山口君のページ

トップ割れ&リフィニッシュ(後編) / Ovation Custom Legend 1769


皆様あけましておめでとうございます。

スタッフの山口です。今年も皆川ギター工房をどうぞよろしくお願い申し上げます。

今回は年末の続きからです。無事に塗装まで終わりましたのでネックやパーツを組み込んで行きたいと思います。


ペリペリとブリッジ部のマスキングを剥がします。オベーションはエポキシ系接着剤でブリッジを貼り付けていると思いますが今回は訳あってギブソンやマーチンのようにタイトボンドでブリッジをつけます。木部をしっかり露出できているので強度的にも問題ありません。


せっかくバフで一生懸命磨いたので傷つけないように慎重に進めます。


ブリッジがつきました♪

口輪を仮置きして完成時を想像してニヤニヤしている時の写真でしょうか。。


ここからはネックリセット工程へ。

せっかくネックを外してるので狂った仕込み角度も正常に戻します。角度をつけた分指板のハイフレット側が下がりますので傾斜をつけたエボニー材で厚みを足しているところです。ネックバインディングがありますのでバインディングも付け足します。


実は結構手間のかかる作業です。リセットしてもこの工程が必要ない場合はラッキー♪という感じです。指板を足しても足さなくても工賃は変わりませんので。


トップと密着するように接着面を平らにします。ネックリセットの際は指板が左右に跳ねる形で反ることが多いです。


何度もシュミレーションと調整を繰り返します。


いい感じにネックが付いて口輪も元通りになりました。


足した部分はどうしても足した跡が残っています。よくみるとわかります。よく見ても分からないほど綺麗に仕上がることもあります。


センター出しがオベーションはギブソンマーチンより大変でした(汗)


バキバキに割れていた形跡は見当たりません。ナチュラルよりサンバーストの方が目立たないから尚更ですね。

少々赤みが強かったかなぁ、、と思いましたが画像検索するとオベーションも色味やバーストの幅など個体差が結構あり、もっと赤っぽい個体もたくさんありましたのでOKを自分で出しました。

退色するとちょうどいい感じかも。。

今回も途中、山あり谷ありで長期修理になりました。

実をいうと自分は主にショップ担当なのでオベーションはギブソンマーチンに比べて経験が浅いです。今回は師匠の皆川に相談しながらなんとか完成まで持っていくことができました。

特定のメーカーではなく多種多様なメーカーのギターを取り扱うのでとても大変といえば大変なのですが、そのギターにおける作り手の意図や意気込みがギターから伝わって来たりして、それがこの仕事における楽しさの一つでもあると感じる今日この頃です。

今年も初心に帰って精進していこうと思います。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

トップ割れ&リフィニッシュ(前編) / Ovation Custom Legend 1769


スタッフの山口です。

本日はオベーションの結構大変な修理です。


トップが広範囲で割れています。トップのウレタン塗膜が結構分厚くても、それによって強度が増しているわけではなく、むしろ分厚い塗装が悪さを働くこともしばしばあります。


サイドとの境目も隙間が空いてガバガバに。。こいつは時間かかりそうです。


口輪を慎重に外して割れているところをとにかく接着していきます。写真はないですがプラ板とクランプやジグを使ってあの手この手、です。


この口輪も可哀想な状態なので貝を並べ替えたり足したりして修繕します。オーナーさん自身で修理されたっぽく、接着剤が必要以上に付着していてボロボロの状態でしたがなんとか綺麗になりました。


ブレーシング剥がれも直し、サイドとトップを接着、、さらにバインディングも巻き直したり足したり、、。結構大変だったこの辺の肝心な画像がないのは一心不乱に作業して撮り忘れているということですが、、、悔やまれます。


