スタッフブログ
ネックリセット / Martin OO-15
過去にも何回かMartinのボルトオンタイプを紹介しておりますが、ボルトオンなのに接着してると言う点を確認して、やっぱりなと思う回です。
ダブテールジョイントなら15フレットから空間に穴を空ける事が可能なのですが、これの場合はこのアジャストロッドのすぐ脇をピンポイントで空けなければなりません。
穴を空けずに何とか外す事が出来ていますが、動く気配が無ければ穴を空けてダブテールジョイントと同じようにはずしかないと思います。
いずれにしても、ボルトオンジョイントなのにとてもめんどうなネック外しです。
ダブテールジョイントは角度の調整が終わった後、シムを作って隙間を無くしてネックを固定します。
ボルトオンジョイントはシムの必要が無く接着せずにボルトで固定します。
作業上この点以外に差が無い訳なのですが、角度の調整をするまでが大変なのでほとんど手間は一緒、いや、外しずらいので返って手間と言っておきます。
はじめてやった時は、動揺したことを覚えています。
「なんで取れないの?」「他にまだどっかにネジ打ってあるの?」「???」
その時大先輩の方に電話しました。Martinやアコギの事ならその方に聞く。
「そんなことないけどね、ボルトンなら取れるはずだよ。」
分からないままなんだかんだいじっていると少しずつ動いているので、温めたりしながらじりじりと動かして何とか外れて見て、「接着してたのー!!!」
びっくりしました。
なので最初は、たまたま接着しちゃったものに当たったんだと思っていました。
ですが、どれも必ず接着してありますので 、申し訳ないのですがマーチンのボルトオンはダブテールジョイントと同じ料金になっております。
ご了承くださいませ。
ネックリセット、ピッチ修正、ピン位置サドルと並行に / Martin D-18
ネックリセットします。
山口君も随分と上手くなっちゃって最近は山口君の専門職みたいになっていますが、私だってやるんです。
その他にも今回は、拘りの修理が入ります。
どう拘るかと申しますと、ピッチを出来る限り正確に合わせたい。と言う事です。
ギターなので、ビッタっと完璧に合わせる事は難しく、弦が変わればそれでピッチがズレてしまう事もありますし、弾く人によっても変る事もあります。
ですがそのようなご依頼ですので、出来るところまでやってみる回です。
こうすれば、6弦がサドルに近すぎにならない様に出来ます。
1弦は元の位置でも問題無いですが見た目の部分と、サドルと弦が近くなった事で将来サドルがギリギリ低くなった時には有効です。
が、そうならない様に管理しましょう。
弦の乗る位置を上げたり下げたりしてピッチを調整してあるサドルは、現在主流と言っていい位の割合でどのギターにもついています。
個人的な考えではアコースティックギターには必要が無いと思っております。
上記にも書きましたが、弾く人、弾き方によってもピッチは変わりますので、しっかり図った位置にサドルの溝があればかなり十分ですし、チューナーで確認しなければ分かり難い位のズレなら、それ位の方がかえって音楽らしく(生々しく)さえあると思っておりますし、上手い人なら全く問題にしないですし、何しろあのサドルの見た目が嫌いなのです。
この意見は全く私個人的な考えでございますので、ものすごくこだわる方を非難している訳ではございません。
こだわりが無ければ個性も薄いかもしれません、拘る所が大事なんだと思います。
悪しからず。
「何弦の何フレットがちょっとビビる。」と言ってポーン、ポーン、ピーン、ピーンって何度も鳴らしてる人を何回か見たことありますが、…
明らかにビリビリしてれば気になりますが、曲の流れの中なら尚更気にならないはずなのですが、…そう言う曲なのか…?
先程も書きましたが上手い人やプロなら全く問題にしません。
ついでに言うなら、他のギターは大丈夫と言いますが、そのギターはそれでは無い。
気になるレベルは人によって違うので、これも難しい点ではございますが、どうしても気になるようでしたら精神衛生上よろしくありませんので専門店にてご相談ください。
書いているうちにこれは難しい問題だと気付きました。
ショップで「こんなもんですよ。」と言われたと、しばしば耳にしますが、もっと良くなる(良く無いままの)場合がよくあります。
ですので、「こんなもんです。」は「うちのレベルです。」と解釈してください。
ですので、皆川ギター工房は「これが限界です。」と言う事がありますが、「皆川ギター工房のレベルはこんなもんです。」と言っていると解釈して頂いて結構でございます。
世の中には、上手い人やすごい人が沢山いるものでございます。
ピックガード交換 / Gibson J-35
スタッフの山口です。
今回はピックガード交換です。今回はクイズ形式です。
Q.写真の今ついているピックガードは問題がなさそうに見えますがオーナーさんは交換を希望しました。それはなぜでしょうか?
答えは最後に。
いい面構えになりました♪
皆さんはもうお分かりだと思いますが、クイズの答え(交換理由)は「虎目柄の向きを変えたかったから」でした。
せっかくリイシューモデルなんだから、なるべく当時のモデルに似せたい!と思うのは至極当然のことだと思います。きっと雑誌やネットで見て「あれ?俺のJ-35と虎目柄の向きが違うじゃん!」と気づいたのでしょうか。
気づいたら最後、ずーっと頭から離れずに気になり続けてしまう気持ち、分かります。
柄の向きもそうですがピックガードの面取りや磨きの工程をプラスすることでいい感じの質感になります。
確かに交換に使用する素材は新品でピカピカ、人によっては気にしない人もいるかもしれません。大きさをカットしてペタっと貼るだけ、わざわざ工房に依頼する必要はありません。
料理に似ています。一手間、二手間を加えることで味が良くなりますが、分かる人は分かるし、全く気が付かない人もいます。何が言いたいのかというと、オーナーが良ければそれでもOK。また、手間を加えすぎて失敗する、なんてこともありますね。一時期、カレー作りに凝って市販のカレールーにこだわりのスパイスや調味料を加えて、結局カレールーだけの方が美味しかった、なんて経験があります。何事も「良い塩梅」があるのだと学びました。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
バインディング剥がれ / Martin OOO-28EC
Martinには不名誉でしょうが、”マーチンクラック”等と言われるトップ割れの現象がありました。
それも現在のマーチンでは無くなりました。
現在ではバインディング剥がれ、と言えば Martin !
