山口君のページ

ネックリセット /Gibson L-00


スタッフの山口です。

今日も古い古いナイスギターをバラします。ネックリセットは皆川工房のお家芸と言っても過言ではありません。


ナイスなヘッドストック。

輪ゴムはオリジナルブッシュがカンタンに外れてしまうので行方不明にならないように。


15フレットを抜いてダブテイルジョイントスポットに通ずる穴をドリルであけます。その後指板を温めてナイフを入れ、トップから離します。


専用ジグを装着しヒートスティックで時間をかけて温めていきます。


サクッとネックが抜けたように見えるかもしれませんが、細心の注意を払いながら、慎重に時間をかけて外します。

Martinはネックを外すことを前提に仕込んでるのか単に木工精度が甘いのかわかりませんが、Gibsonの方がボディとネックの接着は強い傾向があります。


このロッドエンドもこの頃の特徴。

あまり本やネットにも載っていない情報かもしれません。Gibsonの歴史は仕様変更の連続なのである意味そこにも魅力があると言えます。


工程をすっ飛ばしてネックリセット完了です。途中を撮り忘れるのも当工房のお家芸。ご容赦ください。


エボニーナット、このギターに似合いますね。

リフレットの際も象牙や当時の良質なエボニー材などは交換せずに底上げして残すことが多いです。それ以外は基本新しく牛骨で作ります。

 


指板RがきついのでGibsonのロングサドルの出方は独特です。これぞオールドギブソン!みたいな感じもします。

個人的にはやはりアッパーベリーブリッジが好きです。


 

一目で分かるヴィンテージギターの風格です。このくらいの小ぶりなギターを自宅用にずっと探しておりますが、何せ良いギターにたくさん出会える恵まれた環境におりますゆえ、目移りして迷っているうちにどんどん相場が上がって手が出なくなってしまいました( T_T)\(^-^ )

そんなナイスギターを数多くネックリセットしてきた当工房ですが、皆川氏も僕もカウントしておりませんので一体今まで何本やって来たのかわかりません。しかしながら全国的にネット検索しても、うちほどネックリセットの記事をあげている工房は見当たりません。

「ネックリセット本数日本一!」の看板を自ら掲げなくとも、お客様がブログを見て「ここは日本一やってそうだな」と思って安心して預けていただければ幸いだと思っております。

「数をこなすよりも大事なことがあるぞ」、とどこかから聞こえてきそうなので今日はこの辺で失礼します。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

 

 

ブリッジプレート交換(トップ矯正)&ネックリセット / Gibson L-1


スタッフの山口です。

今回はGibsonのL-1。フラットトップが出始めた頃のものですが、トップが弱くアーチトップみたいになってます。


この頃のLシリーズはトップ板が薄いのに、大きな音を求めるプレーヤーは弦のゲージを太くしていったためそれに対応できずに姿を消していったモデルの一つです。


トップが薄いのでまともにブリッジプレートを裏側から取ろうとしても、ナイフがトップ面を突き破ってくるリスクがあるため、今回はブリッジ接着面もグズグズだったこともあり、表から削りナイフを入れることにしました。


