ボディ(トップ、サイド、バック)

トップ割れ(クラック)修理 / Ovation 6768


トップ割れの修理なのですが、撮影が下手で説得力が出ない為、この種の記事はほとんど無かったと思います。

たまにはやっとこうと思いましたが、やはり直ったのか何なのか、伝わらないと思います。


割れて上へ盛り上がりますので、平らに押さえて接着します。

通常のセンターホールのギターは、サウンドホールからクランプで挟み込んで平らにしますが、Ovationの場合は塗装が厚く固くその分割れも固いので、センターのサウンドホールであってもこの方法が有効のようです。


センターホールではないモデルにはアクセスドアが無いと困ります。

近年のセンターホールではないOvation にアクセスドアが無いモデルがあるのですが、ネックは取れないようにくっ付けちゃってるんだからアクセスドアも要んないでしょ。

…という事か。

 

 

Ovation の場合は塗膜が厚く、しかも割れが固いのでタイトボンド等では接着出来ませんのでスーパーグルーの類で接着します。

接着部は筋が残っていますので、サンドペーパーで水研ぎして仕上げます。

この仕上げの作業が1番大変。

塗膜が固いから他のギターのようにペーパー跡が消えてくれません。

研いで出来たと思って磨いてダメで、もう一回研いで磨いて、これで良しと思って、また研いで磨いて・・・なかなかきれいにならず、角度を変えて良~く見るとペーパーの筋が残っています。

そしてやっときれいになって、いい出来。

と思っても画像を見ると、伝わんないな~と思います。

 

トップリセット / Ovation 1681-5 (Adamas Ⅱ)


トップに剥がれがあるアダマスⅡのトップをリセットします。

ネックの角度も何もかもおかしいので、丁度都合が良いです。


力木もいっぱい剥がれています。

力木もそうですが、トップの接着が弱っていては、仮に演奏可能でも本来の音では無いはず。


トップ(が乗る)を貼り付ける、のりしろ(ライニング)に接着剤が残っています。

それが割と厚めで、多少柔らかいので音響的にはあまり良く無いと想像します。


どの修理でも貼り直す際は、古い接着剤は取り除きます。

 

トップが剥がれている場合、貼り直すか否かは状態の程度によりますので、このように貼り直さなければならない場合と部分的に接着する場合もあります。

 

 

 


リフレット(指板修正、ナット交換)します。


新しいフレットは長めに打って、後から余分を切り落として、仕上げます。

全てのアダマスではありませんが、ボディから外してある状態でリフレットします。

 


一番の理由がハイポジション部分がフローティングするためにフレットを打ったり、押し込んだりしづらい為です。


トップも非常に薄い為、強い力が掛けられません。

ボディにセットしてある状態でリフレットするアダマスは、溝を(トップ板上部の指板の溝は)緩くしてフレットをはめ込む感じになります。

 

ボディ側にアジャストナットがある場合は、ネックが外れている時に忘れずグリスアップします。

長い間、アジャストロッドを締め込んであるもの等、アジャストの効き幅が狭くなっている場合があります。

一旦ロッドを戻して、ワッシャーを足して、それから指板修正します。

※どの程度戻すか戻せるかは、その都度違います。

 

 

アダマスではジョイント部に空洞があるモデルがいくつかあります。


この部分には大きな力が掛り、ネック角狂いの一番の要因となり得ます。


今後少しでも変形するリスクを減らすためにエポキシパテを充填して強度を稼ぎます。


但しこの空間は、ずっと奥まで続いている為、ある程度の充填に留まります。

 

 


アダマスやエリートはこの部分のフレットのエッヂ処理が非常に面倒です。


指板面やフレットの両サイドは、すり合わせの際に削り過ぎず、下がらないように気を付けます。

サイドが下がると見た目のカッコ悪さもありますが、1弦側はチョーキング際に音詰まりの原因になる事もあります。


現行のOvationの事は分からないのですが、この年代のエリートやレジェンド以下のモデルのナットには練り物のナットが付いているので、牛骨等の硬質で質量があるナットに交換した場合、音が良くなったと感じる人は多くいます。

カスタムレジェンドやアダマス等上位機種には牛骨ナット装着、セレブリティーシリーズにはコリアンという素材が使われていましたが、あれはナット材としては良かったと思います。


復活!

