指板(フィンガーボード)

指板修正 & ステンレスフレット交換 / Futra エレキギター


スタッフの山口です。

今回は昨今話題のブランド、Futraのエレキのフレット交換です。ニッケルシルバーからステンレスにしたい、指板Rを9.5inchから12inchに緩やかにしたい、との理由で交換です。通常フレット交換は「すり減って背が低くなっているから」という理由で依頼を受けることがほとんどですがこういったイレギュラーな理由でももちろんOKです。


ハンダゴテで温めながら指板の溝周りがチップしないようフレットを抜いていきます。温める、というのはギター修理の基本動作の一つと言えます。

ギターも身体も冷やすより温めたほうが良いのです。最近急に寒くなってきたので身体もギターたちも気にかけてあげましょう。


無事に綺麗に抜けましたので指板修正に移ります。今回の大きな目的の一つ、指板Rの変更をします。


普段はセットネックのアコギのリフレットが多いのでボディが無い状態での作業は色々勝手が違ってきます。


ひとまず指板のRを緩やかにするためにマスキング。体制の関係上、真っ直ぐを意識していても左右がブレてしまうので目印代わりのマスキングです。今回はこの状態で擦ってみて自分の癖と相談しながら進めます。


ある程度いい感じになリました。削っても色が変わらないので着色のしていない、色の濃い良い紫檀(ローズウッド)ですね!

老舗メーカーでも着色していることはザラにあります。


Rを最後整えるのは専用のサンディングブロック。「これがあるなら最初からこれ使えば良いじゃん!」と思われると思いますが、初めからこれで削っていくと左右の力のかかり具合によっては端が擦れすぎちゃったりして一向に理想のRにならなかったり余計に削り過ぎちゃうことが懸念されます。どんな道具にも良い点と悪い点、利点と欠点があることが多いのです。

 


後ろから光を当てても漏れてこないので良い感じです。

誰がなんと言おうと完璧な12インチRです。異論は認めません。


9.5インチRと比べるとやはりかなりの違いがあることが分かります。

ギターは最も感覚神経が集まっている指先で演奏する楽器ですので演奏者は0.1mm単位でもその感覚の違いを感じ取ることができちゃいます。なのでセットアップする側は必死に0.1mm単位で闘う必要があるのです。


クレイドットかと思いきやメイプル材のドットですね。


レモンオイルを塗りこんでいざフレット打ちに移ります。


ステンレスフレットはニッケルより硬いのでフレット打ちも手間がかかります。ステンレスの方が料金が高いのはフレット材の原価というよりも手間がかかるためと言えますね!

写真はそれっぽく玄能でコンコンやっている感じですが、せっかくボディがないのでほとんどフレットプレスでやった気がします。


エッジを切り落として最小限すり合わせます。


フレット処理の詳しい工程は今回は省きます。


良い感じに仕上がりました♪


 

R出しのできるサンディングブロックについて道具の利点と欠点のことを書きましたが、、自分のこれまでの経験から得た感覚、道具の精密さと性能、対角にあるこの2つのバランスをうまくとって作業することで仕上がりに大きな差が生まれると思います。

どちらかに偏ってはあまり良い結果が得られないことが多く、その道具の良いところだけを利用して、欠点を自分の人間の感覚で補うのがベストに繋がるのではないかと思います。これは師匠の仕事から学んだことの1つです。

道具や機械の性能を100%信じてそれに任せるのではなく、そこに人間の知恵と感覚をプラスしてコントロールすればもっと良いものが生まれると思うのです。

けれど限りなく100%近く信じられる道具を見つけたときは、とっても嬉しくてテンションが爆上がりしちゃいますね。

今回も最後までありがとうございました。

 

指板貼り直し&ネックリセット / Martin 00-18 (50s)


