ボディ(トップ、サイド、バック)
ボディ破損 / Taylor 314 Left
ボディの割れを接着する際は、出来る限りずれないように接着したいのですが、割れが一筋(1本)だけであっても難しい作業であります。
こうなっちゃっていますと、かなり難しく全部きれいに揃える事はある程度諦めて、どこまで合わせられるか、どこを合わせたらどこが合わなくなるか、どの位ずれるのか、クランプは掛けながら接着出来るのかしら、そして接着本番の時には「あれ?仮止めの時はもっとうまく行ったのにー!」となる所まで考えておきます。
修理は昔から一人でやって来まして、それなりにやるしかありませんでしたが、気が付けばそこに山口の手X2があるでは無いですか!
一人でやろうとしますと手が二つしかありませんから、どうすれば上手くクランプ出来るか、順番はどっちからどうするか、何かジグ作らないとダメかしら?、等々…どうやってったら良いか分かんなくなる時があります。
一人じゃないってありがたい!
この時の見積もりは忘れましたが、塗装はしてありますが色合わせしてないところ見ますと出来るだけ面倒は省いて仕上げたのかな、と思います。
トップが無事だったのは、不幸中の幸い。
トップ板の事をサウンドボードと呼びます。
左弾きの方にとって左用のギターは貴重ですし、まして気に入った物となればなかなか見つかりません。
何につけ、左用の道具は貴重です。
左利きの人の中でも、道具は右利き用を難なく使いこなし、そして利き腕は左と言う方もいます。
そう言うバランスって、羨ましいです。
ボディ割れ / Ovation 1718-1
Ovationの塗装膜は分厚いので、研く作業は剥げてしまう心配が少なくてとても良いのですが、非常に硬ーい塗装の為、仕上げ磨きがとても大変です。
なかなか、細かいペーパー傷が消えなくて大昔には失敗もしました。
Ovationのカラーバリエーションはとても多くて、中には密着していない(剝がれやすい)色があります。
そしてウレタン塗装はラッカーと違い、層になって乗っかっているイメージです。
その細かいペーパー傷をバフで磨き込んで行くのですが、早く終わらせないとドンドン熱を持ってきて、塗装に何らかの事象が生じます。
一定の時間で消えないキズは、諦めて再度水研ぎし直さなければならないのですが、水研ぎしますとそれまで磨いてきて、ある程度きれいになったのに、またやり直しになります。
ですが当時の私は、「あと少し!」とむきなってバフ掛けしてしまいました。
そしてトップコートが剥がれてしまいました。
文字で見ればそれ位、何も問題無さそうに感じますが、カラーによってはごまかしが効きません。
その頃のOvation の修理は代理店から請け負っておりましたので、営業の方のお力で何とか納めて頂いたと思います。
今思えば、いろんな人たちに助けられて来たなと、その時々助けて頂いた方々には全く恩返しもしておりませんが、こうやって続いている事がせめてもの恩返しでございます。
皆様のおかげで今も修理屋を続けていることが出来ております。
最近まで人生を振り返るとか、語るとか、未だ出来ないと思ってきましたが、もうそろ還暦の支度が始まろうかと言う齢ですので、そういう事も必要かと思う今日この頃でございます。
ボディ割れ / Leho Ukulele
こちらのウクレレはLehoというウクレレブランドですが、すごくちゃんとしているのに高く無いのです。
高く無いのに単板でちゃんと作ってあります。
とても良いウクレレです。
Lehoと言うウクレレは初めて知りましたが、最近は安くてホントによい楽器がいろいろあります。
勿論高価なヤツは良い物が多いですが、高くてもそんなでもない物もあります。
良し悪し関係なく、憧れの楽器を所有する幸せもあります。
選ぶ基準は様々ですが、ブランドは関係なく演奏する事だけや旅のお供等が目的であれば安くていい楽器がありますので、注目して見ると面白いと思います。
もちろん、安い外国で作っている事がほとんどですがメーカーの努力は大したもんだと思います。
高級志向の方はなかなかピンと来ないかと思いますが、この値段でここまで出来ているのは大したものだと思います。
ギターならば更にそう感じます。
私が若かったころより今は安くて良い楽器が沢山あります。
ボディ剥がれ / Ovation 1990
修理する箇所によりますが、この場合は邪魔になりますのでパーツ類は外して作業します。
丸いマイナスのネジ頭のようなものは、1/4ターンファスナーと言う呼び名の電池ボックスホルダー、1/4回転した所でオスメスが嚙み合って電池ボックスが固定されます。
その右上にちょこっと見えているのはプリアンプのパネルとVoノブ、これも当然外します。
このモデルは 1990年のコレクターズシリーズ Ovation 1990 で、オベイションが一番ノリノリだった時代。
