修理実績

ネックリセット / Ovation 1597


こちらのモデルは、スムーストップのアダマスでトップがつるっとしています。

ネックの角度が狂って、指板も歪んでいます。


接着面は双方きれいにして、必要があれば調整。

 


どのギターもそうですが、グリスアップはやれるときにやっておきます。

Gibson等は普段でもやりやすいのですが、奥まった所にあるものは普段はやり難いのです。

過去の記事でAdamasのこの部分は隙間が出来ているので、ネックをセットする前に隙間をある程度(全部埋めるのは不可能)埋めておくと説明しています。

このモデルはAdamasですが、隙間はありません。

他のOvationと同じ作りです。

 

この部分に隙間があるのは、AdamasⅡが出来て、Adamasが Super AdamasになってからこのSuperとⅡの2種類のアダマスに隙間があると思っていたのですが、眉間に力入れて思い出してみると、古いAdamasⅡには隙間が無かった気がしますので、隙間はきっとプリアンプがOP24になってからのSuperとⅡ。

おそらく経験上では、プリアンプが四角い時代のボディはそうなのでは無いかと思っています。

過去記事

過去記事

但しこの部分の隙間を直しても強度が飛躍して増すわけではありませんので、弦は緩めて管理しましょう。

隙間が無い、昔アダマスでも張りっぱのやつは、やはりベッコし、ジョイント部ボディが潰れている物もよく見ます。


指板の歪みの原因はこの剥がれ、具体的で分かり易い歪み方。


ブリッヂ等もそうですが、剥がれている部分は、反って歪んでいます。

 


暖めたりしながら、なんとか戻しましたが、より精度を求めるには、フレットを抜いて指板修正の必要があります。


ある程度良くなれば、後はフレットすり合わせで調整すれば良い場合も、指板真っ直ぐ、フレット状態も良くしたい場合、どちらもオーナー次第。

 

ネック折れ修理(塗装修正無し) / Gibson J-45

ネック折れ修理は、出来るだけきれいに仕上げる為に塗装まで修正して仕上げる場合と。

修理が出来ていれば、見た目は気にせず仕上げる場合の2通り。

 

修理箇所周りだけきれいにしても周りとつり合わなければ当然塗装なしですが、こちらのプランも無し。

大概の方は納期が短く、コストを抑えられる、塗装修正無しのプランで修理する方が多いです。

 

補強を入れない理由があります。

タイトボンド等の様に補強を入れなければ耐えられないボンドを使うのではなく、シンプルに全く問題の起きない接着剤で接着するからです。

その事により塗装修正無しのプランで、コストが抑えられます。

そして補強がある場合は、再度アクシデントがあった際に折れ方が複雑になったり、補強が強すぎる場合は、ナットやヘッド辺りではなく、遠い所が折れて修理し難い折れ方になる事があります。

タイトボンドだけで付けた場合、使っている過程で将来的に同じ所にヒビが入ってしまい、補強を入れてもうまく行ってない場合は、補強材の周辺に隙間が出ているものも見ます。

ネック折れをどのように修理しても、しっかり修理出来れば音響的にダメージはありませんが、異物を要れずに修理出来ればそれが1番音響に変化が無い修理と言えます。

 

 


Gibson は塗膜が厚いので、最初の折れ修理なら塗装なしでも剥げずに残こせる期待が持てます。


欠けて色が無い部分があります。

この部分は充填して整形してあるので、感触に違和感はありません。


永く使うものであれば、傷はどんどん増えていきます。

あまり気にせず、沢山使って、不具合があれば直して使いましょう!

 

こちらは、ほとんど塗装が剥がれる事無く仕上がりましたが、大きく剥がれて塗装無しでも、常に見えている部分ではないので、転売する予定等無く、自身で使うのであれば、感触も違和感ありませんし、強度は塗装があっても無くても同じです。

キズが気になるのは、少しの間だけですよ!

