ナット,サドル

ネックリセット&ナット交換 YAMAHA 12弦ギター


スタッフの山口です。

来ました、12弦ギター!しかもスロテッドヘッド、、。手間がかかるリペアマン泣かせのヤツです。

今回はネックリセットとナット交換のご用命です。


ヒール部分に圧力がかかっていたのかボディとネックの境目の塗装がボロボロですね。せっかくネックを外しますのでここも修正できたらと思います。


このアングルは伝わりにくいんですが、ネック順反りと元起きが平行して発生中です。


ネックの順反りだけでは中々この弦高にはならないですね。6弦側は6mm超えてる、、


1弦側も5mm。こりゃあ弾けたもんじゃないです。


ここまでの症状は中々ないので色々なパターンで状態を観察。1フレットにスケールを当てます。


もう片方を最終フレット置くと12フレットはこんなに隙間が空きます。

なんとかしてあげましょう!

 


基本的にはMartinに近いダブテイルジョイントですのでいつものように進めていきます。


YAMAHAは継いでヒールを作っていることが多いのでネックリセットの際はダブテイルの熱でその接合部の接着剤が一緒に軟化し、そこが開いたり折れたりすることもしばしば。それを想定しながら進めていくしかありません。


なんとか無事に外れてくれました♪


角度を正常にするためにヒールを少しずつ削っていきます。ガザガザだった塗装面の半分以上は削り落とされましたが、まだ少しガザガザが残っているのでそこは修正します。


もちろんこちらのガザガザも修正しましょう。

 


なんとなく綺麗になっているのがわかると思います。


センターはズレは、、、


ないですね!


いざ組み込みです。


こちらはYAMAHAの高級機ということもあり文句なしの真っ黒エボニー、穴も綺麗に埋まります。


実はここからが今回の本番です。

12弦ギターと6弦ギターのリペアで一番大きく手間がかかるのがコレ、ナット交換なのです。料金が少し高くなるのはご理解ください。


通常はフレット交換に伴ってナットを新調しますが、今回はナット溝をオーナーの好みにしたいとのこと。


主弦と副弦の感覚を近づけてほしいとのこと。写真を見て何となく分かりますか?右が作成中のナットで左が元のナットです。


こんな感じになりました。


ナット、サドル、フレット。アコギは消耗品であるこれらのパーツが新しいと見栄えがいいと個人的には思います。


ネックリセットしたのでもちろんサドルも新調します。


 この出しろで6弦側2.0mm、1弦側は1.4mm程。まだ若干順反りしてるのでこのくらいが弾きやすいかと思います。


ヒールはいい感じに綺麗になりましたね!


何となく最初より凛々しく見えます。

 


ジャパンヴィンテージ最高峰の貫禄がありますね!


当時いくらで今はどのくらいするのでしょうか。


ハカランダに挟まれた高級グレードのフレイムメープルがお洒落ですね!


ファンには堪らないであろうサインもしっかりと残っています。


 

このYAMAHAのヒールキャップは構造的にバインディングの領域まで達しているのでとても手間がかかりました。Martinなどはヒールと一緒にキャップも削れてくれるので自然といい感じになりますが、このデザインだとヒールキャップを一度取り外して、ネック角度を修正後、それに合わせてキャップもリサイズ加工して綺麗に元に戻さなくてはなりません。

きっとバックのセンターとヒールキャップが同じフレームメープルで繋がっている方がデザイン的にカッコいいということなんだと思いますが、であればバックセンターのメープルをバインディング領域まで伸ばせばよかったのに、、。

後世に残すべき楽器だからこそ、何十年後かに必ず訪れる修理やメンテナンスのことをしっかりと考えて欲しい!という想いが何となく愚痴っぽくなってしまいました。もちろん言わずもがな、サウンドもナイスギターでした♪

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

フレット交換(ナット交換) / Gibson J-45


オールドJ-45の


リフレットを


いたします。

 