素直に剥がれてくれないところはあたためて剥がしやすくしてあげます。


オベーションはバックがボウル状で不安定になるのでネックがついていた方が安定しますが、ここからはネックを外します。。


地道に手でサンディング。。


ゴシゴシ。。


うんうん、いい感じ。


塗装の前のマスキング作業はとても苦手です。。


苦手意識の強いマスキングが終わればもう半分終わったようなものです。まずは下地用のウレタン塗装を丸一日かけて繰り返し吹きます。


下地塗装が終わったら個人的には楽しい着色。3トーンサンバーストですのでまずは全体的に黄色、その次に写真のように赤のバーストを纏わせます。


雰囲気を確認するために口輪やブリッジを乗っけてみて、着色の範囲など確かめながら行います。


最後に黒でバースト塗装。同じく口輪とブリッジを乗っけてみて、、いい感じでしょうか。。(実を言うと2回やり直して3度目の正直です。)


満足のいく着色ができたら最後トップコートを丸一日かけて吹きます。


仕上げの番手の耐水ペーパーで水研ぎをします。


一旦曇りますが、、


コンパウンドをつけてはバフ掛け、を繰り返して美しい仕上げを目指します。

理想は一発で決めたいですが、サンドペーパーのスクラッチが完全に消えるように仕上げるにはなかなかそうはいきません。


ピカピカになりましたが今回はここまで。

トップ割れ修理とタイトルをつけていますが、サイドバックとの乖離やブレイシングの激しい損傷もあり、写真がないのが悔やまれますが実はスタートからここまで半年近くかかっています。今回のように重傷な修理の場合、他のお客様の修理と並行して合間合間で行わないと生業としてしんどくなりますので、お預かり期間を1年以上見ていただくこともあります。どうかご理解いただけますようお願い申し上げます。

次回は後編のネック組み込み〜完成編です。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

バインディング剥がれ / Martin D-28


スタッフの山口です。

本日は依頼件数の多いMartinのバインディング剥がれ修理です。


製作時よりセルバインディングが縮むことが原因、、、とも言えますが「メーカーが製作時に使用した接着剤がセルの縮む力に耐え得るほどの接着力がないこと」がこの不具合の正確な原因と言えます。

バインディングやピックガードなどプラスチックパーツが経年とともに縮むことは昔から分かっていることですので。

 


この年代のMartinに多い症状です。つまりこの時期数年間使用していた接着剤があまりよろしくなかった、という感じだと思います。


トップ側のバインディングはこの指板の下に潜り込んでいます。実はここが少しも動かないと結構大変な修理になります。

今回は運良く縮んだ分だけ引っ張り出せることに成功しました。通常は動かない場合がほとんどですのでネックリセットの際に一緒に修理するなんてことも多いです。


塗装が余計にチップしないよう慎重にナイフを入れていきます。


隙間に残る古い接着剤は可能な限り取り除かないといけません。古い接着剤は取り除く、修理の基本です。


バインディング修理時によく見る光景。

 


ラッカー塗装はマスキングテープののりにも反応してしまう敏感肌なので最大一晩で剥がすのが吉。

忘れちゃって1週間置いちゃったりしたら青ざめちゃいます。


綺麗に磨いて終了。

この個体の製造時期、2000年頃〜の数年間(?)のMartinはバインディングが剥がれてしまうことが多い様です。現行品は恐らく改善、サイレント修正済みであまり見られません。当時のMartin社内から「なんか接着剤変えてからバインディング剥がれの修理多いな。ヤバイぞ!!」という声が聞こえてきそうですね。製造メーカーに勤めたことがある人にはその社内の様子が容易に想像がつくと思います^_^

バインディングが浮き始めたらなるべく早く修理することをお勧めします。放っておくと服の繊維が引っ掛かった拍子にバリバリ一瞬で剥がれたりする恐れがあります。

虫歯と一緒ですね。僕も早く歯医者行かないと、、、汗

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

ネックヒール隙間(ネックリセット) / Martin D-41


スタッフの山口です。

今回はMartin D41のネックリセットですが、実はネックリセットしたばかりとのこと。手直しというか、完全にやり直しですが、そのためにウチに回ってきた「訳ありさん」です。