16フレットジョイントで、24フレットあるデザインは1988のコレクターズシリーズから89、90と3モデル続きました。
丁度バンドブームの時代でエレキみたいにアコギを弾く人も沢山増えた時代っだった気がします。
スプルースやシダー以外の奇をてらったトップ材を用いたモデルとしては最初のモデルで、スーパーシャロウ199S-7、ディープボウルカッタウェイ1990-7の2タイプ。
杢目を強調した見た目ですから、みなさん良い杢目の物が欲しいんですけど、バーズアイがちょぼっとしか入ってないのもあって不公平感があるなと思う日々でした。
バッテリーボックスがまだ1/4ターンファスナーで留まっていた頃のOvation は自分の若かったころの思い出等と相まってとても好きな時代のOvation でございます。
ボディサイド割れ修理 / Gibson J-45
上の画像でも分かりますが、割れはずれて段がついています。
割れ修理の際には、このズレを出来る限り無くして接着したいのです。
トップの割れを接着する場合は、平らなもので挟んでクランプしてやればほぼズレは無く接着が出来ますし、然程力が必要無ければ強力磁石で挟む事も出来るのですが、このようにサイドやバックの場合はそれが出来ない事が多いです。
接着するには割れ部分に接着剤が行き届かなくてはなりませんが、「接着剤を付けてから、割れ部分のずれが無いようにちゃんとそろえて、クランプ、あ、ちょっとずれたから直さなきゃ…」何てことやっている暇はないのです。
一発でズレ無くクランプ出来れば問題無いのですが、そんなことは出来ないので、ズレていない状態を作ってから接着します。
「ピタッとしていたら接着剤が入らないではないか。」とお思いの貴兄、スーパーグルーを使うのです。
所謂、瞬間接着剤の類です。
コツはありますが、これの粘度の低いものなら毛細管現象の原理で接着出来ます。
Gibsonのラッカー塗装はスーパーグルーの付いた跡が研いても消えずに残ってしまう場合がある為、ボディの内側から接着剤を入れられればそうします。
割れの筋が目立たないようにするには塗装を木地まで剥がして塗り直しますが、今回はそれは無しです。
楽器が新しければ新しいほどキズや修理の跡が悲しいですが、ずっと使い続けて行くうちにキズも増え、修理も必要になる事が出てきます。
キズや修理跡も使い続けた歴史の一部と思えば更に愛着も湧いて来るのではないでしょうか。
ブリッジプレート交換(トップ矯正)&ネックリセット / Gibson L-1
ボディ割れ修理/ネックべた付き直し / Martin D-28(ボディ編)
ネック折れ修理の場合は、2通り見積もりを出すのですが、ボディ修理は塗装修正無し仕上げが基本になります。
割れ修理の修理跡は残る旨は伝えまして、ご納得されればそれ以上の見積もりはありません。
酷く割れている場合で削ったり、足したりするような修理は塗装修正有りの見積もりを出します。
言い訳に終始していますが・・・。
普段製作をやる人ならバックごと交換しちゃえばきれいに難しく無く出来てしまうのだと思いますが、うちの場合は出来る限り部材は交換しないやり方ですので、割れてずれている部分を平らに戻さなければなりません。
力を入れて「パチンッ!」と戻ればラッキーなのですが、そうは簡単には戻りません。
亀裂部分の出っ張りが上下逆になってしまっていますから、力を入れて戻せる所までナイフでちょっとずつ削って調整します。
亀裂部分に隙間が出来てしまってはいけないので、ホントにちょっとずつ。
それも大変なのですが、このギターのようにサウンドホールから手が入るギターならまだましです。
小さいものは見た目が大したことない割れでも、修理自体はすんごい面倒な場合が多々あります。
力木剥がれの見積もりをする際等、ホコリが隙間に入り込んでしまわない様に、ホコリも一緒に接着してしまわない様に掃除が先です。
ちなみに結構なホコリに見えますが、この位のホコリなら全然大したことありませんよ、全然。
ボディ破損 / Morris W-25(最終回)
レフティーの違和感を消すため画像反転。
どうでしょうか。この高級感?風格?
トップの色を黄色く着色し馴染ませたら逆に勿体無い、と考えた当工房のこだわりが伝わりますでしょうか。
壊れたら直せばいい、そしてそれは隠さなくてもいいのではないか。傷跡はそのギターの歴史であり、またそれがまた個性となっている。傷跡は「男の勲章」という価値観を体現したようなギターですね!
ボディ破損 / Morris W-25 (其の伍)
スタッフの山口です。
今週で第五回となりました、Morris W-25のボディ破損修理。いよいよ納期も迫ってきた頃の様子です。
バインディングを新しくしたところはどうしても色が異なってしまうため、まずはバインディングを焼けたように色付けします。