お客さんからのご要望は出来る限り答えられる様にやっておりますが、無理な場合は無理になります。

「ブログで見られるのは半年位後ですね。」…→「今書いているのは順番に、3年前位のをかなり薄まった記憶をたどりつつ書いています。」

昔は週1か週2のペースで、しかも山口の分もありませんでしたので、半年~1年前の記録が順番で巡って来ましたが、気が付けば3年分位記録が溜まっております。

「もっと頻繁に書けばいいのに。」と人は言うでしょう。

やってらんないのでございます。

なので、動画などやっている人は、尊敬いたします。

 


 


 

「えー!そうなんですかー」もっと早く見たい~とのご要望がありましたので、忘れないうちに上げます。

但しこのままにしておきますと、3年後に順番が来ると忘れてもう一度アップしていまいますから、このブログが上がりましたら掟により、この記録はDSカードから消します。

 

 

3弦の溝

真正面から写さないと溝が丸く写らない。

4弦の溝

若干歪んでしまいます。

 

今回何故このような画像があるかと申しますと、ナットの溝って難しいんです。

と言いたい為。

弦に対して溝の幅、角度、そして意外と気にしない人が多いのが溝の形。

巷に溢れているギター用ナット溝専用ヤスリって、がんばっても溝は真ん丸にならないんです。

私がヘタなだけかもしれませんが、ツルっとした真ん丸にならないのです。

なので、途中まではナットファイルでやっても途中からは丸棒ヤスリで溝を作ります。

3弦用の丸棒ヤスリは細くて上手くやらないとすぐ折れてしまいます。

ヤスリも安く無いので悲しくなりますが、ツル丸ナット溝の為にはそれを使うしか無いのです。

 


 

 

ネックリセット&ブリッジ溝修正 / Kalamazoo


スタッフの山口です。

えーと、今回もネックリセットです。基本的にビンテージショップの展示前在庫や委託修理を担当ですので、ヘヴィーな修理が多くて修理のバリーションが少ない分、色んなビンテージギターを分解する様子を楽しんでもらえれば幸いです。

 


ビンテージギターのブッシュ紛失は地味に取り返しがつかなくなる問題になりますので弦を外したら輪ゴムで止めましょう。


早速指板とトップを慎重に剥がします。


ダブテイルジョイント内部を暖めて、


同時に専用ジグでゆっくりと力を加えていきます。

写真のようになればもう安心です。


ネックジョイントの溝の形も様々です。


ロッドの仕込み方も様々です。

1930年代当時KalamazooはGibsonの廉価ブランドですのでロッドの仕込み方も同じです。単純にカラマズー工場だからカラマズーというブランド名にしたと考えるのが一般的ですね。


ヒールを少しずつサンドペーパーで削っていきます。

ネット上でノミを使う職人さんも見たことがありますが、僕は怖いので地道にやる派です。


角度をつけた分、指板も足してあげましょう。約0.7mm厚の縞黒檀のシート材を階段状に重ね、それを均してテーパーをつけるのです。


ちょっと分かりづらい画像で申し訳ないですが、こんな感じです。綺麗にしてあげて、いざ接着です。


溝の接地部分にシムを作成し仕込みます。

なるべく接着剤に頼らない木工精度で仕込みます。ここが甘いととても残念な結果を招くことになります。


写真のように接着剤無しで組み込み、弦を張ってもヒールが浮かないのが理想です。


組み込みが終わったらフレットをすり合わせます。


個人的にはリフレットしたいですが、依頼主が良ければそれでOK。


ナットがない状態で工房にやってきましたので今回は新しく作ります。


ブリッジのサドル溝がワイドに長すぎてカッコ悪いとの理由から、


一旦埋木していい感じに直します。


余計な部分を削り落として、


ルーターで溝切り。


いい感じです。


リセットしたのでもちろんサドルの出シロも復活です。


この感じのロングサドルのルックスにこだわり、ここにコストをかけるショップさんの心意気。


1弦側は少し埋木あとが残りましたがサドルが長すぎるよりは良いのです。


良い面構えになりました。


ナットも新しくなった上で、


センターもバッチリ決まっています。


紛失しやすいブッシュも無事です。

全然関係ないですが、最近はZの筆記体をこのロゴでしか目にしていません。

バックのメープル材が廉価ブランドとは思えないグレードですね。かっこいい!!