こういうことですね!こっちの方が安全と判断しました。


スプルースのブリッジプレート。今はスプルースをブリッジプレートに使うメーカーはないと思います。


メープルに交換します。サイズもトップの補強のため多く作りました。サウンドもこちらの方が締まりが出る印象です。


トップが薄すぎるので、ブリッジプレートの接着とトップの矯正を同時に行います。


白熱球で内部の温度を上げていきます。初めの1日はたまに切って温度を下げ、またつけて、を繰り返します。その後は1週間くらい放置。


1週間以上経ったのでトップを埋木。


いい感じにトップがフラットに。写真じゃわかりづらいですが。


埋木は木工好きの人は好きなはず。


気持ちいいのです。


ブリッジを戻して、


ネック外して角度を適正にして、


テーパーをつける板を作って、


指板に厚みを足して、


ネックをつけます。ここらへんはいつも書いてるのでサクっと。

センターがズレていないかは途中途中でも確認します。

ネックが着いたら今回は指板修正も行います。フレットが浮いているところがあまりにも多い場合は一箇所ずつ直すよりもこちらの方が得策と考えています。


元々のフレットは汚れや塵を取り除いて打ち直し、その後すり合わせを行います。


このタイプのブリッジ強度を考えると背の高いサドルはお勧めできません。


弦高はバッチリいい感じになりました。


中々お目にかかれないGibsonロゴです。


アコースティックギターと聞いてこれを思い浮かべる人は少ないと思われるルックスですが、何となく大人っぽいルックスに惚れ惚れしてしまいます♪100歳の風格という感じでしょうか。

今回も最後までご覧いただきありがとうございまいた。

 

 

ネックリセット&リフレット / Framus 12弦


本年も宜しくお願い致します。

スタッフの山口です。新年一発目は12弦ギターのネックリセット&フレット交換というヘビーな修理です。


弦高は高いですが、


サドルはもう下がりません。

ネックリセット屋の出番です♪


あと今回はボトム割れのトリプルコンボです。


珍しいメーカーの場合はダブテイルジョイントかどうかをネットで調べたりします。そうするとネックリセットしている人がブログを書いていたりします。

それが皆川氏が過去に書いたブログだったりします。笑


今回も過去の皆川ギター工房のブログ通りに進めます。


ダブテイルジョイントを温めてネックを抜きますが今回はヒール脇のサイド板が割れてしまいました。


やたら弱いな、と思ったのとボトム割れが気になったので中を調べたらネックブロックとバックが接着されておらず隙間が空いていることに気づきました。


エンドブロックも案の定、浮いていました。

これでは十分な強度が得られない気がします。


サイド割れを直してネック角度を修正します。


写真じゃ分かりづらいですが、ネックブロックがスプルースです。これもあまり強度が足りなくなりそうです。


ネックがついたらリフレットに移ります。

先週も登場しましたが、便利だけど使いこなすのが難しいやつです。


この状態をメーターに記憶させます。


弦を張った状態のネックの指板を修正します。


フレット打ち。


フレット交換は技量が試される修理だと思います。


個人的にはこのフレットサイドの処理が一番気合いが入ります。

ここがガタガタだと師匠のOKはもらえません。


フレットが新しくなると気持ちいいです。


今回は0フレットがあるので12弦ギター修理の難関、ナット交換はしなくてOK。


指板もフレットもネック角度も改善し、良い面構えです。


0フレットは1フレットより高さも幅もあるものにします。


サドルに余裕も出て、弦高も下がりました。


フレット交換はやるたびに腕が上がる感覚があるので、毎回気合いを入れてそれを実感できるように頑張っています。


好きな方には生唾ものの良いギターですが、、どうしても細かい部分を見ると惜しい、という作りでした。でもこの「惜しい」が個性のあるグッドサウンドを生み出してたりするので、ギターのそういうところが面白いよなぁ、 と思います。

今年も皆川ギター工房をどうぞ宜しくお願い致します。

 

ネックリセット / Martin 00-18


スタッフの山口です。

急激に寒くなってまさに冬。乾燥はアコースティックギターの天敵ですので加湿をお勧めします。


今回もヴィンテージギターのネックリセットです。いつも通り15フレット下のダブテイルジョイントポケットを温めます。


マーチンは本当に素直にネックが外れてくれます。ヴァイオリンのように長く使って欲しいからと、修理を前提として設計されている点だけでも好感がもてるメーカーです。


恒例の記念撮影。


ダブテイルジョイント周辺は古い接着剤や塵を綺麗に除去します。


それをしなければ良い接着ができません。

精度の高いジョイントは音にも影響が出る、はず。


ヒールを調整し角度を正常にしてあげたら、お辞儀する指板の厚みを足してあげます。


これがないとネック角を見た時に14フレット辺りから下に下がってカッコ悪いし、ハイフレットを弾く際に弦高が高くなってしまいます。


ネックとボディを組んで接着したら15フレットを戻していきます。


エボニーは埋木しても馴染むため、ほとんどの人がそれに気づきません。


今回は指板がガタガタなので最低限の指板調整をします。フレットは戻す時のために1弦側にマッキーでチョンチョンと印をつけておきます。1弦側と6弦側がリャンコにならないように。