スタッフの山口です。

今回は僕の大好きな50年代Martin、、の中でも特に大好きな00−18の修理です。


元々ネックリセットの依頼で工房にやってきましたが、見積もりの際に指板がフカフカして浮いていることが判明。写真では分かりづらいでしょうか。


分かりますかね。

どうせネックを外すなら指板も剥がして修理してあげたほうが好都合。手間も色々と省けますので依頼主と相談し指板を貼り直すことになりました。


こういう隙間はサウンドにも影響しますが何より見た目が良くありません。たまに隙間から0.2mm程の謎の小虫が出てきたりします。

「君、その中に何年いたんだい?」と聞いてしまいます。


指板を剥がす前に一部のフレットを抜いてダボを打ちます。指板を戻す際に極力元通りの位置で貼り合わせてあげたいのです。


ネックアイロンやハロゲンライトで指板とネックの接着面を温めます。ナイフを少しずつ入れて、また温めての繰り返し。

この時逆目にナイフを入れてしまうとグズグズになってしまうので要注意です。


かなり順調に、綺麗に剥がせたのではないでしょうか。


露出したネックポケットも温めてネックも外します。指板貼り直しとネックリセットを同時に行う大きなメリットがここですね!


ナットが残って珍しい光景だったので記念撮影。


いわゆるTバーロッドと言われるタイプです。Tバーロッドは質量と強度、サウンド面でバランスが取れたロッドだと思います。スクエアロッドや新しいアジャストロッドは若干重たく、戦前戦中のエボニーロッドは軽いです。

しっかりとネックに密着させて一晩おきます。


ネックと指板の接地面を整えます。指板が薄い時はここで指板の厚みを足してあげることもしばしば。


ガチガチに接着。念の為、このまましばらく寝かせておきましょう。


 

次回はネックの塗装修正〜リフレットを見ていただきます。

オールドの00−18、コイツの修理はかれこれ10本以上やらせてもらってますが、なにしろどれもハズレ個体のないナイスギター。あくまでも個人の感想ですが、OOサイズがマホガニーサイドバックと一番相性が良いのではないか、と考えています。00サイズまではローズウッドではなくマホガニーサイドバックが多いのはMartin社がそれを大昔から知っているからなのではないでしょうか。

今僕が一番欲しいギターです。

予算が我が家の大蔵省(古い表現 笑)から出る望みは薄いです(/ _ ; )。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

指板貼り直し / Ovation 1994-4

 

ネックに歪みがありますが、指板が剥がれている為です。

このような場合、剥がれ部分に接着剤を注入して部分的に直すか、一旦剥がして貼り直すか。

貼り直す修理が良いように思いますが、貼り直す場面はあまりありません。

①ネックの反りがそれほどでもなくアジャストロッドの聞き具合も悪く無い。

②指板がしっかり接着出来ている。

この条件があれば貼り直さなくてもしっかり修理出来ます。

 

 

カマンバー(Kaman bar)というアジャストロッド

ただ、②の条件はどうやってわかるのかと申しますと、経験しかありません。

そしてこのOvation はきれいに剥がせます。

②だった場合は、すごく頑張ってもあまりきれいに剥がせないんです。

Adamasのトップも貼り直す場合やカマンバー以外のネックリセット等もちゃんと取れるものと、すごく取り難いものがあります。

途中まで行ってやめちゃうのも最後まで頑張っちゃうのも始めてしまうと、どちらにしてもきれいに行かないので剥がそうなんて思っちゃダメなのです。

どうしても取らなければならない時は頑張るしかありませんが、そうでない場合は無理にやらない方が良いのです。

Ovationはニカワやタイトボンドで作られていない為、剥がれません。

 

 

 

では何故きれいに剥がせちゃうのかと申しますと、考えなくても分かります。

接着が弱いのでリセットするのがベターでございます。

接着剤はエポキシの類で、接着力が弱い原因は色々考えられますが、またいずれ。

 

アダマスのトップ修理の場合は修理前にチューニングして音のチェックが出来る状態でない事が多い為、修理後にどの程度良くなったかは分かりませんが、楽に剥がせてしまう物はやはり音にも影響してると想像できます。

 


