スタッフブログ

ボディ破損 / Morris W-25 (其の伍)


スタッフの山口です。

今週で第五回となりました、Morris W-25のボディ破損修理。いよいよ納期も迫ってきた頃の様子です。

バインディングを新しくしたところはどうしても色が異なってしまうため、まずはバインディングを焼けたように色付けします。


焼けた様に見せるために配合した塗料を皆川氏は作り置きしていますが、それを使ってしまうといつまで経っても自分で作れませんので見様見真似で作りました。

なんでも初めは真似です。真似して真似して、いつか新しい道が開ける。ギター演奏もギター修理も同じです。


ブリッジは元々付いていたものを戻すだけです。1年10ヶ月ぶりにご対面。ここまでくるのにそれだけ長い期間を必要としました。

毎日このMorrisだけを修理していれば数ヶ月で完了できるかもしれませんが、それでは完成までの期間、無収入になってしまいます。また、他のお客様の納期が全て後ろにズレてしまうため、他の修理の合間合間に進めなくてはこういった大掛かりなご依頼はお受けできないのです。


前回トップの塗装は剥がし済み。今回、ブリッジの接着は本家のマーチンと同じように塗装が乗って無い状態で接着しますが、塗装前につけてしまっては磨けませんので、先に接着部のみマスキングします。


この年代のMorrisなどの国産ギターはこの手間を省くため、トップ全面に塗装し、ポリウレタン塗装の上から瞬間接着剤のようなものでペタっとブリッジを貼ってあります。

アコースティックギターの音は、弦→サドル→ブリッジ→トップ板(サウンドボード)の順で弦振動が伝達し、生み出されるものです。


このように手間をかけてブリッジとトップ板を木材同士でニカワやタイトボンドで直接密着させるのと、手間を省いてブリッジとトップ板の間に瞬間接着剤とポリウレタン塗膜が入る接着では、音の良し悪しに差が出るのは当然と言えます。

 


トップは下地を先に吹きますのでまずはトップのみを残しマスキング。


トップの下地が硬化したら全体にトップコートを吹きます。バックも割れていましたが筆でタッチアップし木目を馴染ませたためいい感じですね。ウレタン塗料の食い付きを良くするために、ボディ全体を荒らします。


塗装スタンバイ中。白っぽくなっているのは表面を荒らしたから。


皆川工房特注の塗装ブースで吊り下げます。


トップコートを吹き終えたら完全に硬化するまでしばらくはこのまま。


ブリッジの接着面はマスキングして塗膜がありませんのでこんな感じに。ブリッジを貼る前に塗面を水研ぎしバフ掛けをします。


バフ掛けが済んで鏡面仕上げになりましたので、満を持してブリッジ接着です。


完成が見えてきてウキウキでヘッドのお掃除。


ペグを戻して、、


いい面構えになりました。


修理跡がここまでハッキリ分かると逆にお金をかけて修理した感があってカッコイイと思います。

アコギではあまり見たことのないルックスですね。


ヨシ!あとは元のピックガードをつけて完成だぁぁぁ!

、、と喜んでいたのも束の間、お客様から「左利きなのでせっかくだからレフティモデルにできないか」とのご相談が。追加の見積もり料金と納期+1ヶ月をご了承いただき、いざレフティにチェンジすることになりました。

ということで次週の最終回は「Morris、レフティに変更する」の巻です。

とうとう完結します。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

 

ボディ破損 /Morris W-25 (其の肆)


スタッフの山口です。

今週もモーリスの画像を見ていただきます。タイトルの漢数字も「其の肆」という馴染みのないものに。(4=肆だそうです)

写真はトップ板を既に付けてルーターでトリムとバインディング部分を削り落としたところです。


皆川工房ブログあるあるですが、肝心なところの写真を撮り忘れました。トップを貼り合わせる大事な部分の写真がいくら探しても見つかりません(汗)