この頃のAdamasやAdamasⅡには正直、当たり外れがありました。

音がイマイチだったのはトップの接着も要因の一部っだったのかと想像しています。

 

サウンドホール割れ(段差)/ Gibson Hummingbird

前回3回に分けて紹介いたします、と言ったHummingbirdですが、4回になります。

今回ともう1回。

 


この割れている部分には大きな力が掛るので、耐えられなくなると、力が掛る方向へ割れてずれてしまいます。

弦を張りっぱなしで放置しなければこのような事態は発生しないのですが、仮にこの部分が割れたりしなくとも、他に不具合が発生したと思われます。

このギターの場合はトップが割れてずれている程ですから、当然ネックアングルもおかしくなっています。


過去の割れ修理で貼ってあったクリートを外します。

(途中まで取り掛ってる所です。)

クリートは気休め程度のもので、付いていてもまた割れる時は割れますので、それより割れや力木の修理そのものが重要です。

 


トップに段が付いて割れているのですから当然、力木も剥がれいます。

修理し辛い場所ですが、力が掛る部分なので見落しの無いよう注意します。

 

 

 


段差が無くなるように、ネックを外す前にネックを引っ張って段を戻して割れを修正します。

段差を戻した分のネック角度で、ネックアングルが正常になる場合もあり、ネックリセットの必要が無い場合もたまにあります。


割れと剥がれ修理の後に一応クリートを付けておきます。

付けないと、なんとなく手抜きしているように見られても困りますので、「やったよ!」と言う印です。


このギターは次の更新のネックリセットで終わります。

 

 

クリートと呼ぶ人は少なくもっと分かり易く、割れ止めと呼ぶ場合が多いかもしれません。

このクリート、あっても無くてもと書きましたが、確かにそうなのですが、割れの接着が難しい場合、接着剤がしっかり奥まで入らない可能性がある場合等はクリートも個数を増やして、補強の役目を担いますが、きっとそれも希望、願望、期待…。

しっかり接着をしていれば、わざわざ補強は要らないのですが、しっかり接着がしてあるトップのセンターの継ぎ目から隙間が出来てしまう場合もあり、これも仮にクリートがあったからと言って防げるか否かは神のみぞ知ると言うところです。

ネックや他の事に関しても、まずはそうならないように、日頃の一寸の気遣いが大事です。

 

 

 

 

 

ボディ割れ修理 / Larrivee L-09


ボディの割れは、この段差が戻るか否かで、修理のし易さも出来映えもある程度決まります。


こっちの段差はなんとかなりそうです。


やはりこの大きな割れは、何をしても戻りません。

少々欠けても「パチンッ!」って戻ってくれれば、こっちのもんなんですけど・・・

 

バックを外して修理する事も考えたのですが、修理(私)の鉄則は面倒くさくしない。

面倒くさくしてしまうと費用も時間も余計に掛ってしまいますし、第一にバックなんぞ外したら面倒くさいです。

わざと面倒臭くしてやる人も多いですが、それはそれ。千差万別の流儀や美学があります。

 

幸い力木も定位置にありますし、出来るだけ元のまま修理します。

バックを外すのは、以前に紹介したSJ-200のような状態で、やむを得ない場合。

 

 


割れの段差が重なって戻らない部分は削り落として、少々隙間が出来きましたが、そこは後から考えればいいやと思い。


割れの段差を無くして平行にする事が第一の目的ですので、幸いローズウッドで茶色いボディは割れ等の跡が目立ち難いので助かります。


接着修理が完了しましたら、バックはリフィニッシュ。

あんまり目立たなくなりました。


メイプルのバインディングの割れも接着しましたが、色の明るい部分の割れ跡は目立ちます。


 


こちらのギターはネックのリセットもしていますので、次回に見て頂きます。

マーチンのネックジョイントでは、横着してセットしている物がありますが、ラリヴィーもやってるとは思いませんでしたよ。

 

 

 

 

 

 

 

Martin D-28 / マーチンクラック修正+ピックガード交換


いわゆるマーチンクラックと呼ばれるクラッキング。


過去に修理はしているようですが、同じ所がまた割れてしまっています。


ピックガードが反って剥がれている事と割れに段が付いてしまっていますので、ピックガードは剥がします。


ピックガードは付いたまま修理する場合もありますが、P/Gは交換予定ですので、剥がして修理しやすく。

剥がしたP/Gは平らに直して貼り直す事も考えられますが、縮んで元には収まらず、かっこ悪いでので交換します。

特に黒ガードの再利用は、カッチョ悪く感じます。


内側に補強材が貼ってありますが、テキトーに見えます。


剥がしました、効いて無かったと思います。

きれいにして割れの修理後クリートを付けます。

クリートが貼れる条件は、平らに修正出来ている事ですので、段があると画像のように片側にしか当たりません。

 

