修理実績
ボディ破損 / Morris W-25 (其の弐)
ボディ破損 / Morris W-25 (其の壱)
オーナー様より初めにお問い合わせをいただき「これは時間も費用もかかる修理です。何より修理代でこのモデルの元となっている本物のMartin D-28が新品で購入できる額です。それでも修理しますか?」との問いに「父から譲り受けた大切なギターですので構いません。修理をお願いします」とのこと。
そうとなれば腕まくりをしなければなりません。人から見れば安価なギターであっても、お客さまにとってプライスレスなものなのであれば当工房としてもプライスレスな仕事を。
2年という長い修理期間に気が変わってしまうかもしれないノリのお客様だったら断っていたかもしれません。楽器の原価を大幅に超える修理はお客様との信頼関係がないと難しいです。経営上、納品ができなければ大損害となるから。今回のお客様は小まめに連絡もつきましたし、何よりこのギターに対する並々ならぬ愛着が感じられましたのでお受け致しました。
こうして2年間の長い旅が始まりました。写真データも膨大で工程も多いので、何回かに分けてアップしていきたいと思います。今日はこの辺で。ありがとうございました。
ネックリセット / YAMAHA FG-200D
サドルも丁度いい感じです。
今回はリフレットが無いので、狙い易かったです。
リフレットする場合は、指板修正をして、新しいフレットになった場合、若干弦高は上がりますので、それがどの程度か予想を立ててネックの角度を決めなくてはなりません。
以前にネックを外さなければならなかったMorrisにはやられた経験があります。
モーリスなので、インターネット上にも割と多く情報があり、それなりに出来る限り調べて、過去の皆川ギター工房の資料にも照らし合わせて「これはダブテールジョイントに違いない。」と結論が出、ネックを外し始めたのですが、外れないのです。
一向に外れる気配が来ないのです。
私は、これはダブテールジョイントだと分かってますから、ずっとそうやって外しているのですが…
外れる訳ないのです、だって違うんだもん。
それからは、すごく調べても間違い(嘘)の場合も多々ありますので、分からないジョイントは指板を剥がす!
これに尽きると思っております。
ブリッジ交換 / Gibson Humming Bird
ノーマルサドルの方がピックアップも選ばないので使い勝手はいいかもしれません。ただ個人的にはアジャスタブルサドルのGibsonサウンドが好きです。
最近は弦高を調節できるというメリットよりも、アジャスタブルサドルのサウンドが好きだから、という理由で選んでいる人の方が多いのではないでしょうか。「パーカッシブ」な音ってヤツです。
ブリッジの接着面(トップ側)の塗装が剥がされていないので「プラスティックブリッジっだったのでは、」と言っておりますがプラスティックブリッジでは無く、木のブリッジが貼ってあった跡ではないかと、私思います。
書き足し…皆川。
確かに。ボルト跡がないのでこれこそ塗装の上からブリッジを接着してたパターンですね!失礼しました(>_<)
書き足し‥ 山口。
リフレット / Harmony Hollywood
リフレットする際に大概は、指板を修正してから新しいフレット打ちます。
こちらのギターの指板は茶色く着色してあったのですが、オーナー曰く茶色くしなくても良いとの事で、私も賛成。
先ず着色の面倒が減る事もそうですが、メイプル指板のきれいさは着色は無い方が良いと思います。
ただし、ローズやエボニーのように塗装無しの状態ではメイプルは汚くなってしまいます。
ですのでクリアーコートはしなくてはなりません。
このHarmony Guitar アメリカンビザール等と呼ばれているようですが、それはそうと、なんて素敵なギターなのでしょ。
ピックアップはデュアルモンドでしょうか、詳しくないので分かりませんが、何とも素敵なデザインです。
色合いも音も良いですね~。
高級品の良さがわかるひともそれはそれで、目も肥えてなければ高級品であっても目利きはなかなか難しいです。
値段が高いだけで、「これ・・・?」っていうのもあります。
高級じゃ無くったって、こんなナイスギターもあります。
ギターって音だけで選ぶ人の方が少ないと思いますので、「値段が高いのに大した音がしないギターに惹かれちゃう人がいる」のも事実。
唐突ですが、安く買えて良いギターな訳ですから、こちらの勝ちでよろしでしょうか。
価値あり!なんつって。
高くないと価値を見出せない人もいますしね、価値観は十人十色です。
力木剥がれ /Martin D-28
スタッフの山口です。
今回は写真が少ないのでほぼ文章で力木(ブレイシング)剥がれ修理を紹介します。
バック側の力木が剥がれていますね。力木剥がれはボディをコンコンっと叩いた音で剥がれてるか診断します。大事なギターを持ち込んでいきなりコンコンっと叩かれても驚かないでくださいね。お医者さんに例えるなら聴診器を当てているようなもの。8割方、叩いた時の音でどの辺が剥がれているかどうかが分かります。