大事な工程は必死になっている場合が多くよく撮り忘れます。

 


地道な作業が延々と続きます。ネックリセットなどと違い、こういう製作に近い修理は普段あまりやらないことが多いので何度も立ち止まってしまいます。


トリム作り。


今回は元と同じく本物の貝ではなくパーロイドで。


最後に外周のバインディングです。


おお、見慣れたアコースティックギターの形になりました。


バインディングは始めはスクレイパーで落とします。


トップが汚れてしまいましたが大丈夫です。

バックとサイドも合板ですがなんとか表側の第一層が持ち堪えてくれました。擦るうちに中の第二層であるベニヤが出てくると厄介なことになります。

粉だらけになるので人が少なくなった夜を見計らって、工房の外でひたすらゴシゴシ。昔のモーリスやヤマハの国産ギターは塗膜が薄いことが多々ありますが、剥がすときはポジティブ要素になります。ただ通常の修理の場合は塗膜が厚い方が助かります。

次回はとうとう塗装に移ります。そろそろ皆様の「またモーリスか、、」という声が聞こえてきそうですが、、

あと2週分は引っ張れると確信しておりますのでどうかお付き合いの程宜しくお願い申し上げます。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

ボディ破損 / Morris W-25 (其の参)


スタッフの山口です。

とうとう3週目に突入しましたが、まだ道のりは遠そうです。

写真は折れたXブレイシングを整えているところ。


修理は極力使えるところは生かします。一般的にオリジナルに近いほうが楽器修理は良いとされていますので今回も継木して直します。


直角も出ていい感じ。


ほら、いい感じです。


何となく出来そうな気がしてきました。


仮加工したトップ板をはめてみてさらに希望が見えました。


ここで先週予告しましたオリジナルジグの登場です。


長ーいクランプを用意して、、


こんな感じで。


サウンドホールから入れられるジグの大きさには限りがありますので、中で組み立てられるようにする必要があったのです。

簡単な作りですが、バックである底面に置きながら組める、というのはボディー内部での作業には便利。というのがこのジグのいいところですが、たいしたものではなく恐縮です。


うん、ちょうど中が見やすいです。

これは今後もエンドブロック付近の修理に使えそうです。


来週はいよいよここを塞ぎます。

自分の中ではピッタリとブックマッチできるか一番心配していた工程ですが果たしてうまくいくでしょうか。

次週もお付き合いくださいませ。なにせ2年間の記録でございます。

 

今週も最後までありがとうございました。

 

 

ボディ破損 / Morris W-25 (其の弐)


スタッフの山口です。今週も早速Morrisボディ破損修理の続きを見ていきます。

破損部の反対側もパックリと剥がれていましたがここは剥がれだけですので接着しちゃいます。

 


内側も綺麗に仕上がりました。

破損部の修理にこちらが開いている方が都合のいい場合は敢えて先には直しませんが、今回はここは直しても修理がしづらくなったりはしないと判断し先に直しました。。


問題はこちら側。単板であればこういった割れ方はしません。二層目はかろうじて割れていないのは不幸中の幸いです。全部割れていた場合、皆川氏に助け舟を出していたと思います。

元のライニングは使用できないのでノミで削ぎ落としました。


接着剤で合板の表裏の一層目を直します。


こういったジグは作る時は手間ですが、一度作っておくときっといつかまた使える日が来ます。1年後か10年後かはわかりません。


ライニングと一緒に崩壊してしまっている合板の一層目を補修します。


ビフォー画像がないですが、こちらのバックも補修してからライニングを仕込みます。


この一般的なアコギのライニングはわざわざ材からは作りません。この形で売っています。これだけを作っている会社がどこかにあるのかもしれません。


元のライニングと色が若干異なりますが、修理した部分がハッキリわかると言うのは悪いことではありません。車もギターも修理歴の隠蔽は禁物なのです。


バック側はこれでOK。と思いきや、接着が甘かったようでサイドがまた割れちゃいました。


トップ側は同時に力木も直してるのでカオスな画像です。


バックの力木剥がれも閉じてからより簡単ですのでこんな感じに。

 