指板は一旦


剥がしましたので、


指板面も調整して

新しいフレットを打ちます。

この時期のOvationのネックは、塗装が施されていないので仕上げが楽に済みます。

 


このヘッドの突板は何という素材か忘れましたが、傷が付くと直らないので、いつも以上に更に気を付けて。


トップ割れ修理はスーパーグルーでしっかり接着しますが、跡は目立ちます。


Ovationには90年代丸々携わりましたので、感慨深さを感じます。

 

ネックリセット / Martin 00-18


スタッフの山口です。

急激に寒くなってまさに冬。乾燥はアコースティックギターの天敵ですので加湿をお勧めします。


今回もヴィンテージギターのネックリセットです。いつも通り15フレット下のダブテイルジョイントポケットを温めます。


マーチンは本当に素直にネックが外れてくれます。ヴァイオリンのように長く使って欲しいからと、修理を前提として設計されている点だけでも好感がもてるメーカーです。


恒例の記念撮影。


ダブテイルジョイント周辺は古い接着剤や塵を綺麗に除去します。


それをしなければ良い接着ができません。

精度の高いジョイントは音にも影響が出る、はず。


ヒールを調整し角度を正常にしてあげたら、お辞儀する指板の厚みを足してあげます。


これがないとネック角を見た時に14フレット辺りから下に下がってカッコ悪いし、ハイフレットを弾く際に弦高が高くなってしまいます。


ネックとボディを組んで接着したら15フレットを戻していきます。


エボニーは埋木しても馴染むため、ほとんどの人がそれに気づきません。


今回は指板がガタガタなので最低限の指板調整をします。フレットは戻す時のために1弦側にマッキーでチョンチョンと印をつけておきます。1弦側と6弦側がリャンコにならないように。


チップしないようにフレットが抜けたら指板修正開始。


フレット浮き防止のためにフレットに何十年も溜まった手垢や皮脂の汚れを1本ずつ落としていきます。


フレットを打ち直してすり合わせ。良い具合にピカピカに仕上げます。


ネックリセット時はサドルの新調は必須です。


良い具合のでしろになりました。


弦高もバッチリ。


センターもしっかりと調整できました。


多くのギターを手にして思うのは00サイズが日本人の平均的な体格にとって至高のサイズ感なのではないか、ということ。


このヘッドストック、これもまた至高のフォルムではないでしょうか。


当時はヘッドの形は選びたい放題でデザインできたのではないでしょうか。何事もシンプルイズベスト!です。


最後は修理前の画像。いつも思うのは、このギター何十年もどこに眠っていたんだろう、です。アメリカの田舎町の蔵的なところにあったのかもしれないし、ショップのバックヤードにあったかもしれない。どちらにしても弦高がまともに弾けるレベルではないのでどこかに長年眠っていたのでしょう。家の収納の奥からこれが出てきたら、、と妄想してしまうほどのナイスギターでした🎵

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

ネックリセット&フレット一部交換 Martin D-18


スタッフの山口です。今回はD-18のネックリセットとローフレットだけフレットが極端にすり減っているためそこだけフレットを新しくする、というオーダーです。


今回は画像が多いのでサクッと進めて行こうと思います。写真はブリッジのウィングの角を作っているところ。


上面を削って薄くしたことでノッペリしていたところを角を作りディティールをそれらしくしてあげます。

凛々しい顔つきになりますね。


いつも通りネックを外します。


記念撮影パシャリ。


センターズレはご法度です。

ヨシ!


