山口君のページ

[番外編]トップ交換/ Martin OM-42 [前編]


スタッフの山口です。

今回は番外編。先日よりHP内メニュー→在庫販売で掲載したOM-42CVのトップ交換の記録を見ていただきたいと思います。


見てください。絶句する程の大破っぷりです。

ここまで酷いと修理代にちょっと足せば同じギターを購入できちゃいますね。この場合高額な修理代を払ってもそれ以上の値段で売れる保証はありません。


オーナーが壊れたギターに対して余程のプライスレスな思い入れがない限り原価割れとなる修理はお薦めしませんがもちろん修理を選択する方もいます。

このギターのオーナーさんはこの状態で買い取りしてもらう方が経済的と判断したのでしょう。

 


ということで今回は修理の勉強のためにも自分がこの状態で買い取り、修理することにしました。

憧れの縦ロゴMartinが思わぬ形で自分の元にやってきました。

写真はまだスチーマーでダブテイルジョイントを温めていた様子です。


アジャストロッド仕様のマーチンはこんな感じです。


これは大変な期間を要するぞ、と思った瞬間です。


ライニングも新しくします。


元のシトカスプルースよりもどうせなら、と5年以上シーズニングされたアディロンダックスプルースを新調しました。


ブレーシングは元のトップ板から採寸し完コピします。


少し大きめにカット。


力木の前に先にロゼッタを作っておきます。


苦戦した記憶。


力木(ブレーシング)もアディロンダックスプルースにこだわりました。高さ太さもオリジナルを完コピして削ります。

約170年前にこのXブレーシングを発明したMartinさんは本当に偉大だと思います。

なんとなくギターっぽくなってきました。


迷った末スキャロップドブレーシングを選択。師匠はノンスキャロップ推しでしたが何となくスキャロップしたかったのです。


 

トップ板がほぼほぼ完成しました。美しい、、と思い記念撮影。長くなってしまうので前編はここまでです。空いた時間を使って進めているということもあり、ここまでで半年以上経過しています。修理というより製作に近いですね!「修理は製作の逆の工程になることが多いので製作工程を知ることはとても大切」という師匠の言葉が印象に残っています。

 

後編では完成までを載せたいと思います。完成品はHPのメニュー→在庫販売から既にご覧いただけますが、、

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

フレット交換 / Gibson J-45 50’s


スタッフの山口です。今回はGibson J-45のフレット交換(リフレット)です。写真は既にネックジグでチューニング後のネック状態を再現した状態です。


慎重に古いフレットを温めながら抜きます。


フレットを抜いた後もネックジグのメーターをチェック。フレットを抜いたことでネックが少し動いていたら0に合わせます。


少し指板をこするとこんな感じです。擦れている所と擦れていないところがあるのがわかります。フレット交換の際は歪んだ指板を調整してあげることでプレイアビリティがグンと向上します。


指板修正の難関、アールの調整です。個々のメーカーやギターに合わせて最適なアールを作ります。闇雲に作業してこのアールが崩れてしまっては台無しです。アール用スケールを当てて後ろから光が漏れなければGood。


ネックジグから一旦下ろして新しいフレットを打っていきます。赤いのはフレットバックと呼ばれるオモリ兼トップを保護する道具です。今や僕の相棒です。


フレットプレスを使ってフレットを打つこともありますが、基本は玄能でコンコン打ちます。


飛び出たフレットの両端をフレットカッターで切断。


すり合わせに入る前にもう一度ネックジグで演奏中のネックを再現します。


よく考えられた優れものですが、こいつを信じ過ぎてもいけません。一度ネックジグに頼り過ぎて1からやり直したことがあります。


フレットをすり合わせます。きちんと指板修正しフレットを打ちましたのであまり擦らずとも良い感じになります。


細かい作業工程は企業秘密ですが、丁寧に作業してるアピールもしたいので大まかに写真で追っていきます。


マスキングテープを指板に貼って磨きます。


最後はボンスターで仕上げ。

通常は高くなったフレットに合わせてナット交換(フレット交換料金に含まれます)も行いますが、今回はオールドギターですのでナットは底上げで対応します。

底上げしても溝の調整は必須。


サドルの高さもこの程度で調整できました。フレットが高くなるので弦高が下がると思われがちですが、指板修正とナットも高くなるので実際は高くなることの方が多いです。サドルが低い状態でのフレット交換の際はネックリセットも視野に入れて検討したほうがいいかもしれません。