修理には専用のジグを、そのギターと症状にあったものを自作しないと修理できない場合が多々あります。クラフトマンは設計が変わらない以上は毎回同じジグを使用しますが、リペアマンの場合は多種多様なサイズや形状と、それぞれ違った壊れ方をする為、都度作らなければ対応できないのです。

次回(其の参)は写真に写っている今回の修理のために作成した「山口オリジナルジグ」の登場です。

大したものではありませんが、、どのように使うかは次回をお楽しみに。

 次週もこの続きを予定しています。今しばらくお付き合い願います。敬具

ボディ破損 / Morris W-25 (其の壱)


スタッフの山口です。

今回はこれまた衝撃的な写真からスタートです。中々見られない壊れ方です。予想するにサイドからの衝撃によって大破したといった感じでしょうか。


欠けてなくなっている部分が震源地の可能性大。こちらはオール合板のモデルですので人間で言うと複雑骨折状態だと思われ、先が思いやられます。


エンドブロックはそのまま使えそうですが、、大変そう。


皆川氏と全交換するか、継ぎ足して修理するか長い時間をかけて相談した覚えがあります。


ネック角度は悪くないのと、恐らくダブテイルジョイントのようにネックが外せる構造で作られていないと判断し、お客様とも相談の上、破損した部分を継ぎ足して修理することに。


ここまで状態が悪いとどこから手をつけるか迷ってしまいますがなるべく無駄のないムーブをしたいので、各部の状態をよく診て、考えてから取り掛かる必要があります。

破損部の反対側も剥がれていたのでそのまま接着できるところは最初にとりあえず。

オーナー様より初めにお問い合わせをいただき「これは時間も費用もかかる修理です。何より修理代でこのモデルの元となっている本物のMartin D-28が新品で購入できる額です。それでも修理しますか?」との問いに「父から譲り受けた大切なギターですので構いません。修理をお願いします」とのこと。

そうとなれば腕まくりをしなければなりません。人から見れば安価なギターであっても、お客さまにとってプライスレスなものなのであれば当工房としてもプライスレスな仕事を。

2年という長い修理期間に気が変わってしまうかもしれないノリのお客様だったら断っていたかもしれません。楽器の原価を大幅に超える修理はお客様との信頼関係がないと難しいです。経営上、納品ができなければ大損害となるから。今回のお客様は小まめに連絡もつきましたし、何よりこのギターに対する並々ならぬ愛着が感じられましたのでお受け致しました。

 

こうして2年間の長い旅が始まりました。写真データも膨大で工程も多いので、何回かに分けてアップしていきたいと思います。今日はこの辺で。ありがとうございました。

 

 

ネックリセット / YAMAHA FG-200D


ヤマハのネックリセット。

ヤマハもマーチンもギブソンも似ているようで違いますから、注意点も少し違ってきます。


ヤマハはヒールが接いである為、熱してネックを抜く際にヒールの途中から外れてしまう事がり、そうなるとちょっと面倒です。


ペグもついでに後できれいにしましょう。

コンパウンド等は使っちゃだめですよ!

 

 


サドルも丁度いい感じです。

今回はリフレットが無いので、狙い易かったです。

リフレットする場合は、指板修正をして、新しいフレットになった場合、若干弦高は上がりますので、それがどの程度か予想を立ててネックの角度を決めなくてはなりません。


角度が付くと、ハイポジションの指板が下がりますので、板を足して厚みを付けます。

上の画像で確認できます。

 


コンパウンドなどを使いますと、隙間に入り込んで取れなくなるとかえってきれいに見えません。

金メッキの物は剥げてしまいます。

ですので、スチールウールで磨きましょう。

https://www.m-guitars.com/blog/2695/

 


