今回、補強も兼ねた大きいブリッジプレートに交換したことで再発はしないのではないかと思います。破損していた状態で工房にやってきたので元の音は分かりませんが、とてもいい音を奏でてくれました♫
1930年前後に作られた90歳くらいのギターですが、これでまだまだ現役続行です。
後半は早足でしたがネックリセットも完了。
ブログでは1日で終わった修理のように見えるかもしれませんが、接着の工程を何度も挟んだりするので実際は数日〜数週間、内容によっては1年単位でお預かりする場合もあります。納期に追われて急いで修理してもろくなことがありませんので、お預かりする期間が長くなってしまってもご理解いただけるとありがたいです。
自分はせっかちな性格なので、セカセカと熱くなって作業していると「急いでやっても失敗するよ、急がず慎重に。」と師匠皆川氏の一言。ふと我に返りクールダウンします。
ブリッジの剥がれた隙間に接着剤を差し込んで接着する場合も無くは無いですが、その場合は圧着せずに充填接着します。
何故、圧着しないかと申しますと、ブリッジが剥がれている場合、接着面は反っている事がほとんどなのでクランプしても密着しないのです。
無理にクランプしてくっ付けてもブリッジが反っていますので、いずれ剥がれてきます。
剥がさず部分接着するならば、あくまで簡易的な修理と考え、圧着はせず充填接着します。
ブリッジが反っていなくて隙間が出来ている場合もありますが、接着剤はスーパーグルーで、その量も足りていない場合に反らずに剥がれている事が多いように感じます。
弦を緩める理由はネックへの負担だけでは無く、ブリッジ、トップ板、等いろんなところに弊害が出る事を予防する為です。
ブリッジが剥がれています。
見ればわかります。
手工品のギターではあまりこういった剥がれ方は見ない気がしますが、メーカー品や量産型のギターはこのように剥がれてしまっているものをよく見ます。
原因は一つでは無く、いくつかあります。
これの場合は、アラルダイトのようなとても強力なエポキシで接着され、接着部は剥がれていませんが、接着されている塗装の下から剥がれています。
タイトボンドやニカワ等は木部を出して接着面を調整しなければ接着剤の性能を発揮できませんが、エポキシの場合塗装面であっても強く、硬化後も体積がほとんど変わらないので多少凹凸があっても隙間なく、強力に接着する事が出来ます。
その為にこのように剥がれてしまう事もあります。
このように一気に剥がれてしまう原因としては他に、単純に接着剤が弱い為、接着剤が足りてない為、接着面の処理不良の為、等がすぐに思いつきます。
不備の無い作業工程で選択が間違えてない接着剤を使っていても構造上、剥がれてしまう事はある程度仕方がない部分もあります。
ブリッジも木で出来ていますので、張力のかかる方向へ木が反り上がり、その分隙間が出来る事があります。
防ぐ手立てとしては、弦は必ず緩める事。
・チューニングされたまま、もしくは弦は少ししか緩めていない…この状態にしない事。
ブリッジだけでは無くネック、トップ等、関わる全てに何かしらの影響が出るので、弾かなければ弦は必ずしっかり緩めてください。
経年劣化でブリッジは歪んで、ビス止め部分は折れてしまっています。
作り直したブリッジを貼り直す際には、塗装を剥がして木地を出します。
ギブソンの60年代のプラスティックブリッジは、4か所ビスで止まっているだけ。
ブリッジを貼り直す際の注意点としては、先ずは上記の接着面の調整。
その前に剥がす際には、すごく気を付けて剥がす事。
逆目に向かってヘラを入れてしまうとブリッジを剥がさずブリッジの面積を超えてトップの木を剥がしてしまいかねません。
貼る位置は基本的には同じ場所へ貼り直しますが、ズレた位置で長期間落ち着いていた物はその位置が元の位置と勘違いしてしまう場合があるので注意します。
もっと正しい位置を決めるにはピッチを図り直し、サドルの位置を合せてセンターも修正する事が出来れば、位置としては正しいですが、接着面の跡が出てしまい見た目が悪くなりますので、やはり基本は元の位置。
貼り直した後、微妙にずれても見た目や、他に不具合や問題が無ければ良いのですが、アジャスタブルブリッジ(Gibson)の場合は、微妙なズレも問題になりますので、やはりいずれにしても元の位置にビタッと決める事が求められます。
リフレットして、ピックアップを付けます。
完全にご自身が使いやすい、好みの状態を想像しての修理依頼、という感じです。