フレットが浮き易い、というか、うまく打ち込むのが難しいハイフレット側。フレットバックのおかげもあって問題なし。


ピントが合ってないですがフレットがしっかりと蘇りました。


フレットは消耗品です。プレーヤーによって交換時期もそれぞれです。高さが残っていてフレットの精度が悪いだけならすり合わせだけでもOK。費用も安く済みます。


ワンリングの薄型のラージピックガード。見た目だけでいい音がしそうな風貌です。


Gibsonに限らずビンテージギターの相場が上がっていますね!最近はビンテージのバイクなどあらゆるビンテージモノが上がっているそうです。

今のうちに!と思うのですが、それを買えるようなお金は手元にありませんので指を咥えて見ている僕なのでした。(´ε` )

今回も閲覧いただきありがとうございました。

これまでの「山口君のページ」山口君の紹介の意味で分けておりましたが、次回から山口君の仕事もコンテンツ別に分けて更新していきます。

いつも「スタッフの山口です。」って始まりますから、別に分けなくてもね。

この記事までの「山口君のページ」はこのまま残ります。

 

ナット交換 / Gibson Hummingbird


スタッフの山口です。今日はGibson Humming Birdのナット交換を見ていこうと思います。


ナットは消耗品ですのでチューニングや弦交換を繰り返すだけでも溝が深くなり過ぎてしまうことがあります。


軽く叩くだけで素直に取れてくれるとホッとします。消耗品ですので取れなくなってしまうほどガチガチに接着してはいけません。次に修理する人にちゃんとバトンを渡してあげるのが大切です。


基本的には牛骨を使ってナットを作成します。


ネックバインディングが縮んでいる場合もありますが、これはピッタリ指板とネックに接しています。


ある程度形を作っておきますが、左右のツラは大体この時点で合わせます。


溝を掘る前に養生します。テープの粘着力は弱めておきましょう。


今回は既存のナットを参考に溝を掘ります。弦間を広くしてほしいなどご要望にお応えすることも可能です。


まずは1弦と6弦を決めます。基本的に端から弦の中心まで2.75mmを目安にすることが多い気がします。


1弦6弦の位置は既存のナットと大きく違うとお客さんも違和感を感じてしまいます。ただ元のナットがあまりにおかしい場合はあえて変えることもあります。


弦間をバランスよく。


溝がある程度掘れたら一旦外して磨きます。

 

ピカっとなったら再度つけて最終調整。


弦間チェック。ここがバラバラだったり極端に内側に寄ってると残念な感じになります。


ナットの深さは弦高を調整のために掘るものではありません。サドルがこれ以上下げられないからといってナットを掘っても開放弦がビビるだけです。


ナットはギターにとって音にも弾きやすさにも直接影響するパーツです。こちらのギターも喜んで鼻歌(Humming)を歌っているに違いありません♪

今週も閲覧いただきありがとうございました。

 

 

ロッド交換、ネックリセット / Gibson J-45


 

いつもお世話になっております。スタッフの山口です。最近僕の担当回はGibsonが続いていますが今回もGibsonです。60年代J-45のロッド交換とネックリセットというかなり大掛かりな修理を見て行きたいと思います。

ロッドが限界まで締め切られていて効かなくなっています。角度も狂っていてネックも順反り、ロッドも効かない。ネットオークションなどではあり得ますが、定評のある某ギターSHOPがこのまま売るわけには行かないコンディションと言えます。ということでご依頼に感謝して進めて行きましょう!


まずは指板を剥がさなくては始まりませんので3箇所ほどフレットを抜いてダボ穴をあけておきます。


例の年季の入ったネックアイロンで指板を温めます。師匠に聞いたところ中尾貿易時代から使っているモノで30年選手らしいです。( ゚д゚;)


1時間程かけて無事に指板を剥がせました。思っていたより綺麗に剥がせて一安心です。


メイプルの埋木の下にロッドが仕込まれていますのでなんとか埋木を除去しなければお目にかかれません。まずはドレメルルーターをフリーハンドで慎重に。。

デザインナイフで切れ目を入れたり細いノミを使ったり。古い接着剤も同時に除去します。

アジャストロッドのお出ましです。中々お目にかかれない貴重な瞬間です。

無事に古いロッドを抜いたら今回はネックリセットも同時に行いますのでダブテイルスポットを温めます。画像の通り指板を剥がしてジョイント部が見えていますので効率よく温められます。通常のネックリセットよりも安心安全。

綺麗に外れました♪


ネック角度修正の前に新しいロッドを仕込みます。Gibsonのトラディショナルロッドはシンプルな作りです。ネックの長さに合わせてカットします。


溝も新しいロッドを埋め込む前に溝を調整しておきます。


ダイスでロッドのネジ山を作ります。この道具がダイスという名前だと知ったのはつい最近。「ねじ山作製器」とか「ねじ山作製ハンドル」の方が誰にでも分かるのになんでサイコロの別名と同じなのか不思議です。