今回はヒールが離れなくて良かったです。


面倒な事が起きずスムースに事が運んだ場合は、修理者本人は安堵するとともに結構満足しています。


ヤマハ等、経験上、分かっているネックジョイントは良いのですが、他のメーカーは可能な限り調べてからかかるか、分からなければ指板を剥がすしかありません。

 

以前にネックを外さなければならなかったMorrisにはやられた経験があります。

モーリスなので、インターネット上にも割と多く情報があり、それなりに出来る限り調べて、過去の皆川ギター工房の資料にも照らし合わせて「これはダブテールジョイントに違いない。」と結論が出、ネックを外し始めたのですが、外れないのです。

一向に外れる気配が来ないのです。

私は、これはダブテールジョイントだと分かってますから、ずっとそうやって外しているのですが…

外れる訳ないのです、だって違うんだもん。

それからは、すごく調べても間違い(嘘)の場合も多々ありますので、分からないジョイントは指板を剥がす!

これに尽きると思っております。

ブリッジ交換 / Gibson Humming Bird


スタッフの山口です。

今回はこの状態でやってきたハミングバードのブリッジ交換です。と言っても元のブリッジが紛失した状態ですので作製と言った方がしっくりきます。

 

 


年代的にも剥がれ跡を見ても元のブリッジはアジャスタブルサドルタイプだったことが分かります。今回はノーマルタイプで作って欲しいとのこと。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、アジャスタブルサドルとノーマルサドルではネックの仕込み角度が違います。


今回のギターは恐らくネックが元起きした状態。アジャスタブルサドルでブリッジを作り直す場合はネックリセットも同時に行い、ネックを適正角度にする必要がありました。しかしノーマルサドルでなんとかネックリセットはしなくても済むようです。

ただし少しでもマシになればと思い、仮のブリッジを置いて角度を確認し、ネックアイロンで処置を施しました。


ブリッジを作る前にスプルースでアジャスタブルサドルの穴を埋めましょう。


これを


こうしてからタイトボンドで接着し、一日置きます。


元のブリッジがないと大きさを見るのも一苦労。サイズに違和感のあるブリッジは中々イケません。


塗装の焼けや古い接着剤から元の大きさを転写しました。

 


元はプラスチックブリッジだったと思われますのでラッカー塗装を剥ぎます。ラッカーの上から接着しちゃってるものも稀にあります。


いざ作製です。オリジナルはブラジリアンローズウッドですが今回はインディアンローズウッドで。インディアンローズも今は入手困難になりつつあります。


写真にはありませんが、元のブリッジがないので穴あけも結構面倒だった覚えがあります。


いい感じの形になってます。


ギブソンのブリッジはボルトでも止めていますのでもちろんインレイも。


こうして見るとほとんど褪色せずこんなに鮮やかにチェリー色が残っているのは貴重ですね。


ブリッジが付いたらルーターで溝掘りです。ルーターがこの世に無ければギターは全部ロングサドルになるのかな、、ふとしょうもないことを考えてしまいました。


いい感じです。


現行のハミングバードもこんな雰囲気では無いでしょうか。


アイロンも効いたせいかサドルの出しろもベストに近いです。いい感じ!

ノーマルサドルの方がピックアップも選ばないので使い勝手はいいかもしれません。ただ個人的にはアジャスタブルサドルのGibsonサウンドが好きです。

最近は弦高を調節できるというメリットよりも、アジャスタブルサドルのサウンドが好きだから、という理由で選んでいる人の方が多いのではないでしょうか。「パーカッシブ」な音ってヤツです。

ナイスギターの後ろに予約制という文字が写っています。ギター修理は基本的に手が離せない作業も多いです。アポなしで来て頂いても満足に対応できないこともあるのでどうかご予約の上いらしてくださいませ(^ ^)