 

インレイの保護(ネックアイロン) / Gibson southern jumbo

タイトルにもありますように、これからネックアイロンを掛けるのですが、この指板のインレイは貝ではなく、パーロイドと言う白蝶貝(Mother ofpearl)に似せたセルロイド製なので、熱を掛けると白く焼けてしまいます。

大昔、オリジナルのレスポールのインレイ全部燃やしたと、知人の武勇伝を聞いた事がありますが・・・。

本物のレスポールにアイロン掛けちゃいけません。あー恐ろしや、恐ろしや。

気にしない人は、このままアイロンを掛けてしまいます。

後は磨いて、何となくきれいになればいいです。と言う感じで。

白くなっちゃ困ります。と言う方は白くならないように、一旦全部外します。

取って付け直すのはコストもリスクも上がりますが、仕方の無い所です。

 

 

 

指板(フィンガーボード)修正する際も、この選択が求められます。

過去に指板修正歴があまり無ければ、インレイの厚さもまだ余裕があると思いますが、幾度と無くリフレットが施されている物は修正の際に状態によってはインレイが薄くなってしまったり、消えてしまったりします。

消えても気にしない人は、そのままですが、残す場合は外して、インレイを戻すスペースを、指板を削った分掘ってインレイを戻します。

 

 

順番や向きを間違えないように並べておきます。

このギターの場合は、外さず多少削っても大丈夫。

これで熱を掛けます。

 


インレイを戻す際は、浮いて固着しないよう気をつけます。


フレットをすり合わせします。

指板は、元の雰囲気も残したいのであまり磨きすぎないようにします。


古いパーツは古いなりの雰囲気が良いと思いますが、これをフレットワークでやってしまうと、「おまえ、やる気無いだろ?」となりますので、バランスが難しいです。

 

今回はネックのアイロン矯正の際のインレイについての記事ですが、当方ではアイロンでのネック修理をすすんでお勧めする事はありません。

そのことについては、以前の記事でごらん頂くか、また改めて書く事がありますのでその時ご覧頂ければ幸いです。

ご了承下さい。

 

ピックアップ取り付け / LR.Baggs Anthem

サドルの溝に仕込む、インブリッジ式のピエゾピックアップは非常に出音のバランスを取るのが難しく、そうかと思えば適当にやっても偶然良く出来てしまう事もあり、悩む事の多い作業です。

この弓形に歪んだ溝でも上手く出来てしまう場合もあります。

但し、全てをセットした後、何をやってもバランスが出ない原因にもなります。

ですので、始めに直してしまいます。

一旦埋めて、真っ直ぐ切り直します。

直せる余地があればピッチも修正します。

バランスが悪い場合、サドルの底面ばかり気にする人もいますが、重要なのは、この溝の幅の均一性と、

サドルの幅の均一性。

個人的に牛骨が好きなのでリクエストが無ければ牛骨を使いますが、幅を削る必要がなければ、これからは幅が完璧に均一で反りが無いタスクや他の素材を使うのも良いかもしれないと思っています。(苦労が減ります。)

これは牛骨。↑


コードの取り回しは、区々ですが、当方は低音側、バックとサイドのライニングに沿って。


貼り付けP.Uはi.beamに倣ってサドルの傾きに沿って貼り付けましたが、沿る意味は無いかも。


ジャックは緩む事が無いように締めます。

ジャックは出来るだけキャップの面位置になるように。


高いギターに付けなくても、音作りすればプロと同じ音。

 

なるべく大事な事は毎度、同じ事を書いたり実際にしゃべったりしていますが、ジャックが緩んで締め直す際、中でしっかり噛んでいないと、いつまでも回り続けて中でコードがネジネジして終いには切れてしまいます。

特にこのLR.baggsのジャックは固くて、力を入れて抜き差しするので緩みやすくなると思いますから、しっかりと締め付けて固定する必用があります。

締め直す際は、中でジャックが留まっている事を確認しながら締めなくてはなりません。

 

 

 

力木はがれ / Martin D-28s


以前に紹介したいろいろ修理したD-28sのその他の修理の力木はがれの画像が出てきました。

このような感じで圧着します。


ボディの中は掃除機で掃除した後、エアコンプレッサーでサウンドホールからホコリを徹底的に掃除してから接着作業に入ります。

接着部にホコリが混ざりこんで、接着不良を起こさない為ですので、掃除前はボディ内、力木等はいじってはいけません。


ボディ内のジャッキは基本力木の端に掛けますので、ジャッキの掛からない部分は外からクランプします。

両方掛けることで圧着力のバランスが取れます。

中に2本掛けてしまうと、片方が緩くなり、緩い方を締めると逆が緩くなり、余計な力を掛け過ぎてしまいます。

 