ヒールとボディの間をよく見ると0.6〜0.7mmほど隙間ができています。

調弦しても弦の張力で隙間が広がりませんので、ネックリセット時にすでにこの状態で接着された可能性が高いです。


センターも少しズレていますね。

いずれにしてもこのリセットではウチでは納品できません。

 


ヒールキャップ付近から隙間がありますね。左の方は塗装が傷んじゃってます。


よく見ると指板とネックにも隙間が空いています。木工精度が悪い状態で力ずくで組み込んだからでしょうか。


こちら側はボンドで隙間を埋めようとしたことが何となく分かります。


木工精度が悪いのでボンドが熱で軟化しちゃえば楽勝で外せます。


恒例の、、パシャリ。


隙間がなくなるよう、指板がネックから剥がれないようあれやこれやと、、写真撮り忘れて組み込み完了です。


隙間がなくなっています。


もちろんこっち側も、問題なし。ヒール部の塗装の剥げや塗膜割れもラッカーをうまく使って綺麗になりました。


おそらく前回すり合わせされてるのでフレット精度はあまり問題ありませんでした。


ネックバインディングに細かい傷や汚れが散見してたので綺麗にしました。


サドルの出しろも良い感じですね。


ストラップピンを戻して完了です。

ヒール周りも綺麗に修正できています♪


 

前回ネックリセットをした人をここで責めるつもりはありませんが、こうして他の工房の元へ再度出されて手直しされてしまうというのは「悔しい」と自分だったら思います。

ちょっとした隙間だし、ボンドでガッチリ接着されていますので、とりあえずは演奏性も問題ないし、もしかしたら気がつかない、そもそも気にしない人も中にはいるかもしれません。クレーム来なかったらラッキー!みたいな考えで納品したのかもしれません。

でもそれではダメです。

自分が修理したギターがいつ、どこで、どんな人に見られても恥ずかしくないと思える仕事をしなければなりません。これは師匠の皆川がいつも言うことですので当工房のポリシーの一つと言えます。

どんなにやり慣れた作業でも手を抜かず、毎度しっかり向き合い続ければ、その度に新しい気づきや学びがあるものです。そしてその積み重ねがスキルアップと実績、そして信頼に繋がると思うのです。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

指板修正 & ステンレスフレット交換 / Futra エレキギター


スタッフの山口です。

今回は昨今話題のブランド、Futraのエレキのフレット交換です。ニッケルシルバーからステンレスにしたい、指板Rを9.5inchから12inchに緩やかにしたい、との理由で交換です。通常フレット交換は「すり減って背が低くなっているから」という理由で依頼を受けることがほとんどですがこういったイレギュラーな理由でももちろんOKです。


ハンダゴテで温めながら指板の溝周りがチップしないようフレットを抜いていきます。温める、というのはギター修理の基本動作の一つと言えます。

ギターも身体も冷やすより温めたほうが良いのです。最近急に寒くなってきたので身体もギターたちも気にかけてあげましょう。


無事に綺麗に抜けましたので指板修正に移ります。今回の大きな目的の一つ、指板Rの変更をします。


普段はセットネックのアコギのリフレットが多いのでボディが無い状態での作業は色々勝手が違ってきます。


ひとまず指板のRを緩やかにするためにマスキング。体制の関係上、真っ直ぐを意識していても左右がブレてしまうので目印代わりのマスキングです。今回はこの状態で擦ってみて自分の癖と相談しながら進めます。


ある程度いい感じになリました。削っても色が変わらないので着色のしていない、色の濃い良い紫檀(ローズウッド)ですね!

