ネックリセット

ネックヒール隙間(ネックリセット) / Martin D-41


スタッフの山口です。

今回はMartin D41のネックリセットですが、実はネックリセットしたばかりとのこと。手直しというか、完全にやり直しですが、そのためにウチに回ってきた「訳ありさん」です。


ヒールとボディの間をよく見ると0.6〜0.7mmほど隙間ができています。

調弦しても弦の張力で隙間が広がりませんので、ネックリセット時にすでにこの状態で接着された可能性が高いです。


センターも少しズレていますね。

いずれにしてもこのリセットではウチでは納品できません。

 


ヒールキャップ付近から隙間がありますね。左の方は塗装が傷んじゃってます。


よく見ると指板とネックにも隙間が空いています。木工精度が悪い状態で力ずくで組み込んだからでしょうか。


こちら側はボンドで隙間を埋めようとしたことが何となく分かります。


木工精度が悪いのでボンドが熱で軟化しちゃえば楽勝で外せます。


恒例の、、パシャリ。


隙間がなくなるよう、指板がネックから剥がれないようあれやこれやと、、写真撮り忘れて組み込み完了です。


隙間がなくなっています。


もちろんこっち側も、問題なし。ヒール部の塗装の剥げや塗膜割れもラッカーをうまく使って綺麗になりました。


おそらく前回すり合わせされてるのでフレット精度はあまり問題ありませんでした。


ネックバインディングに細かい傷や汚れが散見してたので綺麗にしました。


サドルの出しろも良い感じですね。


ストラップピンを戻して完了です。

ヒール周りも綺麗に修正できています♪


 

前回ネックリセットをした人をここで責めるつもりはありませんが、こうして他の工房の元へ再度出されて手直しされてしまうというのは「悔しい」と自分だったら思います。

ちょっとした隙間だし、ボンドでガッチリ接着されていますので、とりあえずは演奏性も問題ないし、もしかしたら気がつかない、そもそも気にしない人も中にはいるかもしれません。クレーム来なかったらラッキー!みたいな考えで納品したのかもしれません。

でもそれではダメです。

自分が修理したギターがいつ、どこで、どんな人に見られても恥ずかしくないと思える仕事をしなければなりません。これは師匠の皆川がいつも言うことですので当工房のポリシーの一つと言えます。

どんなにやり慣れた作業でも手を抜かず、毎度しっかり向き合い続ければ、その度に新しい気づきや学びがあるものです。そしてその積み重ねがスキルアップと実績、そして信頼に繋がると思うのです。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

ネックリセット / Martin D-28


スタッフの山口です。

今回もMartin D-28のネックリセット、今まで何回やってきたか分からないこの組み合わせ。特にD-28のネックが狂いやすいということではなく、絶対数が多いというだけです。


サドルも限界値に達しています。

ここまで低いとテンションが弱く、ペチペチしたサウンドになりやすいです。

幸い、ブリッジは削られていないですね。薄く削って弦高を無理やり下げているものも少なくありません。


6弦側は3mm以内です。


1弦側は2mmを上回っています。弾きやすいのは2mm以内というのが相場です。


いつものように15フレットを抜きます。マーカーでマーキングしているのは戻すときにどっちが1弦側だったっけ?とならないように。


ダブテイルジョイント内部を温めるための穴を開けます。


温めている最中の画像はすっ飛ばして記念撮影。


指板とトップも綺麗に剥がれてくれました♪


ジグでしっかり固定してヒール部分の余計な接着剤を取り除いたり調整をします。


左右が大きく傾かないようにヒールをサンドペーパーで削っていきます。


いい仕込み角度になったらいざ接着。


開けた穴も綺麗に埋木できました♪


埋め跡、よーく見たら分かりますか?

エボニーは自分でも分からないほどに綺麗に埋木できます。


サドルの出シロがいい高さになりましたね!

これでいいテンション感で本来のハリのあるサウンドが蘇ります。


6弦側も2.5mm以内、


1弦側の弦高もいい感じですね!


最後はヘッドも例外なく綺麗にワックスがけ♪

このヘッドストック形状は元祖の特権ですね!シンプルイズベスト!

