修理実績

ブリッジ交換、リフレット / Gibson J-45 Deluxe


いつもご覧いただきありがとうございます。スタッフの山口です。こちらのギターは前にロッドカバーとピックガード再接着のブログで登場した70年代前半のGibson J-45Deluxeです。


ブリッジが改造されたようなおかしな状態だったためオリジナルっぽく作り直しました。


ブリッジ接着用の道具もありますがサウンドホールクランプを使います。


70年代のGibsonのブリッジは独特の薄さと形状ですね。年代によって至る所に変化があるのがGibsonの魅力だ、という人がいますが僕もそう思います。過渡期に見かけるような仕様が混合された個体に胸が熱くなる人も多いのではないでしょうか。

 

 

 


フレットも新しく交換して行きます。


フレットを打つ前の修正された指板にいつもうっとりします。長年の汚れや手垢で見えなかったローズウッド本来の木目の美しさが甦ります。

サンドペーパーの目が細かすぎるとあまりカッコ良くない、というのは多くのアコースティックギターを見てきた師匠からの教えです。


たまにフレットプレスを使いますが最近はトンカチで打つ方が多いです。


前のブログでピックガードを貼ったら完成です。70年代Gibsonはもっと評価されてもいいと思わせてくれたギターです。斉藤和義さんもたまに使っていますね。何よりも本家Gibson自身がもっと評価するべきだと思ったりもします。

 

ブリッジ貼り直し / Martin D-35S

ブリッジを貼り直さなければならない場合は、慎重に剥がして、

調整し直して、貼り直します。

マスキングテープは用事が終わったらさっさと剥がします。

ラッカー塗装にひどく反応してしまう事があるので塗装作業等も、その日の作業が終わったら剥がして、また次、やる時にマスキングします。

 

 

ブリッジの剥がれた隙間に接着剤を差し込んで接着する場合も無くは無いですが、その場合は圧着せずに充填接着します。

何故、圧着しないかと申しますと、ブリッジが剥がれている場合、接着面は反っている事がほとんどなのでクランプしても密着しないのです。

無理にクランプしてくっ付けてもブリッジが反っていますので、いずれ剥がれてきます。

剥がさず部分接着するならば、あくまで簡易的な修理と考え、圧着はせず充填接着します。

ブリッジが反っていなくて隙間が出来ている場合もありますが、接着剤はスーパーグルーで、その量も足りていない場合に反らずに剥がれている事が多いように感じます。

 


 


 


 


 

弦を緩める理由はネックへの負担だけでは無く、ブリッジ、トップ板、等いろんなところに弊害が出る事を予防する為です。

 

 

ピックガード貼り直し、ロッドカバー交換 / Gibson J-45 Deluxe


スタッフの山口です。今回はGibsonJ-45Deluxe。まずはロッドカバーをオリジナルっぽく作って行きます。


材料を大方の形に切ってビス穴を開けたら表面を傷が残らないように徐々に番手を上げながら磨いていきます。


ロッドカバーは小さいのでピックガードの磨きよりは楽です。土台の木材もツルツルになってしまいました。


左がよく見るGibsonロッドカバー既製品。真ん中が作製した70年代のオリジナルの形で作ったもの。右が元々付いていたモノです。

 

 


ロッドカバーができたら今度はピックガードです。こちらはオリジナルのピックガードが反り返った状態で剥がれていましたので何ヶ月も重石を置いて平らに矯正しておりました。


合板でピックガードにピッタリなジグを作って、今回はタイトボンドで接着しました。

このペグ、好きです。作成したロッドカバーも馴染んでいていい感じです♪

こちらのギターは10年以上前から工房に眠っていました。師匠が勉強も兼ねて僕に任せてくれました。この他にも修理をしたのですがそれはまた後々。

鳴りがよくすぐに買い手がつきました。

長い間メンテナンスされていなかったギターが甦り、誰かの手によってその音が奏でられるというのはとても嬉しいことです。ギターのサウンドホールから「ありがとう!」と聞こえる気がします。

ギターに限らずですが、「モノを修理して永く使うこと」は、作った人も買った人も、また手放した人もそしてそれを直した人もみんながハッピーになれることだと思います。修理っていいな♪

それでは!