老舗メーカーでも着色していることはザラにあります。


Rを最後整えるのは専用のサンディングブロック。「これがあるなら最初からこれ使えば良いじゃん!」と思われると思いますが、初めからこれで削っていくと左右の力のかかり具合によっては端が擦れすぎちゃったりして一向に理想のRにならなかったり余計に削り過ぎちゃうことが懸念されます。どんな道具にも良い点と悪い点、利点と欠点があることが多いのです。

 


後ろから光を当てても漏れてこないので良い感じです。

誰がなんと言おうと完璧な12インチRです。異論は認めません。


9.5インチRと比べるとやはりかなりの違いがあることが分かります。

ギターは最も感覚神経が集まっている指先で演奏する楽器ですので演奏者は0.1mm単位でもその感覚の違いを感じ取ることができちゃいます。なのでセットアップする側は必死に0.1mm単位で闘う必要があるのです。


クレイドットかと思いきやメイプル材のドットですね。


レモンオイルを塗りこんでいざフレット打ちに移ります。


ステンレスフレットはニッケルより硬いのでフレット打ちも手間がかかります。ステンレスの方が料金が高いのはフレット材の原価というよりも手間がかかるためと言えますね!

写真はそれっぽく玄能でコンコンやっている感じですが、せっかくボディがないのでほとんどフレットプレスでやった気がします。


エッジを切り落として最小限すり合わせます。


フレット処理の詳しい工程は今回は省きます。


良い感じに仕上がりました♪


 

R出しのできるサンディングブロックについて道具の利点と欠点のことを書きましたが、、自分のこれまでの経験から得た感覚、道具の精密さと性能、対角にあるこの2つのバランスをうまくとって作業することで仕上がりに大きな差が生まれると思います。

どちらかに偏ってはあまり良い結果が得られないことが多く、その道具の良いところだけを利用して、欠点を自分の人間の感覚で補うのがベストに繋がるのではないかと思います。これは師匠の仕事から学んだことの1つです。

道具や機械の性能を100%信じてそれに任せるのではなく、そこに人間の知恵と感覚をプラスしてコントロールすればもっと良いものが生まれると思うのです。

けれど限りなく100%近く信じられる道具を見つけたときは、とっても嬉しくてテンションが爆上がりしちゃいますね。

今回も最後までありがとうございました。

 

ネックリセット / Martin D-28


スタッフの山口です。

今回もMartin D-28のネックリセット、今まで何回やってきたか分からないこの組み合わせ。特にD-28のネックが狂いやすいということではなく、絶対数が多いというだけです。


サドルも限界値に達しています。

ここまで低いとテンションが弱く、ペチペチしたサウンドになりやすいです。

幸い、ブリッジは削られていないですね。薄く削って弦高を無理やり下げているものも少なくありません。


6弦側は3mm以内です。


1弦側は2mmを上回っています。弾きやすいのは2mm以内というのが相場です。


いつものように15フレットを抜きます。マーカーでマーキングしているのは戻すときにどっちが1弦側だったっけ?とならないように。


ダブテイルジョイント内部を温めるための穴を開けます。


温めている最中の画像はすっ飛ばして記念撮影。


指板とトップも綺麗に剥がれてくれました♪


ジグでしっかり固定してヒール部分の余計な接着剤を取り除いたり調整をします。


左右が大きく傾かないようにヒールをサンドペーパーで削っていきます。


いい仕込み角度になったらいざ接着。


開けた穴も綺麗に埋木できました♪


埋め跡、よーく見たら分かりますか?

エボニーは自分でも分からないほどに綺麗に埋木できます。


サドルの出シロがいい高さになりましたね!

これでいいテンション感で本来のハリのあるサウンドが蘇ります。


6弦側も2.5mm以内、


1弦側の弦高もいい感じですね!


最後はヘッドも例外なく綺麗にワックスがけ♪

このヘッドストック形状は元祖の特権ですね!シンプルイズベスト!