Martin社が当時から奇抜なヘッド形状だったら、果たしてそれがスタンダードになっていたのでしょうか。。


貫禄の記念撮影。

自分も普段D-28をメインで使っていますが、何年使っていてもネックリセットが必要になったりネックが反ったりということはありません。ロッド調整すらほとんどしたことがありませんので実に安定していると言えます。それはきっと普段は弦をユルユルに緩めているから。

チューニングを毎回するのは確かに面倒ですが、師匠皆川の言う通りに弾かない時は弦をちゃんと緩めているので、最近は自分のギターをネックリセットすることは生きているうちはないだろうと思っています。

今回も最後までありがとうございましたm(_ _)m

 

ネックリセット&ナット交換 YAMAHA 12弦ギター


スタッフの山口です。

来ました、12弦ギター!しかもスロテッドヘッド、、。手間がかかるリペアマン泣かせのヤツです。

今回はネックリセットとナット交換のご用命です。


ヒール部分に圧力がかかっていたのかボディとネックの境目の塗装がボロボロですね。せっかくネックを外しますのでここも修正できたらと思います。


このアングルは伝わりにくいんですが、ネック順反りと元起きが平行して発生中です。


ネックの順反りだけでは中々この弦高にはならないですね。6弦側は6mm超えてる、、


1弦側も5mm。こりゃあ弾けたもんじゃないです。


ここまでの症状は中々ないので色々なパターンで状態を観察。1フレットにスケールを当てます。


もう片方を最終フレット置くと12フレットはこんなに隙間が空きます。

なんとかしてあげましょう!

 


基本的にはMartinに近いダブテイルジョイントですのでいつものように進めていきます。


YAMAHAは継いでヒールを作っていることが多いのでネックリセットの際はダブテイルの熱でその接合部の接着剤が一緒に軟化し、そこが開いたり折れたりすることもしばしば。それを想定しながら進めていくしかありません。


なんとか無事に外れてくれました♪


角度を正常にするためにヒールを少しずつ削っていきます。ガザガザだった塗装面の半分以上は削り落とされましたが、まだ少しガザガザが残っているのでそこは修正します。


もちろんこちらのガザガザも修正しましょう。

 


なんとなく綺麗になっているのがわかると思います。


センターはズレは、、、


ないですね!


いざ組み込みです。


こちらはYAMAHAの高級機ということもあり文句なしの真っ黒エボニー、穴も綺麗に埋まります。


実はここからが今回の本番です。

12弦ギターと6弦ギターのリペアで一番大きく手間がかかるのがコレ、ナット交換なのです。料金が少し高くなるのはご理解ください。


通常はフレット交換に伴ってナットを新調しますが、今回はナット溝をオーナーの好みにしたいとのこと。


主弦と副弦の感覚を近づけてほしいとのこと。写真を見て何となく分かりますか?右が作成中のナットで左が元のナットです。


こんな感じになりました。


ナット、サドル、フレット。アコギは消耗品であるこれらのパーツが新しいと見栄えがいいと個人的には思います。


ネックリセットしたのでもちろんサドルも新調します。


 この出しろで6弦側2.0mm、1弦側は1.4mm程。まだ若干順反りしてるのでこのくらいが弾きやすいかと思います。


ヒールはいい感じに綺麗になりましたね!


何となく最初より凛々しく見えます。

 


ジャパンヴィンテージ最高峰の貫禄がありますね!


当時いくらで今はどのくらいするのでしょうか。


ハカランダに挟まれた高級グレードのフレイムメープルがお洒落ですね!


ファンには堪らないであろうサインもしっかりと残っています。


 

このYAMAHAのヒールキャップは構造的にバインディングの領域まで達しているのでとても手間がかかりました。Martinなどはヒールと一緒にキャップも削れてくれるので自然といい感じになりますが、このデザインだとヒールキャップを一度取り外して、ネック角度を修正後、それに合わせてキャップもリサイズ加工して綺麗に元に戻さなくてはなりません。

きっとバックのセンターとヒールキャップが同じフレームメープルで繋がっている方がデザイン的にカッコいいということなんだと思いますが、であればバックセンターのメープルをバインディング領域まで伸ばせばよかったのに、、。

後世に残すべき楽器だからこそ、何十年後かに必ず訪れる修理やメンテナンスのことをしっかりと考えて欲しい!という想いが何となく愚痴っぽくなってしまいました。もちろん言わずもがな、サウンドもナイスギターでした♪

