの辺で。

今回もご覧いただきありがとうございました。