クラシックギターのネックジョイント(スペイン式)は、フォークギターのネックジョイント(ドイツ式)の様に抜けません。
アイロンかけちゃえ!っていう声も聞こえなく無いですが、アイロンでは不確かで根本的な修理とは言えません。
これの修理はどうすれば良いのか、クラシックギター専門で頼りになる人はクロサワ楽器の山口さん以外知り合いがおりませんので、もう何年前になるか覚えてませんが新大久保店に聞きに伺いました。
その昔は、お茶の水駅前店で私がアルバイト時代に山口さんには大変お世話になっておりました。
そしてこの仕事を始めてから、仕事が無かった時にギタープラネットの秋野さんを紹介してくれたのも山口さん、あ、でも秋野さん紹介してもらったのは2度お願いに行ってから、最初は「キミに預ける仕事なんか無いよ。」「フォークギターは、今井君や村山がやってるんだから。」…そらそうだ。
今井さんと村山さんだもん。
分かっちゃいたけど、また行きましたよ、こっちは仕事取らなきゃ干上がっちゃうんだから。
後にお礼をしに伺った際は、「あいつ(秋野さん)いいだろ!」とおっしゃった山口さん。
なんだかんだ言っても優しいお方。
以前預かった、古いB.Cリッチの限定生産のフォークギターのジョイントが分からず、ネットでたどり着いたのがアメリカの修理屋。
(フォークギターでもジョイント方式が区々な為、ダブテールジョイントとは決め打ちは出来ません。)
ダブテールジョイント(ドイツ式)で無い事が分かったのでそれだけで良かったのですが、「こーやってヒール切っちゃって、ボルトオンジョイントにしちゃうんだ!Good Luck! 」なんつって、教えてくれたので、フォークギターならいいかなとちょっと思いましたが、ジョイント切っちゃう勇気は無かった。
そのB.Cリッチも画像がありますので、そのうちブログにアップさせて頂きます。
過去にもネックリセットの形跡があるマーチンですが、ネックリセットしたからと言って頑丈になったわけではありません。
ギターに関わる人達は色々と意見が違います。
「緩めなくても大丈夫」「毎日弾くのなら緩めなくて大丈夫」「1音下げる」「1回転緩める」等々、色々言われます。
当方の場合、「その日の使用が終わったら弦は、しっかり緩めましょう。」「緩くする分にはいくら緩くても大丈夫です。」
メーカーや製作家の方にも「僕のギターは弦を緩めちゃダメ。」と、何らかの計算か理屈か理由があるのだろうと思いますが、ボディが空洞の箱である限り、弦を緩めない場合の方がネック角度が狂ってしまう確率は高くなります。
ネック角度に不具合が出ない場合も、何かしらの不具合が出る確率が高くなります。
ネックの角度が狂わなかったとしてもフォークギターのレギュラーチューニングでは、約70Kgの張力が掛かりますので、ひどく反ってしまったり、ブリッジが剥がれたり、ブリッジが剥がれなければトップが歪んだり、何かしら不具合が出やすくなります。
チューニングを毎回緩めることによって1弦、3弦が切れやすくなる場合はチューニングしたまま緩めず、他の弦を緩くしましょう。
1、3弦であれば、他の弦がちゃんと緩んでいれば大丈夫です。
製作家やメーカーが理論や計算を積み重ねて強度を上げてもアコースティックギターのように空洞のボディにネックが付いている以上、長期間チューニングしたままではネックの角度は狂ってしまうでしょう。
ですがそうした作りての、いろんな思いが今のバラエティーに富んだブランドを生み出しているんでしょうね。
メンテナンスフリーのようなアコースティックギターが作りたいと思っても、そうするとアコギらしさから遠ざかってしまう。
音もデザインも良くしたい…かと言って、トラディショナルなギターをより良く作るんだと言ったって、そりゃ大変。
こんなに難しい事は無いです。
ネックリセットした際、指板やフレットもネックをトータルで直さなければならない事の方が多いのですが、特に必要が無い事も当然あります。
指板が歪んでおらず、フレットの浮き等無く減りも大きく無く、ネックに反りがあってもアジャスト調整可能である場合。
これ位の条件が揃えば、リフレット(指板修正、ナット交換込)せずにリセットのみ(フレットすり合わせ、サドル交換、他調整込)で完了出来ます。
ですが、ネックを抜かなくてはならない事態にまでなっている場合、やはりリフレットも必要になる事が多いようです。