チップしないようにフレットが抜けたら指板修正開始。


フレット浮き防止のためにフレットに何十年も溜まった手垢や皮脂の汚れを1本ずつ落としていきます。


フレットを打ち直してすり合わせ。良い具合にピカピカに仕上げます。


ネックリセット時はサドルの新調は必須です。


良い具合のでしろになりました。


弦高もバッチリ。


センターもしっかりと調整できました。


多くのギターを手にして思うのは00サイズが日本人の平均的な体格にとって至高のサイズ感なのではないか、ということ。


このヘッドストック、これもまた至高のフォルムではないでしょうか。


当時はヘッドの形は選びたい放題でデザインできたのではないでしょうか。何事もシンプルイズベスト!です。


最後は修理前の画像。いつも思うのは、このギター何十年もどこに眠っていたんだろう、です。アメリカの田舎町の蔵的なところにあったのかもしれないし、ショップのバックヤードにあったかもしれない。どちらにしても弦高がまともに弾けるレベルではないのでどこかに長年眠っていたのでしょう。家の収納の奥からこれが出てきたら、、と妄想してしまうほどのナイスギターでした🎵

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

ナット交換 / Martin OOO-18


スタッフの山口です。

今回はリペアの基本中の基本、ナット交換です。写真はすでに外れてますが、実はこの古いナットを綺麗に外すのが一番緊張する工程です。乗っているのは古いナットと新しく作る牛骨材。


溝に残った古い接着剤はなるべく木まで削り落とさないように除去します。

この小さいノミは仕様頻度TOP3に入るくらい重要な工具の一つ。


ベルトサンダーで大まかに形を作ります。ナットの横幅縦幅は手作業でちょうど良く、キツすぎず緩すぎず。


メーカーの特徴やお客さんの要望に合わせて1弦と6弦の位置を決めます。ギブソンはもっと外、ヤマハはもっとグッと中に入ります。


弦間は1弦→6弦に向かって少しずつ広がっていくのが理想的ですね。


ある程度溝の深さを決めたら背高を落として行きます。ナットの背が高すぎると不思議と弦高が高く感じて、弾きづらく感じるのはプラシーボ効果というやつでしょうか。


皆さんの所有されている弦間をよく見てみてください。よく見ると笑っちゃうくらいバラバラなナットも結構あります。


ナットの見た目は色んな方向から見ていいフォルムに仕上げたいものです。


こっちからもマーチンぽいかな?とか見ます。


なぜ撮ったのか分からないけど、、


多分このネックのVシェイプ好きだなぁー、と思って撮った気がします笑


このくらいの弾きこまれた感が一番魅力的な音がする気がします。


 

ナイスギター過ぎます。

いくらナイスギターでも状態が悪ければ良い音は出ません。

と、言いたいところですが本当にナイスギターは弾きづらかろうが弦が錆びまくっていようが修理前にすでに素敵な音がしていることがほとんどです。

修理してあげるとそれがさらに素敵なサウンドになります。

今回もそんなナイスギターに関わることができて感謝です。

今回も最後までありがとうございました。

 

ネック逆リセット / Gibson Dove


スタッフの山口です。

いつもはネックリセットですが今回は逆リセットをします。ネックリセットをして角度をつけすぎてしまったようです。


この画像を見ればナイスギター間違い無しとわかる方も多いはず。チューンオーマチックサドル。


ヒールにヒビが入ってますのでネックを取るのに苦労するかもしれません。


いつも通り15フレットを抜いて、


ダブテイルジョイント内部を温めていきます。


折れたヒールは持ち堪えてくれそうです。


ネックが無事に外れましたがトップ板が少々剥がれたのとヒール折れを接着してあげたらおやすみなさい、と声をかけます。


ヒールと同じマホガニーの板材で傾斜つけます。


左から右にかけて厚みが増しています。


ダブテイルに合わせてカット。


この画像で「なるほど!」となるのではないでしょうか。


つけ過ぎたネックの仕込み角度をいつもとは逆に戻すのが通称、逆リセットなのです。


折れたヒールを塗装修正するために剥いじゃいました。


マーチンはヒールキャップがついてますがギブソンはないことの方が多いです。ついてないとサンドペーパーを抜くときにヒールがささくれたり欠けることがあります。


センターも結構ズレてたので調整。仕込み角度のつけ過ぎ、センターずれ。当工房ではNGです。

 