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

ネックリセット / Epiphone FT-120 Excellente 1960s


スタッフの山口です。

今回もネックリセットですがかなり珍しいお宝ギターの登場です。

EpiphoneのExcellente、FT-120。現行のリイシューも売ってますが、所謂当時の本物は僕も初めて見ました。


アジャスタブルサドルも限界近く下げてますが弦高は高いですね。

皆川ギター工房の出番です。


いつも通り進めていきます。ネックポケットを温めたら指板とトップの間を切り離し、、


ヒートスティックで温めて、、簡単に外れたみたいに見えますが、Gibson系はやはり苦労します。


Gibson系のハカランダは本当に貴重です。


ネックは7pcs。


テープである程度の目安まで印をつけます。ヒールを1mm削るだけでも角度はかなり変わります。


センターズレに注意しながら、なるべく均等な力でヒールを削ります。


塗装がチップしすぎていないかチェックもします。


チップしていたらラッカーを盛って修正します。


今回は組み込む前に記念撮影。


一発勝負のつもりで迅速に組みます。


しっかりと最後までダブテイルが接着できているかの確認もします。何度かシミュレーションをしているので問題なし。


ネックがついたらダブテイルに通じる指板の穴を埋めます。


今回フレットはすり合わせのみ。

 


無事にリセット完了です。


サドルの出方もいい感じに。


弦高もいい感じ。


1弦側もヨシ。


ヒールも無事です。


反対側もOK。


カスタムセルにエボニー指板、サイドバックはハカランダです。


ネックもキルトメイプルが贅沢に使われていますね。スゴイ!


ヘッドストックは工場で一番大きな白蝶貝をドカッと入れました!みたいな感じです笑


 

当時は兄貴分のGibsonを凌駕してしまうような高級仕様で話題になったというこのモデル。

ライバル社であったエピフォンをギブソンが買収した当時は、材やパーツなどはほとんど同じものが使われています。ここからは僕の想像ですが、、当時Gibsonに買収され、Gibson工場に泣く泣く赴任してきた元Epiphoneの職人たちが「Gibsonより良い物を作ってやるんだ!」という気持ちで作られたような雰囲気がこのギターには漂っています。60年代でハカランダの枯渇問題も出てきた頃、Epiphone出身者がGibsonを超える渾身のハカランダの高級機を出す、まさにエクセレントなプロダクトだったのではないでしょうか。ちなみにExcellenteのスペル、最後にeがつくのですが、調べたらフランス語になり、意味は同じで「素晴らしい」とのこと。なぜフランス語のスペルなのかは分かりませんが何か意味があるのかな。

今回も最後までありがとうございました。

 

ネックリセット Gibson / Southern Jumbo(1952)


スタッフの山口です。

ネックリセットばかりで申し訳ないのですが、今回も例外なくネックリセットです。次回もネックリセットかもしれません。色んなギターのバリエーションで楽しんでもらえれば幸いです。


弦高チェック。

6弦12フレットで3.3mmといったところでしょうか。


1弦12フレットで2.5mmほど。普通の人なら十中八九弾きづらい弦高です。

一般的に「弾きやすく音も良い」と言われる弦高は2.4mm-1.7mmの±0.2mm程度だと思います。

それ以上だと弾きづらく、それ以下だと弦高が低すぎて音がペタペタする傾向があります。


サドルもこんな感じなのでネックリセットを決断して正解だと思います。

50年代初頭は40年代と似たブリッジですね、この感じ。


Gibsonはセットネック後の塗装なので余計なチップをしないように切り込みを入れておきます。Martinは塗装後の組み込みなのでこの作業は不要です。メーカーによって違うのもまた面白いですね。


いつものようにダブテイルジョイントを温めてネックを外します。


約2時間ほどで外れました。Gibsonはシリアルナンバーにしても仕様にしてもいい加減な印象を持たれがちですが、決してそんなことはありません。


ネックを外して恒例の記念撮影。

指板やボディも無事で何より。ネックリセットはネックを外す工程が一番リスクが高いのです。


ネック角度を適正に直し終え、いざ接着です。

そういえば1952年当時もロッドエンドはまだここなんですね。

 


接着後はしばらく寝かせておきましょう。

ボルトやビスで組み込まれるエレキギターと比べると、アコースティックギターはほとんどが接着剤で組まれていて接着の待ち時間が多いので修理に時間がどうしてもかかってしまいます。