どの工程においても大体このくらいでOK、と師匠が横で教えてくれるので安心です。


ロッドの溝のアールにピッタリの埋木を作ります。溝の形状を正確に把握するための手前の道具の名前は「測定ゲージ」or「型取りゲージ」というらしいです。


いざロッドを仕込みます。次にお目見えするのは何十年後になるんだろう、とロッド交換の時は毎回考えてしまいます。


埋木を平らになるように削ります。


後はダボに合わせて指板を接着し、ネックの塗装修正をしてロッド交換は完了です。


最初の画像と比べると一目瞭然、新品同様のアジャストロッドになりました。


後はいつものようにセンターがズレないようにネック角度を調整します。

 

フレットをすり合わせて磨いて行きます。

なぜかこの画像で終了。肝心の完成写真を撮り忘れて納品となりました。(*_*)

ロッド交換は費用もやはりそれなりに、またお預かり期間も長くなってしまいますが、大切なギターのロッドがダメになってしまった場合は皆川ギター工房までお問合せくださいm(_ _)m

 

ブリッジ交換、リフレット / Gibson J-45 Deluxe


いつもご覧いただきありがとうございます。スタッフの山口です。こちらのギターは前にロッドカバーとピックガード再接着のブログで登場した70年代前半のGibson J-45Deluxeです。


ブリッジが改造されたようなおかしな状態だったためオリジナルっぽく作り直しました。


ブリッジ接着用の道具もありますがサウンドホールクランプを使います。


70年代のGibsonのブリッジは独特の薄さと形状ですね。年代によって至る所に変化があるのがGibsonの魅力だ、という人がいますが僕もそう思います。過渡期に見かけるような仕様が混合された個体に胸が熱くなる人も多いのではないでしょうか。

 

 

 


フレットも新しく交換して行きます。


フレットを打つ前の修正された指板にいつもうっとりします。長年の汚れや手垢で見えなかったローズウッド本来の木目の美しさが甦ります。

サンドペーパーの目が細かすぎるとあまりカッコ良くない、というのは多くのアコースティックギターを見てきた師匠からの教えです。


たまにフレットプレスを使いますが最近はトンカチで打つ方が多いです。


前のブログでピックガードを貼ったら完成です。70年代Gibsonはもっと評価されてもいいと思わせてくれたギターです。斉藤和義さんもたまに使っていますね。何よりも本家Gibson自身がもっと評価するべきだと思ったりもします。

 

ピックガード貼り直し、ロッドカバー交換 / Gibson J-45 Deluxe


スタッフの山口です。今回はGibsonJ-45Deluxe。まずはロッドカバーをオリジナルっぽく作って行きます。


材料を大方の形に切ってビス穴を開けたら表面を傷が残らないように徐々に番手を上げながら磨いていきます。


ロッドカバーは小さいのでピックガードの磨きよりは楽です。土台の木材もツルツルになってしまいました。


左がよく見るGibsonロッドカバー既製品。真ん中が作製した70年代のオリジナルの形で作ったもの。右が元々付いていたモノです。

 

 


ロッドカバーができたら今度はピックガードです。こちらはオリジナルのピックガードが反り返った状態で剥がれていましたので何ヶ月も重石を置いて平らに矯正しておりました。


合板でピックガードにピッタリなジグを作って、今回はタイトボンドで接着しました。

このペグ、好きです。作成したロッドカバーも馴染んでいていい感じです♪

こちらのギターは10年以上前から工房に眠っていました。師匠が勉強も兼ねて僕に任せてくれました。この他にも修理をしたのですがそれはまた後々。

鳴りがよくすぐに買い手がつきました。

長い間メンテナンスされていなかったギターが甦り、誰かの手によってその音が奏でられるというのはとても嬉しいことです。ギターのサウンドホールから「ありがとう!」と聞こえる気がします。

ギターに限らずですが、「モノを修理して永く使うこと」は、作った人も買った人も、また手放した人もそしてそれを直した人もみんながハッピーになれることだと思います。修理っていいな♪

それでは!