 


 

この記事のギターではありませんが、撮り忘れましたので他のギターの画像です。

このような感じでクリートがつきます。

 

 


ピックガードは一寸だけ大きく作ります。


けがいた線の分ほど大きく作り、下地とさらに割れの線も隠せれば尚良いです。

少し大きく作りますが、違和感は無いと思います。


大きさよりピカピカなのが違和感ですが。

ピカピカは、保護シールを剥がしただけでは無く、サンドペーパーで水研ぎをしてバフ掛けします。

そうする事によって質感が良くなりますが、塗装面のように磨けませんので、P/G作成で1番大変な作業。


きれいなのは一時だけで使っているうちに、すぐに馴染んでしまいます。

 

 

ボディ剥がれ修正 / Ovation 1769-4






 


 


 


 


 


 

今回はOvationのボディ剥がれのBefoer afterをずらずらっと見ていただきました。
 
Ovationのボディは、トップの木の動きについて行かないので、このようにズレてしまう事がしばしばあります。
 
 
 
 
 

 

 

 

 

ボディ割れ / Guild F-50R


ギターは何かしらのアクシデントがあった際は、どこかしらにダメージを残します。


ぶつけた直接の部分が割れてしまったり、倒れてネックが折れてしまったり、このギターは何かしらの作用でサイドが割れてしまっています。


このような場合、ヒールも一緒に割れてしまう場合がありますが、ヒールは割れておらず、ちょっとだけラッキー。


ネックヒール部からボディのくびれの部分の方へ大きく割れています。


反対側もショルダー部分を越えて、大きく割れています。


ネックブロックも見事に割れています。

修理上ネックを外しますが、ネック角度も直せて好都合。


割れている部分は全て修理して、ネックの角度を直してセットします。

(現状、塗装も終盤の状態)


塗装の下地は、ネックをセットする前に済ませておいて、ネックをつけた状態で塗装します。


塗装を吹いた後は、硬化が進んで塗装が引いて行きますので、1段階毎に1週間養生して次へ進みます。

今後使っていく過程で全体に雰囲気が合って来るようなイメージで仕上げます。

艶が出過ぎないよう、仕上げる場合もあります。


ネック角度も適正になり。


指板も直して、フレットも新しく。


とても弾き易く、申し分の無い状態です。

老舗メーカーの定番モデルでは、ラッカー塗装が施されている場合が多いでのですが、これらのモデルに作業場施すマスキングテープは1日の塗装工程が終わった時点で、出来るだけ剥がして、再度、翌作業日にマスキングします。

全部が全部ではありませんが、ものによっては数十分~半日マスキングテープ貼ってるだけで、その部分が変質してしまう事があります。

ウレタン塗装は、完全に硬化しますが、ラッカーの場合は極端に言いますと、何年経っても固まらない塗装と言う感じです。

 

 

ボディ割れ修理(塗装修正なし) / Takamine TDP400sp-K3

Takamineのプリアンプサイドが割れています。

このプリアンプの枠を外さなければなりませんが各メーカー、取り付けに思考を凝らしていますので、その度悩みます。

 

割れる時の衝撃で上下互い違いになってしまっています。

無理に戻せば、余計に割れてしまいますので、ちょっと削ったりしながら慎重に戻します。

 


少しずつトライして何とか、「パチッ」っと戻りました。


出ている部分を押せるようにカーブに合った当て木を作って接着。


後は磨いて、プリアンプを戻して完了。

塗装修正をする場合は、白い部分や割れていた部分を目立たないようにしますが、完璧には修正出来ないので、気にしなければこれで十分だと思います。


すごいプリアンプです。

 

 

Ovationのボディ(ジョイント部)について(プリアンプ四角時代)


前回の続きでオベイションのジョイント部をもう少し見て頂きます。

前回から見て頂くとわかり易いです。


このボディのジョイント部の空洞のある無し。

カスタムレジェンド2本とアダマスⅡを比較します。


アダマスはスカスカなので、修理の際は補充しないとね!と言う話。

最後まで写真を撮りきらないで、ブログに出来ない画像が救われます。


勿論、グリスアップは出来る時にしておきます。


こちらは別のカスタムレジェンド


隙間はありません。

ジョイントボルトの為の穴は2つ、穴が3つある意味は分かりません。


アジャストナットは1番上の大きい穴。

はじめてみる方はどこに隙間が出来るの?と思って下さい。次、分かります。


このアジャストナットが1番上の大きい穴に入ります。

グリスアップ。

 