Martin社が当時から奇抜なヘッド形状だったら、果たしてそれがスタンダードになっていたのでしょうか。。


貫禄の記念撮影。

自分も普段D-28をメインで使っていますが、何年使っていてもネックリセットが必要になったりネックが反ったりということはありません。ロッド調整すらほとんどしたことがありませんので実に安定していると言えます。それはきっと普段は弦をユルユルに緩めているから。

チューニングを毎回するのは確かに面倒ですが、師匠皆川の言う通りに弾かない時は弦をちゃんと緩めているので、最近は自分のギターをネックリセットすることは生きているうちはないだろうと思っています。

今回も最後までありがとうございましたm(_ _)m

 

ネックリセット / Epiphone FT-120 Excellente 1960s


スタッフの山口です。

今回もネックリセットですがかなり珍しいお宝ギターの登場です。

EpiphoneのExcellente、FT-120。現行のリイシューも売ってますが、所謂当時の本物は僕も初めて見ました。


アジャスタブルサドルも限界近く下げてますが弦高は高いですね。

皆川ギター工房の出番です。


いつも通り進めていきます。ネックポケットを温めたら指板とトップの間を切り離し、、


ヒートスティックで温めて、、簡単に外れたみたいに見えますが、Gibson系はやはり苦労します。


Gibson系のハカランダは本当に貴重です。


ネックは7pcs。


テープである程度の目安まで印をつけます。ヒールを1mm削るだけでも角度はかなり変わります。


センターズレに注意しながら、なるべく均等な力でヒールを削ります。


塗装がチップしすぎていないかチェックもします。


チップしていたらラッカーを盛って修正します。


今回は組み込む前に記念撮影。


一発勝負のつもりで迅速に組みます。


しっかりと最後までダブテイルが接着できているかの確認もします。何度かシミュレーションをしているので問題なし。


ネックがついたらダブテイルに通じる指板の穴を埋めます。


今回フレットはすり合わせのみ。

 


無事にリセット完了です。


サドルの出方もいい感じに。


弦高もいい感じ。


1弦側もヨシ。


ヒールも無事です。


反対側もOK。


カスタムセルにエボニー指板、サイドバックはハカランダです。


ネックもキルトメイプルが贅沢に使われていますね。スゴイ!


ヘッドストックは工場で一番大きな白蝶貝をドカッと入れました!みたいな感じです笑


 

当時は兄貴分のGibsonを凌駕してしまうような高級仕様で話題になったというこのモデル。

ライバル社であったエピフォンをギブソンが買収した当時は、材やパーツなどはほとんど同じものが使われています。ここからは僕の想像ですが、、当時Gibsonに買収され、Gibson工場に泣く泣く赴任してきた元Epiphoneの職人たちが「Gibsonより良い物を作ってやるんだ!」という気持ちで作られたような雰囲気がこのギターには漂っています。60年代でハカランダの枯渇問題も出てきた頃、Epiphone出身者がGibsonを超える渾身のハカランダの高級機を出す、まさにエクセレントなプロダクトだったのではないでしょうか。ちなみにExcellenteのスペル、最後にeがつくのですが、調べたらフランス語になり、意味は同じで「素晴らしい」とのこと。なぜフランス語のスペルなのかは分かりませんが何か意味があるのかな。

今回も最後までありがとうございました。

 

フレット交換 / Cole Clark


スタッフの山口です。

今回はフレット交換です。

写真はネックジグと言って、アジャストロッドではうまいこと効かないような波打ちや大幅な修正が必要な場合、またノンアジャストロッドの場合はコイツに頼ることがあります。


調弦し実際にギターを弾く際のネック状態を弦を張っていなくても再現できる優れもの。今までもブログに何回か登場していますね。

意外と横になるだけでもネックコンディションはわずかに変わっていることが分かります。

 

 