ネックを元通りにしたらフレット交換。6フレット以降は抜いてクリーニングした後戻しますので分からなくならないように1弦側にマッキーでマーキングしました。


70年代のマーチンは指板が薄いせいなのか、ネックが順反りしやすい傾向があります(そんな気がします)。アジャストロッドもありません。

そのため今回はオーダー元からネックジグを使ってほしいとリクエストがありました。


弾いている状態を再現するための作業台は当工房オリジナルです。


メーターを0に合わせます。


起こしてから弦を外してメーターを確認。


ナット部と先端部を押したりひっぱたりして調弦時を再現します。


メーター値が0になるようにすれば理論上は演奏時と同じネック状態です。


状態を維持したまま作業台へ移動して固定します。


指板修正は最小限が理想です。


6フレット以降のハイポジションフレットは減りが少なかったためクリーニングして戻します。


鈍くなったナイフで長年の手垢、脂分でしょうか、緑色に変色した汚れを除去。これがこぶりついたままではフレット浮きなどにつながります。


ローフレット弾きのオーナーだったからだと思うのですが1〜5フレットは消耗が激しかったため新しくします。

通常は全て新しいフレットの交換することをお勧めします。指板修正をする以上、手間賃は変わりませんので。


無事にフレット交換が完了したらナットも新しくします。


70年代Martinらしく今回はミカルタで作製しました。


弦間にバラつきがあるナットは残念なナットです。愛情を込めてビタっといい感じにします。


ネックリセット効果でサドルがバッチリの出シロになりました。フレット交換による影響を先回りしてネック角度を決めるのですが、これが非常に難しい。主に経験から得られる感覚に頼るところが多いので師匠に相談しながらですが自分も大分感覚を掴んできたように思います。


メンテ完了!

これで堂々と店頭に並べられるビンテージギターになりました。

 

こちらのギターも店頭に出るやいなや売れてしまいました。

SHOPサイトで自分が手がけたギターたちにSOLDマークが付くととても嬉しい気分になります。なんとなく認めてもらえたような感じがして今後の糧になります。

これからも精進していきたいと思います!

Gibson L-00 指板再接着&ネックリセット


スタッフの山口です。今回もこれまた渋いギター、Gibson L-00の指板剥がれとネックリセットをサクッと見ていこうと思います。


いきなり分解されている写真ですが、順番としては指板剥がし→ネック外しです。指板が浮いている程度にもよりますが今回はネックリセットも伴いますのでダブテイルジョイントを露出させる為にも全部剥がしてしまった方が都合も良いです。また古い接着剤も綺麗に除去できますので指板の再接着もより強固になります。


指板は剥がす前にダボ用の穴を開けてあります。これを忘れると後々面倒くさくなります。色は薄めの綺麗なハカランダですね!


指板を再接着します。ネックの矯正も少しできることを期待してあの手この手でシュミレーション。指板がネックに理想の形で接着できればフレットも指板修正も最小限で済みます。ビンテージギターを後世に永く残す為に師匠もそういった観点にこだわっております。


ネックリセットは弦を張った時にセンターがズレないように写真のように少しずつヒールを削ります。元々ズレているものであれば(そこそこそういう個体もあります)左右の削り具合を調整してできる限りセンターを正してあげます。


ネックリセットによってサドルの高さが復活です。ロングサドルは尚更なのですが、サドルが高ければ良いというわけではありません。この点に関してはネックリセットを何百本も経験してきた当工房オーナーのこだわりであります。

今回も名器が無事蘇りました♫男臭くてカッコいい、ナイスギターですね!

今回のような指板を剥がす修理+ネックリセットや、ネックリセット+フレット交換など、同時に行う修理の組み合わせによって作業効率が上がる場合に若干コストを抑えられることもあります。組み合わせによって手間が変わらない場合は修理料金も変わらないと思います(^^;

お見積りの際は気になるところはぜひご相談いただければと思います。

今回もありがとうございました。

 

 

 

指板修正(リフレット)/ 手工品(D-45コピー)

D-45 を模した手工ギターです。

フレット抜いて、指板を修正します。

想像するに、調整しないでそのままフレットを打っちゃったという感じだと思うのですが…

指板の雰囲気としては、なしてこんなに歪んだ?という感じ。

 

フレットのすり合わせをする機械というのがあるらしいのですが、とりあえずそれでやってみてもらったようですが、問題解決にならなかったようです。

物事には各々の基準や物差しが違いますので、判断が異なるのは仕方ないと思います。

当方であれば、この状態でフレットのすり合わせという選択は無いのですが、この状態でビリつかない様にすり合わせをするのであれば、ポジションによってはフレットがぺったんこになるような調整になったはずだと思います。