 


スーパーシャローなので、ボディが薄いです、分りますでしょうか。

ジョイントボルトは1本。


隙間を補充すると→

になります。


ボディが潰れれば、ネックの角度は狂い、トップは剥がれ、力木も剥がれます。

 


ボルト穴上部が木材で補強してあります。

過去にネックは外された形跡は無かったので、工場仕事だと思われます。


 

こちらのAdamasⅡは、続きがあります。

次回のブログでアップいたします。

ネック修理はメインではなく、ブリッジの修理ブログになります。

 

いつもブログを見て頂いて、本当に感謝いたします。

書いている本人曰く時々、「これは勉強になるなー。」などと思いつつ書いておりますが、思いの外、皆さんに”いつも勉強になる。”と言って頂けてブログをアップする気力が湧きます。

ブログではいつも同じ事を繰り返していますので、「また、同じだ。」と思われるかと思いますが、なるべく初めて見る方に大事な事が伝わる様に意識しています。

ですが、心の隅で「もう!解るよね!!」と言う自分もどこかにいて、はじめての方には不親切な文章になっている所も多いと思います。

このあたりを踏まえて頂いて、どうか広い心でいつも見て頂ければ、大変幸いでございます。

 

 

ボディ割れ修理 / Gibson J-45


今回はこう、です。


アクシデントがあった際に、ネックが折れることは良くありますが、ボディが割れてしまったケース。


ヒールはボディが割れている部分からヒールエンドにかけて剥がれて、ネックをジョイントするネックブロックも割れています。

 

 

とりあえず、くっ付いていれば良いと言うのであれば、このまま割れ部分を全てくっつけてしまえば良いのですが、塗装もきれいに直すのでネックは外してしっかり修理します。

ネックを外すには、ヒールエンドからトップ側にネックを押し出して外すのですが、この場合は通常通りのやり方ではネックを押し出そうとするとネックが押し出されず割れ部分がだけが開いて行くばかりなので外すにも一工夫が必用です。

 


 

割れてズレた各部修正しながら接着をして、ネックの角度を調整し、塗装面も調整してしまいます。

 

大昔にGuildのハカランダボディのオールドギターのネックリセットの依頼で、いつもの様に蒸気でジョイントを温めつつネックを押し出したのですが、その時はギルドの割りに早くネックが動いたので、「これは楽に行くかも。」等と思い、更に押してみたところ、サイドが割れて開いていたなんて事もありました。

そのギターの、その部分には割れを修正した跡があり、過去に修理したんだなと、注意しながらの作業になったのですが、いくら蒸気をやれども、ネックに力を加えてみても、叩いてみても、何をやってもびくともせず、ボディもネックも蒸気を含むばかりで、ビクともです。

そんな事をやっているうちにヒールが途中から割れてしまいましたので、もう諦めて折れた先からネックを外しました。

そこで初めて分かったのですが、接着剤にエポキシが使われていたのです、真っ黒でガチガチの、こんなのいくらやったってやわらかくなるはずが無いのです。

(最近外したMartinにも同じ接着材が入っていましたので、後に紹介します。)

そしたら後は、ヒールの残った部分は外すのは簡単だと思いきや、これがまた取れず結局残った部分も5等分に割れてしまう強情っぷり。ジョイントにコンクリートが詰まっている感覚。

 

過去の修理屋さん、ネックが外せず、ボディが割れてしまったので、リセットを途中で諦めてくっ付けてあったのではないかと思います。

ですので、修理をする人は肝に銘じてくださいね、将来また修理をする事が前提と言う事。

そうしないとビンテージとして残せなくなってしまいます。

アコギはほとんど接着で出来ていますが、接着部分の精度が大事です、(ブランドやモデルによって分かれますが)取れない、剥がれない接着が正しいと言う事ではありません。

 

話が、今回の修理とは関係ない所へ脱線してしまいました。

 

 


割れた跡が目立たないように塗装します。


ネック折れ修理同様、多少濃く着色。


写真が下手なので、伝わり辛いですが・・・。


角度を変えて撮影。


反対側。


J-45

ギブソンも、50年代のイメージにしたい訳では無いのか、適当なのか分かりませんが、ブリッジの形が惜しいですな。