数日後、ダブテイルスポットに繋がるドリル穴を埋めてフレットの擦り合わせ。

ネックリセット後はフレット交換か擦り合わせを行います。


ナットの溝が深かったので今回は底上げで対応。写真をよく見ると分かります。

次回フレット交換の際は交換になると思います。コストをかければもちろん交換も可能です。


サドルのでしろが復活。

んー、ちょっと高めに見えますが、、


6弦12フレットで2.5mm、


1弦12フレットで1.8mmと若干高めなので、調整幅や近々フレット交換をすることを考えれば許容範囲です。


ヒールも綺麗に仕上がったのではないかと思います。


反対側も。ちなみに塗装修正は無し。

塗装修正が必要な場合はあと1週間以上はかかります。


ヴィンテージギターを主に扱うショップ在庫が僕の主な担当なので、GibsonやMartinのヴィンテージギターをたくさん修理させていただきとても光栄です。が、そんな高価なギターを派手に壊してしまって絶望する、という悪夢にうなされることがよくあります。

ハッと目覚めて「夢で良かったー」と脂汗を拭きながら安心しますが、それが自分への良い戒めにもなっていますので、職業病と思って付き合っていくしかないと思う今日この頃です。

今回も最後までありがとうございました。

 

ネックリセット / Gibson J-45


スタッフの山口です。

今回は訳ありのネックリセットです。1950年代のGibson J-45、昔のGibsonは色んな「訳あり」があるのです。

トップが凹み、ネックが元起きしているのが上の写真でも分かると思います。写真で分かるというのは相当角度が狂っていると言えます。


今回の訳ありポイント。

この時点で「あ、こりゃあ、、やってんな、、。」

という嫌な予感がしています。


ひとまずいつも通りの手順でネック外しに取りかかりましょう。


指板を温めて、、


トップから切り離します。


Gibsonは1時間以上の長期戦になることが多いです。


意外とあっさりとネックが外れましたが違和感満載です。トップ板が指板とダブテイルの間に食い込んでいます。これではジグで力をかけてもネックは外れないはずです。


こんな感じですが、途中で気づいて指板を剥がすか迷いました。ですが前回のリセット時に割れていたのか指板に沿ってトップが浮いてネックが素直に外れたのでそのまま続行するのが最善と判断しました。


ひとまず再度接着してあげましょう。

 


その間に本来のダブテイルジョイントにするためにネック側を修正します。指板に3mmほど足してありましたがグズグズでしたので一旦取り除きましょう。


トップが食い込んでいたところをマホガニーで埋めます。


これでOK。


取り除いた分3mm厚足します。

あとはボディ側のトップ板を溝に合わせて切れば本来のダブテイルジョイントに修正できます。


説明が下手なので分かりづらいですが、、写真を見てもらえればなんとなく分かりますかね汗

あとは黒く塗装します。

 


ネックリセットでは何度も組んでは外して微調整を繰り返します。


角度をつけた分、指板のハイフレットが下がることが判明したので下駄を履かせます。


ボディ側、ダブテイルジョイント部分のトップ板も切って取り除いてあります。


調整を繰り返して少しずついい感じに。


センターズレも問題なし。


この写真のように指板が極厚になっているGibsonは今回と同じ訳ありの仕込みの可能性大です。


今回フレットはすり合わせでOK。


最後にサドル溝修正。今回のネックリセットによってサドルの高さが復活しますのでそれにしては溝が浅すぎるためです。


いい感じになりました♪


以前、師匠の皆川も僕もJ-200でこのトップ板を挟み込んだジョイントに遭遇しています。ヒールとボディの帳尻が合っていますので生産時にGibsonが一時期だけ行っていたようです。

理由は分かりませんが、おそらくなんらかの理由で工程の変更を試み、ネックとボディを組んでからトップ板を貼り、最後に指板を貼り合わせたのだと思います。当時の職人さんたちの中の誰かが「あれ?これじゃあ修理の時にネック外せないしヤバくね?」みたいな一言があって即時元通りに戻したのではないかと想像できます。

こういうミステリーがGibsonには歴史に散りばめられていて、それがまたこのメーカーの面白いところでもあり魅力だったりします。

今回も最後までありがとうございました。

指板貼り直し&ネックリセット / Martin 00-18 (50s)


スタッフの山口です。

今回は僕の大好きな50年代Martin、、の中でも特に大好きな00−18の修理です。


元々ネックリセットの依頼で工房にやってきましたが、見積もりの際に指板がフカフカして浮いていることが判明。写真では分かりづらいでしょうか。


分かりますかね。

どうせネックを外すなら指板も剥がして修理してあげたほうが好都合。手間も色々と省けますので依頼主と相談し指板を貼り直すことになりました。


こういう隙間はサウンドにも影響しますが何より見た目が良くありません。たまに隙間から0.2mm程の謎の小虫が出てきたりします。

「君、その中に何年いたんだい?」と聞いてしまいます。


指板を剥がす前に一部のフレットを抜いてダボを打ちます。指板を戻す際に極力元通りの位置で貼り合わせてあげたいのです。


ネックアイロンやハロゲンライトで指板とネックの接着面を温めます。ナイフを少しずつ入れて、また温めての繰り返し。

この時逆目にナイフを入れてしまうとグズグズになってしまうので要注意です。


かなり順調に、綺麗に剥がせたのではないでしょうか。


露出したネックポケットも温めてネックも外します。指板貼り直しとネックリセットを同時に行う大きなメリットがここですね!