毎日本当に暑いですね。工房のある北綾瀬近辺はプチ建設ラッシュなのですが、建設関係など外で働いている方々は本当に大変だと思います。早く涼しくなって欲しいです。一方で3年ぶり(4年ぶり)に盆踊りや花火大会もあちこちで行われていて懐かしい夏の雰囲気を皆んな楽しんでいるようです。でもとにかく早く涼しくなって欲しいです。

今回も最後までありがとうございました。

 

ブリッジの接着面(トップ側)の塗装が剥がされていないので「プラスティックブリッジっだったのでは、」と言っておりますがプラスティックブリッジでは無く、木のブリッジが貼ってあった跡ではないかと、私思います。    

書き足し…皆川。

 

確かに。ボルト跡がないのでこれこそ塗装の上からブリッジを接着してたパターンですね!失礼しました(>_<)

書き足し‥ 山口。

 

 

リフレット / Harmony Hollywood

フレット交換したハーモニーですが、今回はビフォーアフターのビフォーが無いです。

ビフォーが無いのですが、なんともこのギターの雰囲気がよろしいのでアップいたします。

 

リフレットする際に大概は、指板を修正してから新しいフレット打ちます。

こちらのギターの指板は茶色く着色してあったのですが、オーナー曰く茶色くしなくても良いとの事で、私も賛成。

先ず着色の面倒が減る事もそうですが、メイプル指板のきれいさは着色は無い方が良いと思います。

ただし、ローズやエボニーのように塗装無しの状態ではメイプルは汚くなってしまいます。

ですのでクリアーコートはしなくてはなりません。

 

 

 


 


 


 

 

このHarmony Guitar アメリカンビザール等と呼ばれているようですが、それはそうと、なんて素敵なギターなのでしょ。

ピックアップはデュアルモンドでしょうか、詳しくないので分かりませんが、何とも素敵なデザインです。

色合いも音も良いですね~。

高級品の良さがわかるひともそれはそれで、目も肥えてなければ高級品であっても目利きはなかなか難しいです。

値段が高いだけで、「これ・・・?」っていうのもあります。

高級じゃ無くったって、こんなナイスギターもあります。

 

ギターって音だけで選ぶ人の方が少ないと思いますので、「値段が高いのに大した音がしないギターに惹かれちゃう人がいる」のも事実。

 

唐突ですが、安く買えて良いギターな訳ですから、こちらの勝ちでよろしでしょうか。

価値あり!なんつって。

高くないと価値を見出せない人もいますしね、価値観は十人十色です。

 

力木剥がれ /Martin D-28

スタッフの山口です。

今回は写真が少ないのでほぼ文章で力木(ブレイシング)剥がれ修理を紹介します。

バック側の力木が剥がれていますね。力木剥がれはボディをコンコンっと叩いた音で剥がれてるか診断します。大事なギターを持ち込んでいきなりコンコンっと叩かれても驚かないでくださいね。お医者さんに例えるなら聴診器を当てているようなもの。8割方、叩いた時の音でどの辺が剥がれているかどうかが分かります。

おおよその場所が把握できたら写真のようにヘラを差し込みます。軽傷の場合はなぜか端の方から剥がれていることの方が多いです。このまま放っておくと中心部まで剥がれていき、最終的には何かの拍子でカランコロンと完全に外れてしまいます。

そうなる前に修理してあげればOK。お客さんが気がつきにくい部分なので別の修理で持ってこられた場合もなるべく力木チェックは行っています。

バック側の場合は専用のターンバックルで突っ張って接着します(外側では大きなカムクランプがサポートしています)。

写真をよく見るとバックのローズウッドが湿っています。これは接着面から溢れてきた接着剤を拭き取った跡。たまに盛大にニカワだらけになっているギターを見かけますが、、、ちゃんとすぐに拭いてあげれば修理した痕跡は残りません。

 

力木の他にもバインディングが剥がれていましたのでこちらも修理。

Martinのバインディング剥がれはMartinクラックのような「名物」としてそろそろ名前が付いてもおかしくありません。


 