 

力木は少しはがれている分には、異音等出なければ然程気にする事もないと思いますが、これ位はがれていますと音や強度にも影響が出てきます。

バックの力木は、トップ板(サウンドボード)を効率よく鳴らせる為、ボディを締める役割があります。

オーディオのスピーカーで考えれば分かり易く、箱が鳴っても意味が無く、スピーカーの正面から前へ音が飛んで行かなければ良いスピーカーとは言えません。

力木がはがれているとボディは自由なので、ボディも振動して弾いている人は割りと気持ちよく感じる人もいますが、どちらかと言えば、周りだけで鳴っている、締りの無い音と言えるでしょう。

近年では、トップの力木同様にバックの力木も弾いている人がより気持ちよくなれる工夫された力木のパターンが考案されたりしています。

ボディのサイズだけではなく、ニーズに応えるいろんなデザインがあるギターは面白い。

 

画像の整理が大変すぎて撮らなかったり、撮っておけばよかったものを撮り忘れたりと、アップする頻度に差が出ています。

依頼の多いものは必然的に多くなります。

力木はメインの修理以外だったりすることが多いので、撮らなっかったり忘れたり、久々の力木画像でした。

 

ピックガード交換 / Gibson Songwriter DX Custom

ふにゃふにゃで反り上がったGibson のピックガードを交換します。

絵の入っていないものなので、作り変えます。

なるべく近い雰囲気で赤めのセルロイドガード。

奥にあるのが付いていたもので、手前が作り直したもの。

 

数年前のギブソンの、ふにゃふにゃガード。

最初に見たのが、Hummingbird のピックガードでしたが、その素材もさることながら、柄も偽物にしか見えずコピーギターが堂々と置いてあると思ってしまった。

がっかりしたり、笑ったりしましたが、メーカーもいろいろと事情があって大変なんだろうと思います。

あと思い出すのは、Ovation のエポーレットが平面になっちゃって、あれからまだ平らのままなのでしょうか。

あれもはがれたり面倒な事もありますが、オリジナルの雰囲気がかっこよく見えます。

レスポール等は今となっては、時代時代のモデルも味わいが出てそれもありですが、オリジナルを知っている世代の人にはやはり魅力に欠けるデザインだったと当時のみなさんの会話など記憶しています。

気にする人が古い人で、気にならないのが若い人、というところでしょうか。

 

 


きれいにして貼り直す事も可能だと思いますが、また剥がれてもイヤと言うわけで、作り直しました。


見た目は然程差は無く見えますが、


心配がなくなり、オーナーにとっては大変身。


色もなかなか良いじゃないですか。

 

ブリッジ ディテール / Martin


ブリッヂの交換されたMartin

見慣れない人にとっては、気にもならないかもしれません。


見慣れた人にとっては非常にカッチョ悪く見えるのが、ちょっとしたディテール。

大きさは勿論。


丸みがある部分、角がある部分、そしてその度合い。

作り直しても良いとの事でしたが、厚みも十分にあり、材もよかったので、これを直します。


一旦剥がして、形を直します。

形が直ったら貼り直します。

 

ブリッヂ側、ボディ側の接着面は平らに、密着するように調整して貼り直します。

調整が不十分な場合、密着せず隙間が出来てしまいますが、ばか力でクランプを掛けてもムダです。

バランスよく、適度な力でクランプは掛けます。

 


年代的にロングサドルでしたので、先に埋めておけばよかったのですが・・・


この溝を一旦埋めてから溝を切り直します。


サドルを作って出来上がりです。


良い黒檀です。

 

 


 

ブリッヂを作る機会が、この黒檀(エボニー)を使う事が多く、インディアンローズと比べると価格も高く、「ローズももっと使えると良いんだけどな。」等と思っていましたが、今となってはローズ類は輸入出来ない材料になってしまいました。

ワシントン条約

今はまだ、材料の残りがありますが、今後の事は考えないといけません。

 

 