ナットが残って珍しい光景だったので記念撮影。


いわゆるTバーロッドと言われるタイプです。Tバーロッドは質量と強度、サウンド面でバランスが取れたロッドだと思います。スクエアロッドや新しいアジャストロッドは若干重たく、戦前戦中のエボニーロッドは軽いです。

しっかりとネックに密着させて一晩おきます。


ネックと指板の接地面を整えます。指板が薄い時はここで指板の厚みを足してあげることもしばしば。


ガチガチに接着。念の為、このまましばらく寝かせておきましょう。


 

次回はネックの塗装修正〜リフレットを見ていただきます。

オールドの00−18、コイツの修理はかれこれ10本以上やらせてもらってますが、なにしろどれもハズレ個体のないナイスギター。あくまでも個人の感想ですが、OOサイズがマホガニーサイドバックと一番相性が良いのではないか、と考えています。00サイズまではローズウッドではなくマホガニーサイドバックが多いのはMartin社がそれを大昔から知っているからなのではないでしょうか。

今僕が一番欲しいギターです。

予算が我が家の大蔵省(古い表現 笑)から出る望みは薄いです(/ _ ; )。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

ネックリセット、バインディング剥がれ / Martin OOO-45




① 45グレードでもこの頃(現在は無いと信じている)のネックジョイントのシムは紙切れです。

②③ ④バック側のバインディング剥がれ、The Martin現象と言いましょうか。

④ このギターの場合は2本のバインディングでボトムで継いであります。

通常は1本のバインディングで巻いてあるのですが、この象牙柄のバインディングは長いものが無いのかもしれません。

 


 


 


 

リフレットしましたのでナットも交換してあります。

私のブログの画像の配置はスマホで見ますと私の予期しない配置になってしまっていますが、PCで見て頂けると前後の画像が全てではありませんが、なるべく比較し易いい位置に置いてあります。

よろしければ過去のブログも見て頂ければ、比較し易く画像を配置してあります。

 


 


 


 

ネック角度が付いて14フレット以降が下がる為、指板エンド部に向かって厚くなる様に調整してあります。

指板に厚みを付けた後、バインディングも付けなければなりませんので多少面倒です。

Gibson L-1  ←よろしければご覧ください。

 

 

必ずこのサドルの画像の際に言い訳が入ります。

もうちょっと低い方がカッコいいのに。

なのですが、低く狙って角度を決めて、リセットしてリフレットも終わり、サドルは低いけど低過ぎになってしまった場合は、やり直しです。

ここまでやってもう一回ネックを外さなければならなくなり、角度調整しなければならず、そうなるとまた他の部分も変わるので各々調整が必要になります。

「あ、ヤリナオシダ…」

その時ってね、すごくガックリするんです。

また、あーならない様に少し高目になった場合も、思いの外サドルを削らなければならない場合もどっち転んでも良い程度に角度を決めます。

なので、サドルが低くてカッコいい時はたまたま!

いや、たまたまでは無くてちゃんと考えて仕事してますが、なかなか思い通りにはいかないと言う事でございます。

 

ロッド交換、ネックリセット&フレット交換 Gibson / J-50 Double P/G


スタッフの山口です。先週に引き続き、、J-50のダブルピックガードを。

指板を剥がしたところからスタート。今回はロッド交換→ネックリセット→フレット交換のトリプルコンボです。

 


15フレット下にあるこの「隙間」をいつも狙って穴を開けています。今回は指板が剥がれていますのでこの隙間(ネックポケット)に直接ヒートスティックを差し込みましょう。


こんな感じ。

なんか、、パッと見だと養生のタオルがネックを引き抜こうとする人間の手に見えませんか?


この写真も両手でネックを引き抜いているみたいに見えますね!

無事に抜けました♪


指板、ネック、ボディがバラバラになったところで記念撮影。


指板が無いネックは強度が弱いのでこの古い癒着したロッドを抜くのは結構神経使います。


埋木をあの手この手で除去するのも結構大変です。


この作った木片、、、


どこについたかわかりますか?