 

ネックリセット / Gibson L-OO 1930s


 

お世話になっております。スタッフの山口です。今回は貴重な1930年代のGibson L-00のネックリセットです。

少しずつブログを意識した写真が増えてきましたが、今回は修理前の弦高を撮っておりました。

サドルはギリギリまで削っているのに4mm以上の弦高です。一般的なアコースティックギターでは6弦側12フレットで2.5mmくらいが好まれますのでネックリセットで改善したいと思います。

14フレットジョイントのギターですのでいつも通り15フレットの下辺りのダブテイルの隙間を温めて行きます。

トップのスプルースが指板に付いて剥がれていますが後で修正できますので無事にネック外し完了です。

 

元々センターがズレていたのでネック角度と合わせて小まめに確認しながらセンターも修正して行きます。


ネックリセット後の工程を想定して角度を決めるのですがこれが本当に難しい。完了目前にしてやり直したことも過去何度もあります。

 

ローズ系の指板は穴をなるべく目立たないように埋木します。

忘れましたが今回は事情があってネック接着前に埋木しましたので指板裏面もノミで綺麗に削ります。

 


接着後の写真です。センターのズレもしっかり修正できました。


このくらいサドルが立っていれば安心です。今回はギターの雰囲気に合わせてオイル漬けの牛骨サドルにしました。


ヒール部も綺麗に仕上がりましたので塗装修正は不要。


反対側もOK。

 

最近流行りのインダストリアルな雰囲気のあるヴィンテージギターですね。個人的な印象でしかありませんが、部屋に飾るインテリアとしてはMartinよりGibsonの方が適している気がします。

この年代特有のヘッド形状、真っ黒なエボニーのナット、何より筆記体のロゴがペイントで真っ白なのがイケてます♪

例外なく、ナイスギター!

 

ネックリセット / Gibson LG-3 1950s

 

スタッフの山口です。1950年代のGibson LG-3、ネックリセットを見て行きたいと思います。

写真では分かりづらいですがネック角度が狂ってしまっています。これではサドルを削ったりアジャストロッドで調整しても弾きやすい弦高まで下げられません。

サドルはこれ以上低いと音への影響も顕著になります。ネックリセットほどの修理代をかけたくない、かけられない場合はこのブリッジの上面を削って薄くし、サドルの出しろを稼ぐという方法もありますが、今回は貴重なオリジナルのハカランダブリッジが綺麗に残っていますので、削ったりせずにネックリセットで解決することになりました。

 

 


15フレットを抜いてヒートスティックを挿入する穴をあけます。黄色いマスキングテープは掘り過ぎないための目印です。貫通してしまったら大惨事です。


指板をトップ板から分離させるためにハロゲンライトで慎重に温めます。修理屋さんによって温め方や道具は様々ですね。


指板とトップの境目にナイフを入れて分離したら今度はヒートスティックでヒール内部のダブテイルジョイントを温めます。とにかくニカワでもボンドでも温めて接着力を弱めます。

 

 

 


写真が一気に飛びます(汗)

ネックヒールを削りネック角度が適正になりました。


クランプで固定しなくても弦に負けて外れないようにジョイントしなければ合格点は貰えません。センターもずれていてはNG。

ネック角度が適正になったことで指板が下がってしまう場合は、指板の底面に同じ材料を足して指板面がなるべく最後までまっすぐになるようにしてあげます。写真をよーく見るとトップ面との間に薄い層が見えますね。

最終チェックとシュミレーション後に接着です。手早く作業しないといけませんので緊張します。

 

 

 


無事接着し完全に乾燥(2〜3日以上)したらフレットのすり合わせをします。フレット交換も行なった場合はナットも作り直しますが今回は交換なしです。


サドルの出しろがいい感じです♪

このサドルを何ミリか高くするために結構な時間と労力、それと修理代がかかります。


弦をチューニングしっぱなしにすると張力でネックが反ったりトップ板が凹んだりブリッジが外れたり、ギターによって多種多様な不具合が出てきてしまいます。


オールドギターやビンテージギターは長い時間をかけて木が安定していますので、ちゃんと弦を緩めて湿度に気をつけていれば修理後の良い状態を長期間維持できると思います。もちろん新しいギターにも当てはまります。当工房オーナーも度々言っていますが、アコギは弾かない時はなるべく弦は緩めましょう。

 

リフレット(フレット交換) / Gibson LG-3

スタッフの山口です。今回はGibsonのLG-3のフレット交換です。角度が悪いので本当はネックリセットしたいところですが、先方の予算を踏まえ今回はアイロンで角度をできるだけ修正してあげてからフレット交換することになりました。

かなり年期の入ったアイロンですが現役です。師匠に何年前から使っているのか今度聞いてみよう。

ネックアイロン修理は簡単そうに見えますが、その後なるべく指板やフレットを削らないで済むように色々と試行錯誤するため意外と難しく、セッティングに時間がかかります。師匠に随時チェックしてもらいます。