 

 

 


 


 

ご依頼人のお話によれば、「この先はネックリセットが必要なので、アコースティック専門の修理屋で、」と言う事で、プランの流れが良くわかりませんが、当方をお勧め頂いたようで嬉しかったですけど、こちらのギターは当方の見積もりではネックリセットの必要はありませんので、ショップによって判断基準の違いを改めて痛く感じた仕事でした。

ですので、逆にうちで納得いかなかった人が他所で見てもらったら「こんな事したの?」なんてことが無いとも限りません。

判断基準が違うのですから、当方を信頼して頂くお客様には本当に感謝いたします。

 

弦高も下げられて弾き易く、サドルもこの位あれば十分です。

指板のアールはMartinよりフラット。

さだまさしさんのこういうギターありませんでしたっけ。

 

さださんで 一つ思いだした話があります。

私(葛飾区出身)が中学生の時、中川中学から転任して来た、理科の中島先生が授業中に話していたこと。

「彼(さだ君)はね、授業中一切ノートは取らないけど、全部、記憶している。集中力がすごい。」

「キミ達もそうしなさい。」位の勢いで話されていましたが、無理です。

ただただ、ノートを書かない子になるだけです。

バイオリン以外の事はやらなかったという、さださんの天才っぷりがほんとによくわかったお話でした。

 

 

ネック反り修理 / Gibson LP custom

指板を剥がしておりますが、何をやろうかと申しますと、ネックの反りを直します。

 

いつものように途中の画像は一切ありませんが、完了形です。

締めきっていたアジャストロッドも余裕が戻りました。

 

通常ネックの反りを直すのであれば、アジャストロッドで調整したり、アイロンで矯正したりすのではないかと思います。

もしくは、状況によってはリフレットして指板を修正するのも手だと思います。

反りがひどい状態でも、仮にアイロンが効いたとすると、その後は指板を修正(リフレット)もしくは最低でもフレットのすり合わせをしなければなりません。

ネックアイロンは不確かな修理方法の為、ある程度修理代をかけても、反りが戻る可能性も残ります。

このギターのように反り具合がひどく、過去の修理も良い成果が出ていない様であれば、仮にアイロンが効いたとしても、今回も良くない予想が付きます。

 

長年の経験では、アイロンが有効なものとそうでないものが、ある程度メーカー等で分類できるような気がしています。

Gibson等はアイロンは1番有効なブランドではないかと思っています。

 

何故、熱でネック反りが修正(矯正)出来るのか。

接着剤は熱で柔らかくなるので、矯正してある状態で熱したら、冷ました時に貼り直されているようなイメージではないでしょうか。

 

 


ですから、貼り直す事と同じであれば接着力も落ちてくるのではないかと考えてます。


各メーカーで使用する接着剤の種類やブランド、製作の方法やパーツのデザイン等でアイロンの効き具合も変わってくるのではないかと想像しています。


指板等、大きなパーツは一旦剥がすと、木ですので動いて元の位置には戻りません。

ちょっと出っ張ったり、引っ込んだりしますが、そこは削って合わせるしかありません。

 


6弦側がちょっと出っ張ったから、こっちは多少凹んだだかと思えば、なぜか丁度良い位。

 


リフレットしましたから、ナットも作り直します。


Good!

 

インレイの保護(ネックアイロン) / Gibson southern jumbo

タイトルにもありますように、これからネックアイロンを掛けるのですが、この指板のインレイは貝ではなく、パーロイドと言う白蝶貝(Mother ofpearl)に似せたセルロイド製なので、熱を掛けると白く焼けてしまいます。

大昔、オリジナルのレスポールのインレイ全部燃やしたと、知人の武勇伝を聞いた事がありますが・・・。

本物のレスポールにアイロン掛けちゃいけません。あー恐ろしや、恐ろしや。

気にしない人は、このままアイロンを掛けてしまいます。

後は磨いて、何となくきれいになればいいです。と言う感じで。

白くなっちゃ困ります。と言う方は白くならないように、一旦全部外します。

取って付け直すのはコストもリスクも上がりますが、仕方の無い所です。

 