 


新しいロッドを仕込んだら指板とネックを合わせます。


ネック角度が修正できたら塗装が禿げたネックを再塗装します。

指板を貼り直したので「ついで」ということですね!


表はマスキングします。


いい感じにラッカー塗装できました。


ささくれたヒールも綺麗になりました。


いざ接着してギターの形に戻してあげましょう。


最後はフレット交換。インレイがところどころ崩壊していましたので新しく入れてあげます。


綺麗な指板は個人的には大好きですが、ヴィンテージっぽさは半減します。いい感じに弾き込まれた指板の時は「指板の雰囲気を保ったまま指板修正してください」という難易度の高い要求をされることもあります。


フレットが高さを取り戻しましたのでそれに合わせてナットを新調します。

 


いい感じ。


ロッド頭もいい感じです。


あまりお目にかかれないペグもいい感じ。


 

ピックガードが片方ないですが、、全体的にいい感じです。

ケースの蓋を開けた瞬間に「いい感じ!」と思えるルックスのギターはたくさんありますが、先日2000年頃の Martin OOO-28ECのお客様がいらっしゃって、とても「いい感じ!」のルックスでした。ECは元々トップにエイジドカラーで着色?されていますが、まるで50年代頃のルックスのようなリアルさで迫力がありました。聞くと新品で買ってずっとメインで弾いているとのこと。

弾き込まれたギターのルックスはやはり迫力があってかっこいいですね。そしてそんなルックスのギターはもちろん音も素敵です。

僕の私物のギターはまだまだ幼いルックスなので迫力が出るようにがんばります。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

 

ネックリセット&サドル溝修正 / Martin D-28 1962


スタッフの山口です。

今回も名器を任せて頂きありがとうございます。みんな大好き、Martin D-28の1962年製。コンディションに関係なく即売れ必死のご時世ですが、弦高が3.5mm近くありますのでまともなショップなら流石にこのままでは販売できません。


サドルの出シロというよりはロングサドルとサドル溝が残念なことになっていますのでここもカッコよく仕上げようと思います。


いつも通り15フレットを抜いて、


ダブテイルジョイントのスポット目掛けて穴を開けます。


トップの塗装を痛めないように、指板だけを温めるために養生して、


伝統的な温め方で指板とトップを離します。LEDは使えません。


いざネックを外していきます。


Martinはホントにお行儀良く外れてくれることが多いです。


恒例の記念写真。


シムが仕込まれているのでネックリセット履歴があると思われます。


古い接着剤が残っていては木工精度を高められませんので綺麗に除去していきましょう。


ん?溝が少し右寄りですね。

実はよくあることです。


綺麗にしたら、


ネック角度を適正に直してあげましょう。ノミでざっくりやっちゃう腕のいい職人さんもいますが自分は地道に擦ります。時間もその分かかりますが、削り過ぎるリスクを最小限にし、ヒールとボディの民着度は見栄えに大きく関わってくるので。


仕込む前のシム調整、ネックリセットにおいてとても繊細で手間のかかる作業の一つです。


シュミレーションを繰り返して、いざ参ります。


木工精度が高いと密着させてからの接着速度はとても早いので、真剣勝負。


シュミレーション通り、センターズレも問題なし。


元々のナットが悪いと騙されてしまいますが、ちゃんとしたナットに交換してしっかりとセンターが合うのが正しいです。


ネックがついたら残念なブリッジ溝を修正します。


エボニーは埋木もビシっと決まって跡が気になりません。


こんな感じに。


スケールがズレているヴィンテージギターもザラにありますので、元の溝位置は当てにせず、正しい弦長を測ります。


溝切り。これも意外と難易度が高いと僕が思う作業です。緊張します。


どうでしょうか。見違えるほどカッコよくなりました!サドルの高さもベスト!


今回は省きましたがブリッジプレートも修理しました。


弦間のバラツキは今回の修理だけでは修正できませんがセンターがズレてないのでOK。


指板とトップ、


ヒールのこちら側、


こっちも、


バック側もピッタリと合っています。


ハカランダらしい木目です。


こちらも、


こちらもNICE!


ヘッドストックに違和感、、。こんな細かったっけ。ペグはオリジナルでこれまたカッコいい!


これ1本持っていれば他はなくても大丈夫。そんなナイスギターを後世に残す仕事を任せていただいて光栄です。

感謝。

今回も最後までありがとうございました。