 

フレット交換 / Martin HD-28

 

フレットの交換時期は十人十色ですが、これ位になると皆さん、交換の時期が来たと感じます。

上から下まで満遍なく弾き込んでいます。

 

 

山口君もブログを書いてくれるようになって、修理の手順なんかも書いてくれますので、私の方はますます文字が少なくなってビフォーアフターの画像のみになってしまいそうです。

山口君には出来るだけ、あーやれこーやれ言わない様にしていますので、私と同じようで違う所もあります。

このリフレットにしても、最近は「ネックジグ」なる道具も駆使して仕事の精度が上がるよう努めていますが、ネックジグの使い方もわたしと若干違うようです。

 

 

 


 


 


 


 

 

 

あーやれこーやれ細かく言ってたら、うまく行ってもわたしと同じ程度にしかならないって事になってしまいます。

師匠とか先生等と言われてる人は、私のとこに来た以上は、私程度より上手くなる(する)には…と、難題に苦慮しているはず。

 

 

 

折角いいボール投げたり、打ったり出来るのに、フォームいじっちゃって、わけわかんなくしちゃうのは1番やっちゃダメ。

怪我しない様にする事が先ずは、教える人の仕事。

そうは言っても、怪我しちゃうんだよな。

「怪我の功名」なんてのもあって、話が終わらなくなりますので、また今度。

ネックリセット / Gibson L-OO 1930s


 

お世話になっております。スタッフの山口です。今回は貴重な1930年代のGibson L-00のネックリセットです。

少しずつブログを意識した写真が増えてきましたが、今回は修理前の弦高を撮っておりました。

サドルはギリギリまで削っているのに4mm以上の弦高です。一般的なアコースティックギターでは6弦側12フレットで2.5mmくらいが好まれますのでネックリセットで改善したいと思います。

14フレットジョイントのギターですのでいつも通り15フレットの下辺りのダブテイルの隙間を温めて行きます。

トップのスプルースが指板に付いて剥がれていますが後で修正できますので無事にネック外し完了です。

 

元々センターがズレていたのでネック角度と合わせて小まめに確認しながらセンターも修正して行きます。


ネックリセット後の工程を想定して角度を決めるのですがこれが本当に難しい。完了目前にしてやり直したことも過去何度もあります。

 

ローズ系の指板は穴をなるべく目立たないように埋木します。

忘れましたが今回は事情があってネック接着前に埋木しましたので指板裏面もノミで綺麗に削ります。

 


接着後の写真です。センターのズレもしっかり修正できました。


このくらいサドルが立っていれば安心です。今回はギターの雰囲気に合わせてオイル漬けの牛骨サドルにしました。


ヒール部も綺麗に仕上がりましたので塗装修正は不要。


反対側もOK。

 

最近流行りのインダストリアルな雰囲気のあるヴィンテージギターですね。個人的な印象でしかありませんが、部屋に飾るインテリアとしてはMartinよりGibsonの方が適している気がします。

この年代特有のヘッド形状、真っ黒なエボニーのナット、何より筆記体のロゴがペイントで真っ白なのがイケてます♪

例外なく、ナイスギター!

 

ピックガード交換 / Martin OOO-28

所謂マーチンクラックと言われる割れです。

これを平らに直して、ピックガードを交換します。

ピックガードを剥がす際は、逆目から剥がして木をむしっちゃわない様に順目方向から剥がします。

とは言っても剥がす部分は見えませんし、見えたとしても分かるもんでもないので、剥がしながら「ちがうな」と思ったら方向を変えます。

方向を変えて「よしよし。」となる場合と「あれ?どっちが正解だ?」となる場合もあります。

 


塗り込んでいるような雰囲気を出す為に水研ぎをします。

ピックガードの成型そのものより水研ぎの作業にとても時間が掛かります。


塗装面であれば、特にラッカーなら割と簡単に研ぐ事が出来るのですが、ピックガードそのものは中々細かいキズが取れてくれません。


そんなに面倒なら保護フィルムを剥がしただけでもきれいでしょ?と思いますが、それだと下敷きの様で安っぽくなってしまうのです。

 

 

 

逆にうんと拘って塗装もして、予算もかけて出来るだけ元の様に戻したいという場合もありますが、そこまで必要無いと思われる方が多いのでしょうか「塗装あり」でのリクエストはとても少ないです。

もしくは当方では、キズ直しやリフィニッシュは基本お断りと言う事で常々、「キズは気にしないで。」「リフィニッシュはやめてね。」等と修理依頼者にとっては、「なんだ?この修理屋!?」的な事を言いますので、見た目も(を)うんと拘る方にはうちは選ばれないのかも。

 

ネックリセット / Gibson LG-3 1950s

 

スタッフの山口です。1950年代のGibson LG-3、ネックリセットを見て行きたいと思います。

写真では分かりづらいですがネック角度が狂ってしまっています。これではサドルを削ったりアジャストロッドで調整しても弾きやすい弦高まで下げられません。

サドルはこれ以上低いと音への影響も顕著になります。ネックリセットほどの修理代をかけたくない、かけられない場合はこのブリッジの上面を削って薄くし、サドルの出しろを稼ぐという方法もありますが、今回は貴重なオリジナルのハカランダブリッジが綺麗に残っていますので、削ったりせずにネックリセットで解決することになりました。