カラマズーは軽くて音抜けもよく、とってもナイスギターが多い印象です。虎目のピックガードもイカしてます。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

ナット交換 / Martin OOO-18


スタッフの山口です。

今回はリペアの基本中の基本、ナット交換です。写真はすでに外れてますが、実はこの古いナットを綺麗に外すのが一番緊張する工程です。乗っているのは古いナットと新しく作る牛骨材。


溝に残った古い接着剤はなるべく木まで削り落とさないように除去します。

この小さいノミは仕様頻度TOP3に入るくらい重要な工具の一つ。


ベルトサンダーで大まかに形を作ります。ナットの横幅縦幅は手作業でちょうど良く、キツすぎず緩すぎず。


メーカーの特徴やお客さんの要望に合わせて1弦と6弦の位置を決めます。ギブソンはもっと外、ヤマハはもっとグッと中に入ります。


弦間は1弦→6弦に向かって少しずつ広がっていくのが理想的ですね。


ある程度溝の深さを決めたら背高を落として行きます。ナットの背が高すぎると不思議と弦高が高く感じて、弾きづらく感じるのはプラシーボ効果というやつでしょうか。


皆さんの所有されている弦間をよく見てみてください。よく見ると笑っちゃうくらいバラバラなナットも結構あります。


ナットの見た目は色んな方向から見ていいフォルムに仕上げたいものです。


こっちからもマーチンぽいかな?とか見ます。


なぜ撮ったのか分からないけど、、


多分このネックのVシェイプ好きだなぁー、と思って撮った気がします笑


このくらいの弾きこまれた感が一番魅力的な音がする気がします。


 

ナイスギター過ぎます。

いくらナイスギターでも状態が悪ければ良い音は出ません。

と、言いたいところですが本当にナイスギターは弾きづらかろうが弦が錆びまくっていようが修理前にすでに素敵な音がしていることがほとんどです。

修理してあげるとそれがさらに素敵なサウンドになります。

今回もそんなナイスギターに関わることができて感謝です。

今回も最後までありがとうございました。

 

ボディ破損 / Morris W-25(最終回)


スタッフの山口です。

とうとう6週目になりました、Morris W-25。青春時代これ弾いてたなぁーと聞こえてきます。

 


完成間近にレフティーへの変更となり、ピックガードを早速製作です。アコギはこれを反転したものにしないとですね。

 


Morrisのピックガードは製作したことがないので本家マーチンのピックガードを目指します。ピックガードが変わるだけでも高級感が出ます。分かる人なら「お?ピックガードの雰囲気いいじゃん!」「XX年代のマーチンに寄せてるねー」などというマニアックな会話になるのです。


ナットもレフティー仕様に。普段と左右逆の作業になります。逆にやるだけ、なのにとても手間取ってしまいます。


一般的にはレフティーモデルは価格上乗せで高く売られていますので近年の多様性、ダイバーシティを目指す社会にはフィットしていないな、と思います。


弦間も形もしっかりとマーチンのように。

 


サドルの溝も一度埋木処理を施し、弦長を測定、補正して掘り直しました。


写真は載せていませんがフレットを擦り合わせたのでサドルは少し低めになりましたが、許容範囲です。


レフティーチェンジ完了!どうでしょうか、なんとなくギターから滲み出てくる高級感、、。ピックガードもいい感じです。

自分もオーナー様には及びませんが愛着が湧いてきました。


自分の中で「ブラックジャックギター」と命名。かっこいいです。


サイドは逆に傷を隠すため少し着色。

トップと同じく、潔くそのままにしたほうが良かったかな、と少し後悔。


内側もこんな感じです。

正直、想定より良い仕上がりで満足です。

Before
After

2年以上お預かりしましたが無事に修理完了です。見てくださいこの面構え。

レフティーの違和感を消すため画像反転。

どうでしょうか。この高級感?風格?