個人的好みではサドルは高く出ていない方がカッコよく思っていますので、通常はもうちょっと低くなる様に角度を直すのですが、サドル高目がよろしければ言って頂いて全然かまいません。
但し、たまに見る現行品ですごくサドルが出てる、イヤミの出っ歯(アニメおそ松くん)みたいなのは勘弁してください。
そのリクエストは、他の修理屋さんでお願いいたします。
修理画像を過去にどこかで見た記憶がありますので、やって頂ける所があるはずです。
今回はサドルが高目になるように狙って調整しましたが、最終的に弦を張って調整してどちらに転んでも良いようにネック角度を直しますので、結果いつもより高目なサドルになる場合もあります。
お世話になっているギターショップで、当方以外にも修理屋が入っているのですが、そちらでネックリセットしたMartin が弦を緩めたにも関わらず半年でまたネックが起き上がってしまった、という事らしいのですが・・・
その修理屋さんは良心的ですから、それは何かあるかもしれない、と無償でやり直すらしいです。
仮にうちの仕事でしたら、うちももめるのは嫌ですから、渋々 同じ様にしていると思いますが、多分その人は緩めたつもりでちょこっとペグを動かした程度なのだと思います。
弦を緩めておけば、ネック角度が狂う原因は無いのですから。
皆さん、いろんな考えがあります。
ペグを1回転緩める、半音下げる、緩めてはいけない、等々、緩めないよりも良いですし楽器によってはどれかが当てはまるかもしれませんが、アコースティックギター(ボディが空洞)なら弦はしっかり緩めましょう。
経験上、当方ではこのように言っております。
上の画像はブリッジを貼り直す為に剥がしたところです。
まず、はがす為にブリッジを温めました。
そしてオクターブのピッチを直す為にサドルの溝の位置を直した跡が浮き上がりました。
さらに新しいサドルの位置とピンの位置が近すぎてしまう元の穴の跡も浮き上がりました。
ブリッジがしっかり温まったら隙間からへらを差し込んではがします。
…何故か剥がれません、何か引っ掛かります。
あーもしや!やはり穴の位置をずらす為に埋めた丸棒がブリッジプレートまで貫いて埋めてあります。
6ヶ所柱が立っていたら外れる訳ないのです。
どうやって外すか、トップ側にキズは付けたくないのでブリッジは壊して新しく作り直すか、そうすると料金が大分上がってしまうし…。
どうにか薄いノコで切り取れないかと、0.1mmのノコギリをネットで見つけて、そのノコギリの柄を外して切り取った所です。
ここまで来るのに、0.1mmは見つけたけど、トップに傷つけずにとれるのか、やはりブリッジは壊した方が良いか…考えが行ったり来たりして、ここまでたどり着いた所が上の画像。
ブリッジを貼り直したら、ネックリセットをします。
ネックリセットの方が仕事としては大仕事なのですが、ブリッジ仕事が今回は珍しかったので、修理実績のカテゴリーはブリッジ仕事に入れました。
どのブランドもダブテールジョイントと言うわけではありませんので、ネックを外す際には分からないブランド等ではネックジョイントがどのようなジョイント方法なのか知る必要があります。
そしてダブテールジョイントだからと言っていつものように外れるのかと言う不安もあります。
このブリッジの様に将来の事を考えずに、エポキシでジョイントをみっちり充填してあったら…。
以前には、ダブテールと溝の底の隙間にタイトボンドがたっぷりと入っていたことがあります、そこはそのまま隙間で良い部分なのですが、タイトボンドは硬化して体積が縮みますので、そのジョイントの底面部は接着されずに済んでました。
これがエポキシだとしたら、大変なのです。
本当に大変で、昔、Guildのギターで当たっちゃった事があります。
新しいものは分かりませんが、昔のOvation のカマンバーが入っていないネックのジョイントがそうです。
ジョイントが緩いので、エポキシ系の接着剤でガッチガチに固めてあります。
個人的好みなのだと思いますが、サドルがすごく出ているのは、カッコ悪くて嫌なのです。
サドルを高くしておかないと、将来弦高が上がった時に下げられなくなってしまう、と心配する方もいますがこれ位あれば十分ですし、ちゃんと弦を緩めておけばまたネックの角度が狂ってしまう事はありません。
新品ギターのサドルがやたら高くなるようなネック角度は、弦を緩める習慣の無い人の場合、ネック角度が狂っていくごとに弦高を下げられるよう見越してのセッティングなのでは、と思っています。