ナットが底上げしてありましたので丁寧に取り除きます。


ここから3枚の写真は指板修正。


削れるところと削れないところを見れば波打っていたのが一目瞭然です。


修正完了。指板の色がだいぶ薄くなりました。


フレットを打ったら自分的に超重要な工程、フレットサイドの削り落としです。指板サイドを傷つけないよう、指板の端がまっすぐになるように感覚を研ぎ澄ませます。


大事な工程は必死なことが多いので写真を撮り忘れます。

一応企業秘密ってことにしておきます。


しっかりフレットを仕上げていきます。


ゴシゴシ。


アコギはある程度のピカピカさ加減がかっこいいです。


オーナーの指定がありましたのでタスクでナットを新調します。


ナット作りとフレット交換はその職人の腕前が分かるのでその道のプロが見ても高評価が貰えるように頑張ります。


コールクラークのヘッドは出っ張りがあるので慎重に溝切りします。


いい感じになってまいりました。


奥が今回製作した方です。


弦間もヨシ!


ナット調整後にサドル調整し弦高を標準にセットアップします。


フレットの種類はいくつかありますので好みのものを選んでいただけます。


リフレットは完了するととても清々しいです。


一丁あがりです。

 

コールクラークはオーストラリアのギターメーカー、メイトンから独立したクラークさんが2001年に創業したそうです。ネックの仕込み方が所謂スパニッシュ式(クラシックギター式)なのも面白いですね。今回のネックは波打ちがありましたが、このメーカーがネックが弱いとかそういうことではありません。たった一本のギターを見ただけで「あそこのギターはネックが弱い」と、そのメーカーのギター全てを見てきたかのように批判したり語る人がいますが、そういう人はどこか海外旅行に行って入ったレストランが美味しくなかったら「あそこの国の料理はまずい」と言っているようなものだと思います。木工製品である以上当たり外れというか、それぞれ個性があって、だからこそギターは面白いと思うのです。新しいギターは木が若く多少ネックなど動きやすいのはしょうがないと思いますが、弦の張力による変形は弦を緩めるだけで防止できますので、ビンテージにしても新品にしても弦は弾いていない時は緩めましょう。

今回も最後までありがとうございました。

ネックリセット Gibson / Southern Jumbo(1952)


スタッフの山口です。

ネックリセットばかりで申し訳ないのですが、今回も例外なくネックリセットです。次回もネックリセットかもしれません。色んなギターのバリエーションで楽しんでもらえれば幸いです。


弦高チェック。

6弦12フレットで3.3mmといったところでしょうか。


1弦12フレットで2.5mmほど。普通の人なら十中八九弾きづらい弦高です。

一般的に「弾きやすく音も良い」と言われる弦高は2.4mm-1.7mmの±0.2mm程度だと思います。

それ以上だと弾きづらく、それ以下だと弦高が低すぎて音がペタペタする傾向があります。


サドルもこんな感じなのでネックリセットを決断して正解だと思います。

50年代初頭は40年代と似たブリッジですね、この感じ。


Gibsonはセットネック後の塗装なので余計なチップをしないように切り込みを入れておきます。Martinは塗装後の組み込みなのでこの作業は不要です。メーカーによって違うのもまた面白いですね。


いつものようにダブテイルジョイントを温めてネックを外します。


約2時間ほどで外れました。Gibsonはシリアルナンバーにしても仕様にしてもいい加減な印象を持たれがちですが、決してそんなことはありません。


ネックを外して恒例の記念撮影。

指板やボディも無事で何より。ネックリセットはネックを外す工程が一番リスクが高いのです。


ネック角度を適正に直し終え、いざ接着です。

そういえば1952年当時もロッドエンドはまだここなんですね。

 


接着後はしばらく寝かせておきましょう。

ボルトやビスで組み込まれるエレキギターと比べると、アコースティックギターはほとんどが接着剤で組まれていて接着の待ち時間が多いので修理に時間がどうしてもかかってしまいます。