トップの色を黄色く着色し馴染ませたら逆に勿体無い、と考えた当工房のこだわりが伝わりますでしょうか。

壊れたら直せばいい、そしてそれは隠さなくてもいいのではないか。傷跡はそのギターの歴史であり、またそれがまた個性となっている。傷跡は「男の勲章」という価値観を体現したようなギターですね!

裸で持ち込まれたのでたまたま工房で遊んでいた高級感のあるハードケースに入れて納品完了!

オーナー様にもとても喜んでいただき、私たちも喜びと達成感で満たされることとなりました。このギターもオーナー様の心意気も当工房の気概も、全てプライスレス。お父様も喜んでおられると嬉しいですね!

1ヶ月半の長編修理ブログにお付き合いいただきありがとうございました。

今後とも皆川ギター工房をどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

フレット交換 / Gibson Humming Bird メープルサンバースト


スタッフの山口です。

今回はフレット交換を見ていこうと思います。通常Humming  birdはネックバインディングがありますが、今回のHBはありません。Limited Editionなのでイレギュラーですね。


突板を破損しないようにナットを外します。


ナットが写真のように外せたら一安心です。

ナットは消耗品ですので外そうと思えば外せるけれど、弦交換ぐらいでは外れないように、絶妙な接着加減が必要とされます。

たまにガチガチに接着されてしまっている残念な場合は鋸で切れ目を入れて破壊しなくてはなりません。


指板修正時の画像を撮り忘れました。指板修正後はフレットを打ち、カットしてすり合わせます。

フレットの種類はご相談ください。実際に見て決めていただいても大丈夫です。


今回は一番よく使われる型番です。

弾いていてチクっとしないようにフレットの角を丸めます。一本一本丁寧に時間をかけます。とても大事な工程なのです。


フレット磨きは番手を3段階くらい上げながら最後はスチールウールで程よいピカピカ加減で仕上げます。


新品のフレットは気持ちがいいもんです。


基本的にナットは1フレットの高さに合わせて作り直します。元のナットを使われたい場合は底上げで対応もできます。


ナットも材料のご指定は可能ですが、基本的に象牙は新規でお造り致しません。動物愛護のためにも人工象牙と謳われるタスクにしましょう。

ご指定がない場合はお勧めである牛骨でお作りします。師匠の皆川も僕も牛骨が一番好きです。


ナットとサドル料金はフレット交換の金額に含まれますのでご安心ください。

牛骨以外の素材指定がある場合は追加料金が必要になります。


ナットが決まったら弦高を決められますのでサドルを作って行きましょう。

 


良い感じです。


指板もフレットも綺麗になって気持ちがいいです。


ピンボケしてますがフレットの端はなるべく立たせたいと思って仕上げています。斜めに落とし過ぎているのは弦落ちしやすいし格好が悪いです。


完成。ピックガードにハチドリが居ないのにハミングバードとは、、、なんとなく寂しい気がしてしまいます。

フレット交換をするタイミングは人それぞれです。弾いていて気にならないのであればまだ大丈夫です。

以前、自分のギターで長持ちさせようと高さのあるフレットに打ち替えたのですが高過ぎて抑えづらく、結局すり合わせして低くしたことがあります。

サドルもそうですがフレットも「高ければいい」というわけではありません。答えは「オーナーの好み次第」なのです。

今回も最後までありがとうございました。

アジャスタブルサドル戻し Gibson J-45 BLK(1969)


スタッフの山口です。

60年代Gibsonといえばアジャスタブルサドルですが、ノーマルサドルに変更されていることがよくあります。ピックアップを仕込むため、単純に音の好みなど理由は様々です。今回はショップの依頼ですので「ノーマルサドルからアジャスタブルサドルに戻した方が早く売れるから」という理由でしょうか。


初めにブリッジを剥がす必要がありますが、その前にこの厚型ピックガードを剥がします。これがあるとブリッジを剥がすのに大変邪魔になります。

この厚型ピックガードはいつも修理の邪魔をしてくるのです。


そしていつもこのベタベタ取りに苦労するのです。


ピックガードを退けたおかげでいい角度でナイフを入れられました。裏側から見ると本来のアジャスタブルサドルの溝が埋められているのが分かりやすいですね。


埋木が甘かったので10分ほどで本来の姿に戻りました。それに比べてピックガードのベタベタ取りは1時間近くかかりました、、、。修理箇所の近くのパーツで苦労するのは修理あるあるかもしれません。