角度が決まり、さらに塗装修正も完了。


自分的には上出来です。


ネックリセットの難しいところは仕込んだ後の工程後まで計算して仕込み角度を見極めるところです。


15フレットの穴埋め完了。フレットが太いので助かります。


出過ぎていたサドルもちょうどいい高さになりました。


後ろ。


1弦側。


6弦側。


正面。ほぼ完璧。

ネックリセットはネック折れに並ぶ皆川ギター工房のお家芸と言っても過言ではありません。しかし、師匠も僕も自分たちのアコギはネックリセットを必要としません。それは「弦を緩めている」からです。当工房に持ち込まれるアコギの修理が必要となる原因は弦の張力によるものが6割以上です。なので当工房では弦を緩めましょうと必ずお客様にお伝えしています。弦を緩めましょう活動。発起人は皆川氏です。数年前に僕は密かに心配していました。「みんなが弦を緩めて良い状態を保っちゃったら仕事が少なくなっていくのでは?」と。

しかしありがたいことに修理の依頼は増え続けています。まだまだ「アコギは弾かないときは弦を緩めましょう活動」を続ける必要がありそうです。

話が外れましたが、もちろんGibson Dove、ナイスギターです!チンペーさんを想って今回はダヴにしました。ご冥福をお祈りします。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

フレット交換&ピックガード矯正 / Martin D-28 (1950)


スタッフの山口です。

暑くなったり寒くなったりで人もアコギにとっても体調を崩しやすい時期です。

写真のD-28君も具合が悪そうなので治療していきましょう。


ピックガードが硬く反り返って剥がれてしまっています。通常は交換をお勧めしたい状態ですが、オーナー様のご希望でオリジナルのピックガードを再生して残したいとのことなのでなんとか矯正して戻したいと思います。


今回は他の修理もあるのでそっちを進める間、ずっと矯正しておきます。


そしてブリッジを剥がします。

ブリッジを剥がした理由は、、


恐らくマスキング無しのワイルドなオーバーラッカーでブリッジがテカテカになっていたから。綺麗に剥がすにはトップ材についたままでは不可能なので。


ラッカー塗装を除去して本来のブリッジになりました。

ピックガードが硬く反り返ったのもマスキング無しのオーバーラッカーが原因でしょう。


ブリッジを元に戻したら、


フレット交換です。

フレット交換時には指板修正も行います。

写真のように長年握り込んで押弦した跡、凹みが消えるまで削る必要はありません。

あくまでもフレット溝部がしっかりと修正できていればヨシ。むしろ70年かけて作られたこのナチュラルな凹みはルックス的にも残したい。


当工房ではフレット打ちを昔ながらの玄能でコンコンやります。

師匠が弟子入り間もなかった僕にフレットプレスを買ってくれましたが、結局アコギにはヒール周りなどに使えないので、今はエレキ担当のT君がフェンダー系にたまに使うくらいです。


フレット交換は各工房や職人により工程も仕上がりも本当に様々です。

 