数日後、ダブテイルスポットに繋がるドリル穴を埋めてフレットの擦り合わせ。

ネックリセット後はフレット交換か擦り合わせを行います。


ナットの溝が深かったので今回は底上げで対応。写真をよく見ると分かります。

次回フレット交換の際は交換になると思います。コストをかければもちろん交換も可能です。


サドルのでしろが復活。

んー、ちょっと高めに見えますが、、


6弦12フレットで2.5mm、


1弦12フレットで1.8mmと若干高めなので、調整幅や近々フレット交換をすることを考えれば許容範囲です。


ヒールも綺麗に仕上がったのではないかと思います。


反対側も。ちなみに塗装修正は無し。

塗装修正が必要な場合はあと1週間以上はかかります。


ヴィンテージギターを主に扱うショップ在庫が僕の主な担当なので、GibsonやMartinのヴィンテージギターをたくさん修理させていただきとても光栄です。が、そんな高価なギターを派手に壊してしまって絶望する、という悪夢にうなされることがよくあります。

ハッと目覚めて「夢で良かったー」と脂汗を拭きながら安心しますが、それが自分への良い戒めにもなっていますので、職業病と思って付き合っていくしかないと思う今日この頃です。

今回も最後までありがとうございました。

 

ネックリセット / Gibson J-45


スタッフの山口です。

今回は訳ありのネックリセットです。1950年代のGibson J-45、昔のGibsonは色んな「訳あり」があるのです。

トップが凹み、ネックが元起きしているのが上の写真でも分かると思います。写真で分かるというのは相当角度が狂っていると言えます。


今回の訳ありポイント。

この時点で「あ、こりゃあ、、やってんな、、。」

という嫌な予感がしています。


ひとまずいつも通りの手順でネック外しに取りかかりましょう。


指板を温めて、、


トップから切り離します。


Gibsonは1時間以上の長期戦になることが多いです。


意外とあっさりとネックが外れましたが違和感満載です。トップ板が指板とダブテイルの間に食い込んでいます。これではジグで力をかけてもネックは外れないはずです。


こんな感じですが、途中で気づいて指板を剥がすか迷いました。ですが前回のリセット時に割れていたのか指板に沿ってトップが浮いてネックが素直に外れたのでそのまま続行するのが最善と判断しました。


ひとまず再度接着してあげましょう。

 


その間に本来のダブテイルジョイントにするためにネック側を修正します。指板に3mmほど足してありましたがグズグズでしたので一旦取り除きましょう。


トップが食い込んでいたところをマホガニーで埋めます。


これでOK。


取り除いた分3mm厚足します。

あとはボディ側のトップ板を溝に合わせて切れば本来のダブテイルジョイントに修正できます。


説明が下手なので分かりづらいですが、、写真を見てもらえればなんとなく分かりますかね汗

あとは黒く塗装します。

 


ネックリセットでは何度も組んでは外して微調整を繰り返します。


角度をつけた分、指板のハイフレットが下がることが判明したので下駄を履かせます。


ボディ側、ダブテイルジョイント部分のトップ板も切って取り除いてあります。


調整を繰り返して少しずついい感じに。


センターズレも問題なし。


この写真のように指板が極厚になっているGibsonは今回と同じ訳ありの仕込みの可能性大です。


今回フレットはすり合わせでOK。


最後にサドル溝修正。今回のネックリセットによってサドルの高さが復活しますのでそれにしては溝が浅すぎるためです。


いい感じになりました♪


以前、師匠の皆川も僕もJ-200でこのトップ板を挟み込んだジョイントに遭遇しています。ヒールとボディの帳尻が合っていますので生産時にGibsonが一時期だけ行っていたようです。

理由は分かりませんが、おそらくなんらかの理由で工程の変更を試み、ネックとボディを組んでからトップ板を貼り、最後に指板を貼り合わせたのだと思います。当時の職人さんたちの中の誰かが「あれ?これじゃあ修理の時にネック外せないしヤバくね?」みたいな一言があって即時元通りに戻したのではないかと想像できます。

こういうミステリーがGibsonには歴史に散りばめられていて、それがまたこのメーカーの面白いところでもあり魅力だったりします。

今回も最後までありがとうございました。