アジャスタブルサドルがちゃんと収まるのを確認し、接着面をキレイ且つ少し荒らしてブリッジを接着します。


いつかまた誰かが苦労するであろうベタベタになるであろう両面テープでピックガードを戻します。両面テープは一発勝負。位置がズレないように空気が入らないように慎重に貼り付けます。


アッパーベリーブリッジの方がGibsonらしいですが、このベリーブリッジのアジャスタブルサドルタイプは過渡期の1968年後半〜1969年のわずか1年〜2年弱しかありませんのでこちらの方が希少性が高いとも言えます。


1960年〜1970年のGibsonは過渡期。それこそがオールドGibsonの魅力でもある、と言う人も多いのではないでしょうか。

 


 

当時はきっと色々な事情があって都度仕様変更がされていったのだと思います。単純に構造的改善を求めた結果だったり、経済的な事情であったり。きっと今現在も進化し続けているのだと思いますが、結局売れ筋は60年代までのリイシューモデルばかりで「古き良きGibson」なんて言われたりするのはメーカーとしては心苦しい部分もあるかもしれません。

ちなみに師匠の皆川とよくリイシューモデルがほとんど無い70年代のGibsonは過小評価され過ぎているという話をします。ネットで調べると酷い言われ方をされている記事や知恵袋が散見されますが、それらに囚われずに一度心をフラットにして弾いてみればとても良いギターだったりします。

自分が弾きやすくて音が好きで弾いていて楽しいのであれば、たとえそれが10,000円のギターであってもベストギター、「運命の相手」なのだと思います。なるべく情報やウンチクやアレコレなどに囚われずにギターと向き合っていきたいですね。

でも確かに古いギターは「おおー!」となるものが多いのも事実です。それはきっと木製楽器の宿命かもしれません。

ベリーブリッジとアッパーベリーブリッジのことを考えていたら話が全然違う方向に行ってしまいましたが、、今回も最後までありがとうございました。

 

ナット交換 Gibson L-00

スタッフの山口です。

今回は修理メンテの基本、ナット交換です。まずはビフォーアフターからご覧ください。一枚目のビフォー写真、良く見ると弦と弦の間隔(弦間)が狭かったり広かったりバラバラです。

2枚目は完了後、アフター写真です。

1枚目と見比べると弦間がバランス良く改善しているのがお分かり頂けると思います。

せっかくナットの溝の精度や深さが良くてもこの弦間がバラついていては台無しです。


今回はギターの雰囲気に合わせてオイル漬けのナット材を使います。


古いナットを外したら指板や底面に残っている古い接着剤を除去します。


冒頭で触れた弦間を決めます。テンプレートを使ってマーキングしますが、溝を掘っていくうちに曲がって(ズレて)弦間がバラついてしまう、、というのは初めの頃はよくありました。


ナットの形はメーカーによって様々です。それぞれのメーカーや年代に合わせた成形を心掛けます。例えばギブソンなのにヤマハっぽいナットだったりするとカッコ悪いのです。逆もまた然り。多種多様なナットのディティールは未だに苦戦します。


ナットは演奏上とてもデリケートなパーツです。なんとなく弾きづらいと感じる場合、ナットに原因があるかもしれません。

又、音にも直接的に影響するパーツです。溝の深さ、幅、精度、角度、そして弦間や形、注意深く調整が必要になります。


ギターを初めて2ヶ月、「未だにFコードの音が出せない。」と嘆く友人がいて「皆んな初めは通る道だよ、その内いつの間にか弾けるよ」と返すと「全く弾ける気がしない」とのこと。まさかと思いギターを見せてもらったら、僕でもまともに音が出せないようなナット。調整してあげたら友人も綺麗にFの音が出せて拍子抜けした、なんてこともありました。新品のギターはナット溝が浅めのものが多いので弾きづらいと感じたら一度調整してもらう事をお勧めします。