一般的なメンテナンスの一つですが、経験と技量、根気とこだわりなど全てが現れるのがフレット交換なのです。


フレットのエッジは立てますがチクチクしないよう一本一本丁寧に丸めます。どこを見ても同じ丸みと形にできれば理想的です。


フレット交換後はナットとサドルを新調します。


オールドマーチンは底面が突板と同じ傾斜が付いていますので加工の難易度がアップします。近年は指板と同じ平らな底面になっています。


ナットやサドル、ブリッジなどのディティールは幾多のヴィンテージギターを見て、修理してきた皆川氏のこだわりが詰まっています。

100点をもらえた時はとても嬉しいですが、そうで無い時はやはり悔しいです。


マーチンのナット溝は外側から2.75mmくらいが理想的です。ギブソンは気持ち外側です。


元のナットよりはマーチンのナットっぽいですね。


最後はしばらく矯正していたピックガードを戻しましょう。


専用ジグで接着。


ヌルヌル滑りますのでタイトボンドでピッタリと元の位置につけるのは意外と難易度高いです。


ナットも指板もフレットも良い感じでは無いでしょうか。


ブリッジも余計なお化粧を落とし本来のすっぴんに。


1950年製のMartin D-28。

仕様においても音色にしても最近はやはり「D-28が至高」と言われてきたことに納得することが多いです。もちろん好みは人それぞれですが。


ピックガードもピカピカよりこっちの方がいいとなりあえてこの感じで。

 


 

先日NHKで福山雅治さんが所有する1940年製D-45をマーチン本社に修理依頼するという企画を軸として、マーチンの歴史や本家としての伝統を重んじる気概やこだわりを紹介する番組が放送されていました。修理方法や引退したマーチン職人の「計測は2度、切るのは一度」という言葉など印象的でとても興味深く、勉強になりました。

僕の師匠のさらにその師匠にあたる大先輩が何十年も前に本家マーチン社でその伝統的な修理方法を学び、日本に持ち込んだ、という話を皆川氏から聞いたことがあります。マーチンのスピリットが日本で世代を超えて受け継がれ、そしてちゃんとこの僕自身にも受け継がれていると思いました。自分ももっと経験を積み、学び、そして技術を磨き、それを次の世代に伝えることの大切さなど、勝手にその壮大な使命を感じました。

番組後半に福山雅治さんが「この貴重なギターを僕が所有することで、この音をレコーディングやライブを通して皆さんとも共有していきたい」的なことを言っていたのがとても好感が持てましたね!

ということで最後は少し話が外れてしまいましたが、今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

突板交換 / Hefnerエレキ


スタッフの山口です。

ショップ担当なのでネックリセットばかりやっている私ですが、今回はまた珍しくエレキの突板交換です。


画像が多めなのでサクッと行きます。

突板が劣化して割れています。


まずは特徴的なペグを外しましょう。


普段扱わない種類のメーカーのペグなので念の為元の位置に戻せるようにナンバリングすることにしました。


こういう珍しいものはブッシュも無くしたら大変です。

そうじゃなくても無くしてはいけませんが。


第一難関です。

このロゴ、フェンダーと違いプラスティック製のもの。当然経年劣化で割れやすいことが予想されます。


めちゃくちゃ慎重に、、。


確保ー!!

と叫びたくなりました。

その辺に置いておくと壊れますのでこんな感じで保管しましょう。


あとは古くなった突板を外しましょう。


今回は隙間からドライヤーで温めました。


接着剤も古く劣化していたので簡単に剥がれてくれました🎵


ロゴのダボ穴を先に開けてそれを起点に進めます。


裏から見るとこんな感じ。


段つきヘッドに合うようにドライヤーで温めて湾曲させましょう。

ですが、ドライヤーでは無理でした。


考えた末、ジャム瓶に熱湯を入れ瓶に密着させる方法を。冷めたら熱湯を交換しこれを繰り返します。


ジャム瓶方式が功を奏し、ヘッドにフィットするようになりました。

 


クランプ用ジグを作成。


木を少々荒らします。


突板の接着面も荒らします。


クランプ!