フレット交換(リフレット) / Gibson J-45


フレットが低く、更に大分減っています。


古いギターですので、何度と無くリフレットされ、またフレットの交換時期が来たと言うところ。


指板修正の際には、インレイも一緒に削られますので、浅く埋まっていれば薄くなります。


ブラジリアンローズ(ハカランダ)は割れ易いので乾燥のし過ぎには注意。

フレットを抜いた際に、クラックは修正します。


フレットの高さは好みが分かれる所ですが、個人的にはこれ位が弾き易く感じます。


次回のリフレットは、弾かれ方によります。

来年なのか、それとも現在勉強中の若いリペアマンが10年後にリフレットするのか。


今後何十年も確実に残っているギターですので、携わる私達の責任は大きいです。


クラック修正は表面に留まらず、奥までしっかり接着することが大事。

古いギターのフィンガーボードは、大幅に修正する事はほとんどありませんが、新しいフレット打つ前には軽く調整します。

そして軽くオイルで潤いを与えれば、質感もとても良くなります。

勘違いしてはけないのは、オイルをたっぷり塗ってしまったり、頻繁に塗ってしまわない事。

オイルも水分ですので、中まで浸透するほど与えず、軽くすり込んで残った表面のオイルは乾拭きで拭き取りましょう。

そして乾いたら、また塗れば良いのです。

 

第1フレットに合わせた新しいナットも作り直します。

象牙ナット等、交換せずに流用したい場合は、底上げをして調整し直します。

良いギターは引き継がれます。

象牙パーツに潜む問題について

 

 

ネック折れ(塗装修正無し)/ Tacoma


 

いつもの様にネック折れですが、なんか雰囲気に違和感が・・・

そうなんです、Tacomaなので塗装がこーなんです。

私がOvation の代理店の修理をやめてその後、齋藤楽器工房(SAITO Guitars)に2年弱お世話になったその頃、私は作業には関わりませんでしたが、タコマの塗装不良のリフィニッシュがキタハラ楽器から来るわ、来るわで、私が齋藤さんの所をやめた後もまだまだ来てたのを見ましたが、一体何本やったのでしょう。

このギターももしかしたら、無償で塗り直してもらえたギターだったかもしれないですね。

リフィニッシュは基本的にはお断りしていますが、事情によっては受けていますので、これの依頼はお受けする気構えでしたが、ネック折れのみの修理と言う事でした。

リフィニッシュするとなれば、料金は安くはありませんので、今更ながらと言うところでしょう。

それはそれで、男らしい感じがします。

どの位男らしいか、下に画像があります。

塗装が剥がれて、湿気の影響を心配する方もいますが、基本的にボディ内は塗っていませんので、塗装のあるなしで湿気の影響の差は出ません。

湿度が高ければ湿気るし、乾燥すれば乾きます、塗装がちゃんとあるギターも同じ。

ただし、これだけ剥がれちゃっていますと、音響的(良い悪い、好き嫌い)には影響してると思います。

 


いつもと同じ修理。

塗装修正無し。


当たり前です。

ここだけ塗装直してしてどうする。


ヘッドの正面。


トップは無事。


ボディはこう。


こう。


こう。


そしてこう。

今回Tacomaの事を少し検索してみたら、当然の事ながら塗装についての記事が沢山あり中には、ラッカー塗料の選択ミス、のような事を書いてありましたが、ラッカーではありませんし、選択ミスでもありません。

いい加減なサイトが多いですから、お気をつけ下さい。

今読んでいるこのサイトも同様、自信を持って書いているサイトに限って大間違いな事を書いています。

私も完璧ではありません。

悪しからず。

 

バインディングはがれ接着 / Martin D-35


このバインディング剥がれは、Martin特有の現象と言ってもいい位です。


セルが縮んでボディのウエスト部からはがれてくるのが常ですが、このD-35は然程古くないのに剥がれちゃってます。


このまま貼れるのか、端まで剥がして切らなければならないか見極めます。


接着の後は、段差が無く、密着しているか良く確認します。


表面がきれいに出来ているかはもちろん気になりますが、少しでも密着できていないと非常に気になります。


密着出来なければ、トリムの黒の部分が太く見えてしまいます。

多少はバリなど出ますが、そこは接着後に研いてきれいにします。

古いMartinはこんな事無いのに何故、近年のマーチンははがれるのでしょうか、Martin だけ。

それぞれのメーカーで時代時代に諸事情はあるのでしょうが、なんとかなりそうなものも、対応しないのは修理屋にとって都合は悪くはないのです。