マグネティックPUを戻して完成です。

弟子入り間もない頃、修理前のギターを「このギター鳴りますねー!」という僕に「たぶん力木が剥がれてて音が暴れてるだけだよ」と皆川氏。力木を調べてみたら見事に5-6ヶ所も剥がれていました。そして修理後に弾いてみたらなるほど!音量は修理前より若干小さく感じるものの、しっかりと粒立ちの良い上品な音に変わっていて感嘆しました。力木が剥がれまくってガビンガビンの音が良く思えても、弾いている本人に鳴ってる感があるだけであって、聞いている側が良い音と感じるかどうかはまた別の話。そして何より力木剥がれを放置してしまうとギターの強度も落ちてしまいますので、なるべく軽傷のうちに直してあげましょう。

最後に、今回のようなギター内部の修理をする場合、中の埃や塵は集塵機とエアコンプレッサーで綺麗に取り除いてから行います。今回のギターはとても綺麗でしたが、たまに驚く程いろんな類いの塵や埃が溜まっているギターがあります。音に分かるほどの影響はないかも知れませんが、、、剥がれはじめた力木の隙間に埃が付着してしまっていたり、匂いが篭ってたり、ピックを中に落としてひっくり返して取ろうとしたら埃が顔に降ってきたり、と百害あって一利なし。たまにギターの内部も気にかけてあげてくださいね。

 

そういう僕は今日、自分のメインギターの弦交換を1年ぶりにしました(ノ_<)もう少し自分のギターも気にかけてあげようと思ったのであります。

今回も最後までありがとうございました。

 

 

 

 

ネックリセット / Gibson L-1

Gibson  L-1をネックリセットします。

ネックの角度を修正して、指板の厚みを修正して、ジョイント部に挟むシムを作って…

バインディングも同じ厚さにテーパーつけて貼ります。

ジョイント用のシムはどれも同じって訳には行かず、必ずそのジョイントに合わせて作らなければなりません。

絶対に動いてはならず、奥までしっかり収まっていなければなりません。

シムによってセンターが変わってしまう事もあるので、どっち側にどのようなシムを作って入れるか、よ~く観察しなければ失敗の元になります。

 


サドルが接着されている場合は、大概簡単には外れてくれません。


ナットと同じように半分に割って外します。


元の溝は精度が悪くなっちゃっていますので、一旦埋めてサドルがしっかり立つようにきれいに掘り直します。

 

12フレットジョイントのネックは、14フレットジョイントと比べると見た目が角度が足りなく見えてしまうので、ついついちょっとだけサドルが高目になってしまいます。

指板は底上げして厚くしてあります。

フレットはまだ変えたばかりのようです。

今回はすり合わせで調整。

 


この塗装の感じはたまんないですな。


古くて荒れている状態なのに、美しくさを感じます。


ピックキズ、ぶつけた傷

本物の凄み。


このヘッドも・・・

ひとしきり弾いたら、酒飲みながら眺めたいね。

 

オールドギター、ビンテージギター、みなさん惹かれる魅力は、それぞれだと思いますし、どのように関わっていくかも自由だと思います。

なのでオーナー次第で良いとは思いますが、汚くしないで欲しい・・・

古めかしい雰囲気はカッコイイですが、思いっきり勘違いされている方を思い出しました。

勘違いと言うか、ズレているというのでしょうか。

その方曰く、「せっかく古くて汚れているのに!」と言う方で私は「なるほど…」と…オーナーの自由ですから。

心の中は、「汚いでしょ。それ。」

 

車やバイクでもラットスタイルと言うのがあって、最近のはボロク見せるように技術も使って手が込んでいますが、昔のラットはただ掃除が出来ない人の言い訳のようでした。

「よくそこに座って、そこつかめるな。」と言う感じ、ギターも「それ触りたくねー。」と思います。