接着後はスクレイパーとサンディングでサイズを調整します。


バフ掛けもOK。


元の穴を広げないよう、慎重に突板の径を合わせます。


安全地帯に保管しておいたロゴを戻します。

いい感じではないでしょうか。

ヘフナーといえばポールマッカートニーのバイオリンベースですがこんなクールなエレキもあるとは。今回は音出ししていませんが個性的なサウンドのナイスギターで間違い無いでしょう。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

番外編/ ネック枕(ネックピロー)作り


スタッフの山口です。

インフルエンザでしばらく寝込んでおりました。今回は病み上がりなのでライトに、番外編です。

写真は使い古されたGU○CIの財布だったであろう牛革。なぜかこれを見ていてネック枕を作ろうと思い立ちました。

私の実家が木工を生業としておりますので、赤松や杉などの端材には困りません。

寸法は皆川氏の30年以上愛用するアコギ用枕を基にしています。

皆川氏本人が作ったのかとずっと思っていたのですが、聞いてみれば中尾貿易時代に一緒に働いていた営業の方が何となく空き時間に作ったものだそうです。

 

僕もサクッと30年使えるネックピローを作りたいと思います。

作業台を作製した時の余りのフェルトを、、

 


底面に接着剤を塗って、、


貼り付けます。


余計な部分をカット。


ネックが接する部分はクッションと、、


ここで登場、スーパーブランド。


日本一高級感のあるネック枕かもしれません。正規のコラボなら○万円です。


端材が4個分あったので4個出来上がってしまいました。

2時間かかりましたが30年以上使えると思えば大した手間ではありません。


何となく底面にも気を遣う事でいい製品ぽく見えます。

いい印象を与えるには足元は絶対に大事なのです。


アコギを扱うネックピローとしてはこれが世界一使いやすいと思っています。既製品も購入したことがありますが、安定感や養生不足で仕事には使えないものばかりでした。

これが家に一つあればテーブルで楽々弦交換できるので便利!お勧めです。

今回も最後までありがとうございました。

 

ボディ破損 / Morris W-25(最終回)


スタッフの山口です。

とうとう6週目になりました、Morris W-25。青春時代これ弾いてたなぁーと聞こえてきます。

 


完成間近にレフティーへの変更となり、ピックガードを早速製作です。アコギはこれを反転したものにしないとですね。

 


Morrisのピックガードは製作したことがないので本家マーチンのピックガードを目指します。ピックガードが変わるだけでも高級感が出ます。分かる人なら「お?ピックガードの雰囲気いいじゃん!」「XX年代のマーチンに寄せてるねー」などというマニアックな会話になるのです。


ナットもレフティー仕様に。普段と左右逆の作業になります。逆にやるだけ、なのにとても手間取ってしまいます。


一般的にはレフティーモデルは価格上乗せで高く売られていますので近年の多様性、ダイバーシティを目指す社会にはフィットしていないな、と思います。


弦間も形もしっかりとマーチンのように。

 


サドルの溝も一度埋木処理を施し、弦長を測定、補正して掘り直しました。


写真は載せていませんがフレットを擦り合わせたのでサドルは少し低めになりましたが、許容範囲です。


レフティーチェンジ完了!どうでしょうか、なんとなくギターから滲み出てくる高級感、、。ピックガードもいい感じです。

自分もオーナー様には及びませんが愛着が湧いてきました。


自分の中で「ブラックジャックギター」と命名。かっこいいです。


サイドは逆に傷を隠すため少し着色。

トップと同じく、潔くそのままにしたほうが良かったかな、と少し後悔。


内側もこんな感じです。

正直、想定より良い仕上がりで満足です。

Before
After

2年以上お預かりしましたが無事に修理完了です。見てくださいこの面構え。

レフティーの違和感を消すため画像反転。

どうでしょうか。この高級感?風格?

トップの色を黄色く着色し馴染ませたら逆に勿体無い、と考えた当工房のこだわりが伝わりますでしょうか。

壊れたら直せばいい、そしてそれは隠さなくてもいいのではないか。傷跡はそのギターの歴史であり、またそれがまた個性となっている。傷跡は「男の勲章」という価値観を体現したようなギターですね!

裸で持ち込まれたのでたまたま工房で遊んでいた高級感のあるハードケースに入れて納品完了!

オーナー様にもとても喜んでいただき、私たちも喜びと達成感で満たされることとなりました。このギターもオーナー様の心意気も当工房の気概も、全てプライスレス。お父様も喜んでおられると嬉しいですね!

1ヶ月半の長編修理ブログにお付き合いいただきありがとうございました。

今後とも皆川ギター工房をどうぞよろしくお願い申し上げます。