 

 

指板(フィンガーボード)修正する際も、この選択が求められます。

過去に指板修正歴があまり無ければ、インレイの厚さもまだ余裕があると思いますが、幾度と無くリフレットが施されている物は修正の際に状態によってはインレイが薄くなってしまったり、消えてしまったりします。

消えても気にしない人は、そのままですが、残す場合は外して、インレイを戻すスペースを、指板を削った分掘ってインレイを戻します。

 

 

順番や向きを間違えないように並べておきます。

このギターの場合は、外さず多少削っても大丈夫。

これで熱を掛けます。

 


インレイを戻す際は、浮いて固着しないよう気をつけます。


フレットをすり合わせします。

指板は、元の雰囲気も残したいのであまり磨きすぎないようにします。


古いパーツは古いなりの雰囲気が良いと思いますが、これをフレットワークでやってしまうと、「おまえ、やる気無いだろ?」となりますので、バランスが難しいです。

 

今回はネックのアイロン矯正の際のインレイについての記事ですが、当方ではアイロンでのネック修理をすすんでお勧めする事はありません。

そのことについては、以前の記事でごらん頂くか、また改めて書く事がありますのでその時ご覧頂ければ幸いです。

ご了承下さい。

 

ネック反り修理(指板貼り直し) / Martin D-28s


 

このMartin のようにアジャストロッドでは無かったり、アジャストロッドが一杯まで締めきってしまっている場合、反りを直す方法は2~3ありますが、その方法の良し悪しはオーナーの意向に副うのか否かです。

先ず、何も考えず使っている人が多いのはアイロン(ネックヒーター)。これだけに頼っていてはネック修理の50%以上は不可能になってしまいます。

アイロンは効果がある無しが、メーカーによって差が出てしまうので、アイロンを使ってのネック反り矯正は勧めません、先ずアイロンによる効果がどの程度のものか説明が必要です。

長年やってきて不思議に思うところが、どの接着剤を使ったもの、どの年代のどの工場のも、等で差が出るものではなく、メーカーによって差が出るような気がします。ただこれは断言出来ませんが、「やはりそうだ。」と思う事が多いと言う事です。

Martin の場合は、イメージ通りには行かない事が多く、上手くいったはずの物も後に戻ってしまっている物もいくつか見て来ているので、私の中ではMartinはアイロンが効かない事になっています。

ただしオーナー次第では、無理くり何度もアイロンをかけてとりあえず何とかやってみて、その後ダメならその時考える。という方もいなくはありません。

次が、指板(フィンガーボード)を修正して(削って)反りを無くす方法です。

この方法はとても確実で作業内容はリフレットですので、修理後の演奏性も良いです。

ただし、程度によっては修正部分がかなり削られてしまう事になるので、その点は注意が必要です。

 

もうひとつは、画像にあるように指板を貼り直して修正するやり方です。

アイロンで期待する効果を実際に手を加えて、欲しい状態を確実に作り出す作業です。

アイロンでは1度暖められた接着剤が冷えて再度硬化する事と比較すると、貼り直す場合は強度も期待できます。

ただし一旦剥がしてしまった指板は歪みますので、貼り直した際は両サイド、指板面も修正して、新しいフレット打ちます。

修理の費用と納期は紹介した順番に大きくなります、どの方法がベストなのかは、見積もり後の検討で最終的にオーナーが決めます。

 


古いギターは古いなりの雰囲気に仕上げます。


1番大事なのは、感触。


弾きやすさ。


良いものは直しながら使うもの。

このギターの修理を3回続けて見ていただきましたが、ここまでやるには、修理費用がどれくらい掛かったのか気になる方も居ると思います。

このギターはこの他にも力木(ブレーシング)の剥がれも修理しています。

気になる方はメールにて問い合わせ頂ければ、そういった質問にも回答差し上げます。