 

 

 


アイロンで無事に角度修正できたら今回の主役、『ネックジグ』の登場です。

移転前の工房ではスペースがありませんでしたが、今の工房ではスペース確保が可能になった為、アメリカから取り寄せました。


簡単に説明すると弦を張って演奏する際のネックの反りや角度をメーターで記憶し再現したまま指板修正やフレットの擦り合わせができる、といった優れ物です。


演奏時のネック状態を維持したままフレットを抜き指板を修正します。

 

 

 


少し飛んで、、、フレット交換し、すり合わせたりエッジを丸めたりしながら磨いて行きます。


師匠が長年かけて編み出した工程、レシピは門外不出です。まだ僕がお客さんだった時、師匠の仕上げたフレット交換の仕上がりに感動して弟子入りするに至った、と言っても過言ではありません。

 

 

 


象牙やオリジナルにこだわるなど特殊な事情が無い限りナットは牛骨で新しく作り直します。


フレットが高くなるのに加え、指板もしっかり修正できますので弾きやすさは体感できるほど良くなります。


サドルは低めですがネックアイロンをかけておいたおかげで許容範囲になりました。ネックリセットで得られるサドル高には及びません。


元々『LG』は「Ladies&Girls」の略らしいです。一般的な日本人男性ならこのくらいが肩が疲れないギリギリのサイズだと思います。50年代のビンテージですが、J-45よりもいくらかお手頃価格なので狙い目です。ナイスギター!

 

ネックリセット / OOO-45コピー


 

残暑見舞い申し上げます。スタッフの山口です。

今回は手工品のooo−45モデルのネックリセットを見ていこうと思います。

珍しく修理に取り掛かる前に写真を撮りました。よく見るとヒールに隙間が出来ています。

近年の本家マーチンでもたまに見られる不具合です。原因はダブテイルジョイントの精度が悪かったり、シムに紙が使われていたりでこうなることが多いです。

今回はどうやら精度が甘く長年の弦の張力に負けて隙間ができたようです。


コピーモデルですがこちらは本家顔負けの雰囲気がありますので、恐らく見えないところもマーチンと同じ構造だと予想し15フレットを抜きます。


予想通りダブテイルのポケットがありました!よかった。

ダブテイルジョイントを温める前に指板を温めてトップから指板を剥がしておきます。

少し飛んで、綺麗に外れました。

 

 


今回はこちらに注目。ドリル跡が確認できますでしょうか。真っ黒で良質なエボニーは埋め木しても目立たないですね。


こちらはネック角度を適正にしたことで下がってしまう指板に足す下駄を作成中。こちらも一応エボニーですが縞のある黒檀ですね。


ネックバインディングがありますので下駄に合わせてバインディングも足してあげます。


これはフレットを戻した後の画像。よーく見ると跡が確認できます。

 

 


後はいつものように接着剤を付けずにシュミレーション。


センターのズレはないか最終確認。元々ズレている個体もよくありますのでその時は角度と同時進行でできるだけ修正してあげます。


バインディングは足した部分が分かりやすいです。

ネックバインディングがない28シリーズの場合はエボニーですのでドリル跡同様目立ちません。

 

 

サドルもベストな感じです。ロングサドルは高すぎると特にカッコ悪くなってしまいます。逆にサドルが低くてもせっかくお金をかけてネックリセットを頼んだのにあまり意味がない、、と残念がられてしまいます。

本物のマーチンと雰囲気は違いますが、高級感とヴィンテージ感は本家に負けないギターですね。もしかたらマーチンの工場で働いていた職人さんが独立して作ったとかでしょうか。専門学校生の卒業作品の可能性もありますが、どちらにしてもウン十万円はしそうですね。

 

今日修理が完了した12弦ギターはネックリセットし終え、フレットのすり合わせも終わっていましたが、想定していたよりサドルが低めに仕上がってしまいました。そのまま納品するか迷いましたが、師匠に相談したところ「納得が行かないならやり直した方がいい」とのこと。

よし、と、もう一度、一からネックを外し、リセットし直しました。今日やっと完了。サドルの出もちょうど良く「納得」できる仕上がりになりました。ネックリセットは接着後にフレットはすり合わせなのかリフレットなのか、リフレットなら指板修正はどの程度か、アジャストロッドの有無や調整幅など、多くのことを想定しながらやらなくてはなりません。経験と想像力を頼りに戦う修理ですので、納得のいく仕上がりの時は喜びもひとしお。大変ですが達成感があり好きな修理の一つです♪