 

 


15フレットを抜いてヒートスティックを挿入する穴をあけます。黄色いマスキングテープは掘り過ぎないための目印です。貫通してしまったら大惨事です。


指板をトップ板から分離させるためにハロゲンライトで慎重に温めます。修理屋さんによって温め方や道具は様々ですね。


指板とトップの境目にナイフを入れて分離したら今度はヒートスティックでヒール内部のダブテイルジョイントを温めます。とにかくニカワでもボンドでも温めて接着力を弱めます。

 

 

 


写真が一気に飛びます(汗)

ネックヒールを削りネック角度が適正になりました。


クランプで固定しなくても弦に負けて外れないようにジョイントしなければ合格点は貰えません。センターもずれていてはNG。

ネック角度が適正になったことで指板が下がってしまう場合は、指板の底面に同じ材料を足して指板面がなるべく最後までまっすぐになるようにしてあげます。写真をよーく見るとトップ面との間に薄い層が見えますね。

最終チェックとシュミレーション後に接着です。手早く作業しないといけませんので緊張します。

 

 

 


無事接着し完全に乾燥(2〜3日以上)したらフレットのすり合わせをします。フレット交換も行なった場合はナットも作り直しますが今回は交換なしです。


サドルの出しろがいい感じです♪

このサドルを何ミリか高くするために結構な時間と労力、それと修理代がかかります。


弦をチューニングしっぱなしにすると張力でネックが反ったりトップ板が凹んだりブリッジが外れたり、ギターによって多種多様な不具合が出てきてしまいます。


オールドギターやビンテージギターは長い時間をかけて木が安定していますので、ちゃんと弦を緩めて湿度に気をつけていれば修理後の良い状態を長期間維持できると思います。もちろん新しいギターにも当てはまります。当工房オーナーも度々言っていますが、アコギは弾かない時はなるべく弦は緩めましょう。

 

リフレット(フレット交換) / Gibson LG-3

スタッフの山口です。今回はGibsonのLG-3のフレット交換です。角度が悪いので本当はネックリセットしたいところですが、先方の予算を踏まえ今回はアイロンで角度をできるだけ修正してあげてからフレット交換することになりました。

かなり年期の入ったアイロンですが現役です。師匠に何年前から使っているのか今度聞いてみよう。

ネックアイロン修理は簡単そうに見えますが、その後なるべく指板やフレットを削らないで済むように色々と試行錯誤するため意外と難しく、セッティングに時間がかかります。師匠に随時チェックしてもらいます。

 

 

 


アイロンで無事に角度修正できたら今回の主役、『ネックジグ』の登場です。

移転前の工房ではスペースがありませんでしたが、今の工房ではスペース確保が可能になった為、アメリカから取り寄せました。


簡単に説明すると弦を張って演奏する際のネックの反りや角度をメーターで記憶し再現したまま指板修正やフレットの擦り合わせができる、といった優れ物です。


演奏時のネック状態を維持したままフレットを抜き指板を修正します。

 

 

 


少し飛んで、、、フレット交換し、すり合わせたりエッジを丸めたりしながら磨いて行きます。


師匠が長年かけて編み出した工程、レシピは門外不出です。まだ僕がお客さんだった時、師匠の仕上げたフレット交換の仕上がりに感動して弟子入りするに至った、と言っても過言ではありません。

 

 

 


象牙やオリジナルにこだわるなど特殊な事情が無い限りナットは牛骨で新しく作り直します。


フレットが高くなるのに加え、指板もしっかり修正できますので弾きやすさは体感できるほど良くなります。


サドルは低めですがネックアイロンをかけておいたおかげで許容範囲になりました。ネックリセットで得られるサドル高には及びません。


元々『LG』は「Ladies&Girls」の略らしいです。一般的な日本人男性ならこのくらいが肩が疲れないギリギリのサイズだと思います。50年代のビンテージですが、J-45よりもいくらかお手頃価格なので狙い目です。ナイスギター!