おおよその場所が把握できたら写真のようにヘラを差し込みます。軽傷の場合はなぜか端の方から剥がれていることの方が多いです。このまま放っておくと中心部まで剥がれていき、最終的には何かの拍子でカランコロンと完全に外れてしまいます。
マグネティックPUを戻して完成です。
弟子入り間もない頃、修理前のギターを「このギター鳴りますねー!」という僕に「たぶん力木が剥がれてて音が暴れてるだけだよ」と皆川氏。力木を調べてみたら見事に5-6ヶ所も剥がれていました。そして修理後に弾いてみたらなるほど!音量は修理前より若干小さく感じるものの、しっかりと粒立ちの良い上品な音に変わっていて感嘆しました。力木が剥がれまくってガビンガビンの音が良く思えても、弾いている本人に鳴ってる感があるだけであって、聞いている側が良い音と感じるかどうかはまた別の話。そして何より力木剥がれを放置してしまうとギターの強度も落ちてしまいますので、なるべく軽傷のうちに直してあげましょう。
最後に、今回のようなギター内部の修理をする場合、中の埃や塵は集塵機とエアコンプレッサーで綺麗に取り除いてから行います。今回のギターはとても綺麗でしたが、たまに驚く程いろんな類いの塵や埃が溜まっているギターがあります。音に分かるほどの影響はないかも知れませんが、、、剥がれはじめた力木の隙間に埃が付着してしまっていたり、匂いが篭ってたり、ピックを中に落としてひっくり返して取ろうとしたら埃が顔に降ってきたり、と百害あって一利なし。たまにギターの内部も気にかけてあげてくださいね。
そういう僕は今日、自分のメインギターの弦交換を1年ぶりにしました(ノ_<)もう少し自分のギターも気にかけてあげようと思ったのであります。
今回も最後までありがとうございました。
ネックリセット / Gibson L-1
オールドギター、ビンテージギター、みなさん惹かれる魅力は、それぞれだと思いますし、どのように関わっていくかも自由だと思います。
なのでオーナー次第で良いとは思いますが、汚くしないで欲しい・・・
古めかしい雰囲気はカッコイイですが、思いっきり勘違いされている方を思い出しました。
勘違いと言うか、ズレているというのでしょうか。
その方曰く、「せっかく古くて汚れているのに!」と言う方で私は「なるほど…」と…オーナーの自由ですから。
心の中は、「汚いでしょ。それ。」
車やバイクでもラットスタイルと言うのがあって、最近のはボロク見せるように技術も使って手が込んでいますが、昔のラットはただ掃除が出来ない人の言い訳のようでした。
「よくそこに座って、そこつかめるな。」と言う感じ、ギターも「それ触りたくねー。」と思います。
ピックガード交換 / Martin D-76
アメリカ建国200周年記念モデルのD-76。1976年に1776本作られたそうです。インレイの星は建国時の13州を表しているとか。言わずもがな、ナイスギターです。
話は変わりますが、SDGsという言葉、楽器業界には耳の痛い言葉だと思います。ハカランダを始め世界中のローズウッド系樹種やマホガニー系樹種などの伐採による環境破壊や絶滅危惧種の増加に大きく関わってきたからです。少しずつ持続可能なカタチを目指す動きもありますが、まだまだが課題が多いのも事実です。どんな楽器も使い捨てにせず、メンテナンスやリペアをして長く使い続けることが一番簡単に貢献できる方法ではないかと思います。メーカーも今までの仕様、材料に拘らず新しい素材の開発をさらに進めて「古き良きものを大切に、また一方でこれからは新しい技術と素材でさらにいいものを目指す」これが楽器業界にとっての健全な姿になっていくのかな、と思います。
日本は林業の衰退から逆に杉や檜が生え過ぎちゃって花粉症が増えているくらいなので、その辺の樹種を最新の技術で楽器に向く材料にできたら一石二鳥なのになぁ、、と随分前から考えたりしてます。YAMAHAあたりはもう着手しているかも?国内楽器メーカーに期待したいですね。
全然話が変わってしまいましたが、、今回も最後までありがとうございました。
ネックリセット / Gibson Hummingbird
ネックリセットすれば、弦高が低くなって弾き易くなりますが、リフレットすればその感触は雲泥の差と言っていいでしょう。
フレットが低いと知らず知らずのうちに手に力が入ってしまって弾き疲れてしまう事があります。
フレットがしっかり立っていれば余計な力が必要無く、とても楽に演奏できるのです。
70年代Gibsonは長らく評価がそれほど高く無かった様に思いますが、オールドギター高騰の今、70年代Gibsonの良さの認識が広がりつつあるのではないでしょうか。
当方で修理して販売した個体などは本当に良い音で、売れなくてもそのままここに置いておいてもよかった。
70年代GibsonはそれまでのGibsonとずい分違うのでGibsonぽく無いとお思いの方もいらっしゃいますが、70年代Gibsonはアコギもエレキも年代別に見ますと1番面白いギブソンかな、と思ったりします。