もしくは、出来るだけコストを上げたくない場合等は、多少の事は我慢してリフレットをしない。
ここからはまた私の想像ですが、ヒールを継がない理由を最初は、ダブテールジョイントの為かと思ったりしたのですが、あまりそこに理由は無いような気がします。
やはり正解は、ヒールもヘッドもネックを丸ごと成型してしまえば、生産効率が上がるではないか、と言う事ではないでしょうか。
結果的に時代が経つにつれ、贅沢な木の使い方になったのではないでしょうか。
実際は分かりませんが贅沢な、と言って無駄が多いかと言えば他の工法と比較しても、ちゃんと考えて取っている(木を使っている)と思いますし、然程無駄は多くはないと想像しています。
想像です。
本当の正解を知りたい方は、ご自身でお調べください。
そしたら教えてください。
色々な修理が合わさった場合は分けて記事にすると良いのですが、今回は1回でまとめて見て頂きます。
トップの割れ、ブリッジのスリット直し、PU取り付け、ネックのリセット、リフレット、画像は無いのですが他に力木の剥がれもあったかと思います。
十三年位前に買った、すでに10年落ちしてた軽自動車を直し直し、まだ乗ってます。
安物を見くびる人が時折いますが、違うんです。
気に入って持っているのです。
このギブソンは安物ではありませんが、うんと安いギターの修理依頼の場合も同じ熱量で修理にかかります。
長く預かる事も多いので、そのうちに修理代が惜しくなっちゃう人もいるようで。
安いギターも確実に引き取りに来て頂くには、前金をもらった方が良いのかなと考えたりします。
連絡がつかなくなると、最初は具合悪いのかと思ったりしますが、そのうち憤りを感じてきます。
一所懸命にやってるだけに、悲しいやら悔しいやら、売り上げが立たないまま置いておくしかないんです。
処分したって修理代、回収出来ないんですから。
すいません、愚痴になってしまいました。
弦高が下げられなくて弾き辛ければ、ネックの角度を直さなければなりません。
なりませんが、なかなか大変な修理ではあります。
どのメーカーも同じジョイント方式ではない為、修理経験のないメーカーではまずジョイントの方式を調べなくてはなりません。
逆にギブソンのように分かっているものは悩まず、作業を進めます。
但し、通常通りには抜けない場合もあるので気を付けなくてはなりません。
今回は普通でよかった。
過去の修理実績は「こりゃ普通に抜けないわ。」というギブソンがありますので、よろしければそちらも御覧下さい。
いつもでしたら、ここまでで終わりですがちょっと珍しいモデルなので、もうちょっと見させて頂きましょう。
当方の過去の修理例にもこの年代のJ-200 に同じ仕掛けがある画像が見られます。
トップミュート、ミュートバー等と呼ばれています。
トップが凹まないように、凹んで来たらこれで持ち上げしましょうと言う事らしいです。
※ 但し図り方や、見方によっては数値に個人差が出ます。
同じ高さをイメージしているにもかかわらず、数値に差が出ます。
ネックを外す為に熱を利用して接着剤を緩ませて外します。
以前は蒸気を使っていましたが、その場合確実にジョイントのポケット(あり継ぎの空間)に蒸気を送りこまなければなりません。
現在は、ヒートスティックと言う棒全体を熱せられるものを差し込んで温めますので、突っ込めば温まるのですが、やはりポケット部に熱源があった方が効率は良いです。
ですので、ヒートスティックであっても、ジョイントのポケットに貫通するように穴をあけます。
いろんなメーカーがこのダブテールジョイントを採用していますが各メーカー特徴があり、慣れないメーカーでは、ジョイントのポケットがどこにあるか分からず何度も穴をあけ直す事もあります。
画像のジョイント部ネック側、ボディ側両方に2本ずつ溝が付いています。
そこがジョイントのポケット、(隙間)です。
そこに半田ごてに付いた棒(ヒートスティック)が差し込まれます。
ネックの角度が狂う原因はジョイントの精度が原因では無いので、ここに隙間が出来てしまうのは問題外です。
ジョイントの精度が甘いものは、一所懸命ネックのメンテナンスに気を配ってもいずれヒールが浮いてきてしまいます。
ヒールに隙間が出来てしまったものは、ネックを外して根本的な修理が必要になります。