 

ネックリセット / YAMAHA FG-250J

 

 

ヒールが途中から分かれてしまっています。

 

ヤマハのネックを外す時は、想定内と言えば想定内ですが…

温めるから、接着部が剥がれちゃうんです。

 

大概、分かれた後ろの方は中々緩まずにくっ付いていますので、外すのが大変です。

以前の蒸気を使っていた方法も現在の半田ごてを使う方法も同じですが、高熱を扱いますのでなるべく早く外してやる事が大事です。

特に蒸気だった頃は、熱湯が噴出してきますので出来るだけ早く外さないと塗装へダメージをきたします。

少々の火傷ならガマンガマン、隙間からボディに噴き出す蒸気を布で拭きフキふきフキしながらやらねばなりません。

熱を掛けているだけではジョイントが緩んでくるまでに時間が掛かってしまいますので、ジョイント部が緩む時間を短縮出来るようにネックをつかんでヒールを押す方向以外からも力を入れます。

ただし、こんなふうにヒールが途中から分かれて、ネックが外れてしまうと持つところが無くなっちゃうから、こうなると残った方を取るのがけっこう大変なんです。

蒸気が吹き出ない半田ごてで熱する方法なら、時間が掛かっても押す方向だけの力で外せば良いかとも思うのですが、いずれもジョイント内部から高温で温めていますが、こちらは気を付けないとヒール塗装面がアッチッチになるので(塗装面を冷まし冷まし)こっちはこっちでなるべく早く外してやる必要があります。

 

「あ、でも時間が掛かって塗装がやられても、早く外そうと思ってヒールが分かれちゃっても、いずれにしても何らかの修正が必要なんだな。」

 

 


 


 


 

「でも、蒸気がボディにはかからないからそこは心配いらない。」

「なら、時間をかけてやればよいのか⁉ 」

「いや、押す方向のみの力では、いつ外れるか分かんないよなー。」

「この厚くて固い塗装修正するのはめんどいよ~、ギブソンみたいなわけいかないんだから。」

いつもブログは、まとめてから書き始めるわけでは無いので書きながらいろいろ気付いたり、分かんなくなったりします。

ヤマハにはヤマハなりの良い方法がきっとある、と思いながら…

つづく

 


 


 

 

 

ネックリセット / OOO-45コピー


 

残暑見舞い申し上げます。スタッフの山口です。

今回は手工品のooo−45モデルのネックリセットを見ていこうと思います。

珍しく修理に取り掛かる前に写真を撮りました。よく見るとヒールに隙間が出来ています。

近年の本家マーチンでもたまに見られる不具合です。原因はダブテイルジョイントの精度が悪かったり、シムに紙が使われていたりでこうなることが多いです。

今回はどうやら精度が甘く長年の弦の張力に負けて隙間ができたようです。


コピーモデルですがこちらは本家顔負けの雰囲気がありますので、恐らく見えないところもマーチンと同じ構造だと予想し15フレットを抜きます。


予想通りダブテイルのポケットがありました!よかった。

ダブテイルジョイントを温める前に指板を温めてトップから指板を剥がしておきます。

少し飛んで、綺麗に外れました。

 

 


今回はこちらに注目。ドリル跡が確認できますでしょうか。真っ黒で良質なエボニーは埋め木しても目立たないですね。


こちらはネック角度を適正にしたことで下がってしまう指板に足す下駄を作成中。こちらも一応エボニーですが縞のある黒檀ですね。


ネックバインディングがありますので下駄に合わせてバインディングも足してあげます。


これはフレットを戻した後の画像。よーく見ると跡が確認できます。

 

 


後はいつものように接着剤を付けずにシュミレーション。


センターのズレはないか最終確認。元々ズレている個体もよくありますのでその時は角度と同時進行でできるだけ修正してあげます。


バインディングは足した部分が分かりやすいです。

ネックバインディングがない28シリーズの場合はエボニーですのでドリル跡同様目立ちません。

 

 

サドルもベストな感じです。ロングサドルは高すぎると特にカッコ悪くなってしまいます。逆にサドルが低くてもせっかくお金をかけてネックリセットを頼んだのにあまり意味がない、、と残念がられてしまいます。

本物のマーチンと雰囲気は違いますが、高級感とヴィンテージ感は本家に負けないギターですね。もしかたらマーチンの工場で働いていた職人さんが独立して作ったとかでしょうか。専門学校生の卒業作品の可能性もありますが、どちらにしてもウン十万円はしそうですね。

 

今日修理が完了した12弦ギターはネックリセットし終え、フレットのすり合わせも終わっていましたが、想定していたよりサドルが低めに仕上がってしまいました。そのまま納品するか迷いましたが、師匠に相談したところ「納得が行かないならやり直した方がいい」とのこと。

よし、と、もう一度、一からネックを外し、リセットし直しました。今日やっと完了。サドルの出もちょうど良く「納得」できる仕上がりになりました。ネックリセットは接着後にフレットはすり合わせなのかリフレットなのか、リフレットなら指板修正はどの程度か、アジャストロッドの有無や調整幅など、多くのことを想定しながらやらなくてはなりません。経験と想像力を頼りに戦う修理ですので、納得のいく仕上がりの時は喜びもひとしお。大変ですが達成感があり好きな修理の一つです♪