経年劣化でセルバインディングが縮んで剥がれる訳なので(しっかり接着してくれれば問題無いのですが)、現行品という訳では無く、一世代前のマーチンに現れる現象でしょうか。
現行マーチンはこの現象は改善されたのか、どうなんでしょうか。
押して接着しても密着しないと思う場合は、剥がして短くなった分を詰めて貼り直します。
短くなってしまっているので当然と言えば当然です。
貼り直す際には古い接着剤を取り除きます。
バック側のバインディングは、ヒール下で継いであるのでそこで離せば良いのですが、トップ側は指板の下にある為、離すことが出来ません。
ネックリセットをするなら丁度都合が良いのですが。
ですので、トップのバインディングはボトム側で切り離します。
押し付けて接着して多少密着できなくても多少の段差は削って修正しても問題無い程度ならそれもありですが、それが好ましくない場合やボトム側で切り離すさずにバインディングを密着させるにはネックを外すしかありません。
今回はボトム側で切り離します。
製品を作っていくうえで、材料や接着剤、塗料等がメーカーや業者の都合によって変更されることはよくあります。
おそらくこの為に過去に出た事の無い不具合が発生するのだと思います。
か、もしくはメーカーの経営の質が変わったり、従業員の問題かと思います。
メーカーも不具合を把握しているはずですし、きっと現在は改善しているかと思っておりますが…
ブリッジ交換 / Martin 00-18
数え切れないほど本物のビンテージアコギを見てきた師匠に細かいところまでディティールを相談して進めます。図面や採寸データだけでは及ばないレベルまでできてこそ職人だと思っています。AIや3Dプリンターには無い魂がそこにはあるのです。
めっちゃかっこつけたこと言ってますね(^O^)でも本当の事です。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
プリアンプ交換 / Fishman
ピックアップ、プリアンプ1式交換します。
ピックアップは固着していて何かも挟み込んであり、あまり好ましくないセッティングでした。
特にFishmanのピックアップはデリケートなので余計な事はやらず、気を付けて扱います。
このように取り換える事が前提であれば問題ありませんが何かの作業上、1度取り外さなければならない場合は、今回の状態はリスクがあります。
経年変化でブリッジが反って、サドルとピックアップの溝がきつくなっている場合があります。
その場合は簡単には取り外せないので注意が必要ですし、ピックアップを諦めなければならない場合もあります。
アコースティックギターのピックアップはカッコよくセット出来れば終わりと言う事は無く、各弦の音圧のバランスがよく無ければ作業は永遠に終わりません。
ですので、先程のピックアップの溝は直すのか直さないのか、どの程度直すのか判断しなければなりませし、そのうえでサドルの精度を突き詰めます。
それでも1発で完璧!なんてことはあまりありません。
とても大変な作業でございます。
ブリッジ貼り直し / Gibson J-45 1968
ボディ剥がれ / Ovation 1990
修理する箇所によりますが、この場合は邪魔になりますのでパーツ類は外して作業します。
丸いマイナスのネジ頭のようなものは、1/4ターンファスナーと言う呼び名の電池ボックスホルダー、1/4回転した所でオスメスが嚙み合って電池ボックスが固定されます。
その右上にちょこっと見えているのはプリアンプのパネルとVoノブ、これも当然外します。
このモデルは 1990年のコレクターズシリーズ Ovation 1990 で、オベイションが一番ノリノリだった時代。
16フレットジョイントで、24フレットあるデザインは1988のコレクターズシリーズから89、90と3モデル続きました。
丁度バンドブームの時代でエレキみたいにアコギを弾く人も沢山増えた時代っだった気がします。
スプルースやシダー以外の奇をてらったトップ材を用いたモデルとしては最初のモデルで、スーパーシャロウ199S-7、ディープボウルカッタウェイ1990-7の2タイプ。
杢目を強調した見た目ですから、みなさん良い杢目の物が欲しいんですけど、バーズアイがちょぼっとしか入ってないのもあって不公平感があるなと思う日々でした。
バッテリーボックスがまだ1/4ターンファスナーで留まっていた頃のOvation は自分の若かったころの思い出等と相まってとても好きな時代のOvation でございます。
ネックリセット /Gibson L-00
一目で分かるヴィンテージギターの風格です。このくらいの小ぶりなギターを自宅用にずっと探しておりますが、何せ良いギターにたくさん出会える恵まれた環境におりますゆえ、目移りして迷っているうちにどんどん相場が上がって手が出なくなってしまいました( T_T)\(^-^ )
そんなナイスギターを数多くネックリセットしてきた当工房ですが、皆川氏も僕もカウントしておりませんので一体今まで何本やって来たのかわかりません。しかしながら全国的にネット検索しても、うちほどネックリセットの記事をあげている工房は見当たりません。
「ネックリセット本数日本一!」の看板を自ら掲げなくとも、お客様がブログを見て「ここは日本一やってそうだな」と思って安心して預けていただければ幸いだと思っております。
「数をこなすよりも大事なことがあるぞ」、とどこかから聞こえてきそうなので今日はこの辺で失礼します。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。