その際は是非皆川ギター工房をご指名いただけると幸いですm(_ _)m

 

とりあえずオイル漬けナットが良く似合う、今回もナイスギターです♪

 

ネックリセット/Martin D12-18


スタッフの山口です。またまたネックリセット修理になりますが今回は12弦ギター。1970年代のMartin D12-18です。Gibsonではサンバーストと言われるカラーリングですが、Martinではシェイドトップ(shaded top)と呼ばれますね。

12弦でも14フレットジョイントであれば6弦ギターと同じで15フレット下を温めて接着を緩めます。


Martinは製作時、塗装してからネックとボディを組みますので塗装面は綺麗なまま外れることがほとんど。一方Gibsonは組み立て後に塗装する為ヒールとボディの境目にナイフで予め切り込みを入れておかないと塗装面にクラックや乱れが残ってしまいます。


恒例の記念撮影。


SQロッド(スクエアロッド)が見られます。本当に四角いロッドなのがわかりますね!

もちろんアジャストはできません。


ヒールを少しずつ削り仕込み角度を見ながらセンターがズレていないか小まめにチェックします。


12弦ギターは6弦よりも張力も強いのでその分仕込み角度を決めるのも激ムズです。

実はこの写真の後、一度接着した後にもう一度ネックを外して一からやり直しました(泣)

サドルが想定していたよりも低くなってしまったのです。


今度こそいい角度で仕込むことができましたので指板のドリル穴を埋めていきましょう。


ローズ指板はエボニーよりも跡が目立ちやすいので腕の見せ所です。


腕の見せ所とは言いましたが、、穴の跡はよく見ないとわからない程度であれば大体OK。皆さんのギターも15フレットをよーく見ると跡があるかもしれませんね。

せっかくリセットしたのですからこれくらいはサドルの出しろが欲しいですよね!やり直した甲斐あって高過ぎず低過ぎず、カッコ良し。

ちなみに今回は弦長補正型サドルにしてみました♪

12弦ギターはチューニングに手間がかかりますよね。それでもしばらく演奏しない時は弦を緩めましょう!

今回もご覧いただきありがとうございました。

 

ブリッジ整形&ロングサドル変更 / D-28(1965)


スタッフの山口です。D-28、1965年といえばロングサドルからショートサドルに変更になった年です。シリアル番号からこの個体のオリジナルはロングサドルのはずだそうです。


ということはオリジナルのブリッジではありません。写真ではわかりづらいですがディティールも若干違和感があるためオリジナルっぽくするために手を加えます。


恐らくマーチン用の出来合いのブリッジに交換されていたようです。1弦側と6弦側で高低差がほとんどない為オリジナルと同じくらいなだらかな高低差を作ります。写真はその作業中。他にも師匠の皆川にどの辺がもうちょっとこうとかああとか相談しながら四苦八苦。


整形し終えたらロングサドルに彫り直すために既存の溝を同じエボニーで埋木します。余計なところにノミが当たらないように入念にマスキング。


溝が埋まったら弦長を測り溝のルートをマーキング。ルーターで狙い通りの位置に溝を彫るのですが、ロングサドルの場合少しでもルーターが前後左右に傾くと顕著にそれが見て取れてしまいます。


ロングサドルの両端がウイングに大きく突き出てしまうのはあまりカッコ良くありません。写真の通りこのくらいがちょうどイイ感じです。(5mmくらい?)

左右にルーターのジグが傾くと1弦側だけ、もしくは6弦側だけ溝がビヨーンと外側に伸びてしまいます。ショートサドルに比べてロングサドルは何かと面倒なのです。

6弦→1弦側に向かって山形ですが少しずつ低くなっているのが分かりますね。この若干の高低差がないとサドルが入った時に結構な違和感があります。

飴色に焼けた1965年製のD-28。ロングサドルが入るとさらにビンテージ感が出ますが今回はここまで。

アコースティックギターのお手本のような音とルックス、近頃の円安も相まってさらに手が届かなくなってしまった「THE アコースティックギター」です。

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。